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使いの者
「ほー、青にも紫にも見える面妖な色だなぁ」
夫が「リンドウ色の余った布」を手に取る。
「シオンみたいで、いい色ですよ」
「そうかそうか。しかし元気になって良かった。長いこと、静かだったからなぁ」
「ええ、これは鼻緒にしましょう」
妻が「リンドウ色の余った布」を夫から受け取る。
大勢の人が行きかう中、6、7歳の少女らが「ことろとろ」で遊んでいる。
「かさねかさね まにまに」
「かえすかえす きっさき」
一人一人違う花簪に、おそろいの竜胆紋が付いた帯をつけた少女らは目立つが、周りの人間は気に留めない。
おむいが足早に、少女らの隣を過ぎる。
「血路に 流し車」
「とんとんとん とんとんとん」
男がリンドウが供えられた「3基の墓」の横を過ぎた後、足を止め、振り返えった。
「うら手ずから」
「触った鬼のおたよりは」