教会の中
中に入ると、仄かな栗の花の香りと共に濃い香水の香りが鼻腔をくすぐる。
そして、所々に露出の多い女性と男性が仲良く長椅子に座っており、場所によっては事に及んでいるのでは、という雰囲気の場所もあった。
こうも生々しいと、なんとも言えない気分になってくる。
自然と刻まれていく眉間のシワを揉んでいると、奥からドレスを着た女性がやってきた。
「旦那様方、初めての方ですね」
「そのこの辺りのリーダーが故意にしている女性に会いたいんだが」
「エリアにですか?」
スッと女性の目が細まるが、その後笑みを浮かべ俺の腕をとった。
「残念ながら、彼女は特別客しか取らないので。他にも良い子はいますから、そちらの子はどうですか?」
「……」
名前が分からない以上、そういうしかないと思ったのだが、雰囲気からしてこれは名前を指定したとしても同じことを言われるだろう。
なら、別の切り口でいくしかない。
「分かった。それならお願いしてもいいか? ただこういう見られる所は不慣れなので、出来れば個室を貸して貰えると嬉しいのだが」
「個室はそれなりの金額がしますが」
「金ならある」
ラズールから借りた硬貨を渡すと、女性は微笑んだ。
「確かに。では……サニラ、メリル」
呼ばれたのは、2人の女性。
パッと見たところ、10代後半か。
こんな若い子すら体を売らないと生計を立てられないのかと思うと、なんとも言えない気持ちが広がるが今は同情している場合では無い。
彼女達の後に続いて、聖堂の奥へと入ると個室に仕切られた広場のような所に出た。
まさか、こんな奥にこのような場所があるとは。
「こちらの個室をどうぞ」
開かれた扉の中を覗いてみると、古いベッドがひとつ置かれた簡素な部屋だった。
おそらく個室は、そういうことをする為だけの場所なのだろう。なら、この作りも頷ける。
「貴方様には、サニラをお付けしますね 」
「サニラです。よろしくお願いします」
頭を下げたのは、くせ毛と少し大きめの翡翠の瞳が特徴の少女。ラズールには、メリルと呼ばれた子がつくみたいだ。
心配そうな視線を寄越すラズールに1度頷いた後、俺は部屋に入る。
客商売ということもあって、多少は衛生に気を使っているのか、他の場所よりは清潔そうに見える。
だとしても、ここはまだいい方だろう。
なんとかここを医療所として使えるようにしても、周りの衛生が悪ければ意味が無い。その辺も考えなくてはと思っていると、衣擦れの音がしてそちらに視線を向ける。
サニラはゆっくりとドレスに手をかけていた。
そうだ、彼女に言うのを忘れていた。
「俺はそういうことをしに来たんじゃなくて、君に聞きたいことがあって来たんだ」
「聞きたいこと?」
「エリアって子について教えて欲しい」
サニラは驚いたように目を見開いた。
さっきの受付の女性の反応といい、エリアって子は一体何者なのだろうか?




