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第1王女②

「ルーミア様!?」


慌てたような声を出すラズールを制止しつつ、こちらを首に手を回し微笑んでくる第1王女を見上げる。


「なんのつもりですか、姉上」

「そなた、記憶喪失なんじゃろ? それならより密着した方が思い出しやすいと思ってのう」

「以前の俺はあなたとこのようにスキンシップをとっていたのでしょうか?」

「たまにな。だが、恥ずかしいのかいつもすぐ顔を真っ赤にして逃げてのう。あの反応も可愛かったぞ」


そう言って自分の胸を押し付けつつ、顔を近付けてくる第1王女に軽く目眩がした。

アルボルの第1王女の印象がエロいだったのがよく分かる気がする。


「姉上、俺には婚約者がいるらしいので、それ位で良して下さい」

「婚約者は婚約者じゃろう。妾とそなたは半分とはいえ血の繋がった姉弟。密接な関係になって何が悪い。もちろん、もっと深い繋がりも歓迎じゃ」

「あなたは、弟に抱かれたいのですか?」

「言っただろう? そなたなら歓迎じゃと」


顎に指を添えられたかと思った直後。第1王女の纏った香りが濃くなると同時に、唇に自分とは違う体温が重なった。

咄嗟に離れようとするが、いつの間にか後頭部に回った彼女の腕が邪魔をして身動きが取れない。


そのまま、微かに開いていた隙間からぬるりとした生暖かいものが口腔に入り込んできた。

思わず第1王女の体を押すが、どこに力があるのかビクともしない。彼女は舌を絡められるだけでなく、歯列をなぞってくる。そして、上顎も擽られた瞬間、ぞくりとした痺れが背筋を走り体が勝手に跳ねた。



それに気を良くしたのか、さらに口付けは深くなっていく。離そうと必死に彼女の体を押していた手は、どんどんと縋るようなものになっていくのが嫌でもわかった。


数十分、いや、数分だったのだろうか。銀糸を纏いながら第1王女が離れていった時には息も絶え絶えになっていた。


「記憶がなくても同じ反応をするのか。面白いのう」

「いくらなんでも、冗談が過ぎます」

「なに、挨拶のようなものだ」


悪びれもなく言ってのける第1王女に、思わずため息が出た。

挨拶でこんなキスを毎回されたら、体が持たない。


「出来ればもう少し軽いものでお願いします」

「ほう、するなとは言わぬのだな」

「嫌がる俺の顔が可愛いというあなたの事ですから。ここでそう言えば、面白がって止めるどころか、スキンシップを過度にしてくるでしょ」

「ほぉ、よく分かったのう 」


褒美とばかり、軽いキスをされて疲労感が増す。

普通なら美女とキス……しかもディープキスが出来たと喜ぶべきなのかもしれないが、状況が状況だけに素直に喜べない。


「以前のように初々しい反応をするそなたも良かったが、今のように凛とした態度を崩さぬのも良いのう。どうじゃ? 今から共に寝室へ行くのは。今のそなたとなら、熱いひとときを過ごせそうじゃ」

「お断りします。というより、姉上なら選り取り見取りでしょ」

「妾は、この世界の美を全て自分のものにしたいだけじゃ。そなたは忘れているようじゃが、王族はより強固な血筋を作る名目なら、兄弟間で子供を作ることが許されておる。だから、そなたと妾が体を重ねても何も問題はないじゃろ?」



今、とんでもない事実が聞こえなかったか?


確認の意味も込めて、ラズールに視線をやると気まずそうに頷いたから本当の事なのだろう。

たしかに、より血筋を濃くするのに近親相姦に近いことを王家がやっていた歴史は俺の世界にもある。だが、勉強の一環として学んだ話だったから「そいうことがあった」で片付いたのだ。


まさか、当事者になる日が来るとは。


「姉上」

「なんじゃ?」

「姉上の考えを否定する気はないですし、性事情についても互いに合意を得ているのであれば俺は良いと思ってます。ですが俺は、そのような行為は互いに互いを理解し、愛し合った結果するものだと思っています。なので、遊びで体を重ねることはまず無いので諦めて下さい」

「その言い方だと、そなたと妾が愛し合えば一夜を共に過ごすのもやぶさかではないと言っているように聞こえるが?」

「可能性としては低いですが、万が一そのようになった場合は、将来も見据えてきちんと考えます」



はっきりと答えると、第1王女は目を丸くしたあと腹を抱えて笑いだした。

そんな変なことを言ったつもりはないのだが、暫く笑っていた彼女は目頭に溜まった涙を拭いつつ、口を開く。


「はー、久々にここまで笑ったのう。愉快愉快。余計そなたが欲しくなった」


蝶が舞うようにひらりと俺の膝から降りた蠱惑の姫は、にこりと俺に微笑みかける。


「我が弟、アルボルよ。このルーミア・ジニュエーブルがそなたの心も体も妾の手中に落としてみせようぞ」


堂々とした宣言をする第1王女の姿は、先程と違って気品高き王族の威厳を感じる。さすが王の血族として民の上に立つ者というべきか。

思わず跪きたくなる。


「もう少しそなたと一緒にいたいのだが、そろそろ執務の時間だな。この辺りで失礼するぞ。今日は楽しかった。また近いうちに会おうではないか」


そう言って、第1王女は姿を消した。

彼女の姿が見えなくなった途端、石が乗ったかのように重くなる体を机に預ける。

なんか、どっと疲れた。


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