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セルシア王女②



1時間ほどして、ラズールと共に俺の部屋に来たセルシアは、別人と思えるほど綺麗になっていた。


身なりを整えただけでここまで変わるとは。

セルシアは俺の前に立つと、深々と頭を下げる。


「お気遣いありがとうございました。私なんかのために、湯を使って下さって」


身分から考えて、最低限として与えられるもののはずなのに。

その言葉は飲み込み、セルシアに目線を合わせるように膝を折る。


「俺がしたかったからそうしただけ。気にしなくていいよ。それより体調は? どこか痛かったり、気持ちが悪かったりはしない?」


先程まで、乱暴に扱われていたのだ。

もしかしたら、セルシアにとっては当たり前になりつつある日常かもしれない。そうだとしても、嫌がる行為を強要されて心が傷つかないわけが無い。


「えっと……」


戸惑ったような声音に、少しだけ笑ってしまった。

つい最近まで自分を虐めて来た主犯格が、手のひらを返したように自分へ優しくしてくれば混乱するだろう。


それも含めて、話さないといけない。


「あまりにも俺の態度が以前と違うから、戸惑ってるんでしょ?」

「も、申し訳ございません!」

「謝ることじゃないよ。それは当たり前だから」

「当たり前……?」

「それも含めて話をしたい。けど、今日は疲れただろ? 急ぐ話では無いから、日を改めても良い」

「い、いえ! 平気です」

「そしたら……天気も良いし、中庭にするか」

「中庭……ですか?」

「別の場所が良いなら、そこにするけど」

「滅相もございません! アルボル様のご意見に口を出してしまい、申し訳ございません……」

「さっきも言ったけど、謝らなくていいよ」


俺はラズールを振り返ると、口を開く。


「ラズール。急で悪いんだけど、中庭に茶器とお菓子を用意を。セルシアにも俺と『同じもの』を用意してあげて」

「え? 同じものですか?」


驚いたのか、いつもより上擦った声と共に、ラズールが目を瞬かせる。


それはそうだ。アルボルはセルシアとお茶をする時、色がついてればいいと思えるくらい粗末な茶と湿気り始めた菓子しか出さないようキツく言いつけていたのだ。


おそらく、自分と格差を付けて優越感にでも浸りたかったんだろうが、残念ながら俺にはそんな趣味はない。


「よろしいのですか?」

「構わないよ。なにか思うところがあるなら、俺のものをいつもセルシアに出しているものと同じにしてもらってもいい」

「あんな悪いものをアルボル様にお出し出来るわけないじゃないですか!」

「なら、セルシアに俺と同じものを出して欲しい」

「かしこまりました」


ラズールは一礼すると、中庭へと向かっていく。


「あの、アルボル様」

「お茶の時に話すけど、俺に様は付けなくていいよ」

「け、けど」

「……俺は、アルボルじゃない」

「え?」

「正確には、体はアルボルだけど中身……精神って言うのかな……それは別人なんだ」

「それは、どういう……?」

「詳しくは中庭で話す。取り敢えず向かおうか」





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