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めくるめくらがえ  作者: 寺子屋カヤ
4/11

嫉妬

「これね、この役者さんが着よった色なんよ」

おむいが瀬川菊之丞の浮世絵を指さした後、袖を振りながらくるりと回る。

「綺麗な役者色~」

娘1がため息まじりに言う。

娘2が身を乗り出す。

「もしかして、つけてるのも路考櫛?」

「そー!菊様みたいになりたいの」

おむいが浮世絵の絵と同じポーズをとる。


「私も、おしゃれしたいなぁ」

「これは、どう?」

おむいが「岩井茶の着物」を棚から出して、娘1に見せる。

「あそこの五代目の役者さんが、よう着よった色で、人気なの」

おむいが岩井半四郎の浮世絵を指差す。

「おうおう、みんな仲良くやっとるかい?」


夫が、部屋に入ってくる。

「おむいちゃんのお父さん!今、おむいちゃんに着物選んで、もらっとったと」

「おむいちゃん、おしゃれだから、みんなの憧れなんよ」

「そうかい、そうかい。父さんは鼻が高いよ」

「冗談よさんね、もう」

おむいが、まんざらでもない顔をする。

「ごめんごめん、遅れた~」


娘3が竜胆屋に遅れて登場する。島田髷に半四郎鹿の子の着物が目新しい。

「わー、どうしたん、その着物!えらい綺麗やね」

娘1が、目を輝かせる。

「あー、これぇ?かかあのお古なんよ。わがまま言って、譲ってもらったと」

恥ずかしそうに笑う娘3に娘2が詰め寄る。

「それ、人気の役者さんが着よった柄物で今、大人気なもの!」

「えっ、そうなん、知らんかった」


「ねっ、ねっ、どんな役者さんなん?」

「おむいちゃんが、さっき言っとった人よ。女形もやっとったし、恋する乙女の役が、ように合っとったよ」

娘2が娘1を見ながら、岩井半四郎の浮世絵を、あごで指す。

「なら、燃える恋で身を焦がさんごと、気を付けらなねぇ」

おむいが「岩井茶の着物」を元に戻す。

「やだ、おむいちゃんったら~」

娘らが笑う。

          

娘らが竜胆屋から出ていく 。


おむいが1人で手荒く、店の古着を漁る。

ひとしきり探した後、最後に手に取った古着を壁に投げつける。

おむいは部屋の真ん中にいて、部屋全体に古着が散乱している。

おむいが障子を睨んだ後、浮世絵と障子紙をやぶくと、紙切れが雪のように降った。



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