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I am Aegis Mors 3  作者: アジフライ
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第27話【心亡き深淵の魔術師】

「……う……」

破壊された商店街の真ん中……

清火は目が覚める。

……私……気絶していたのか……一体何時間経った……?

「体が……重い……」

時間の感覚が分からないまま清火は体を起こし、 歩く。

早く……次の……魔物の……場所へ……

清火は次の魔物がいる場所へ向かおうとドラゴンゾンビを呼び出そうとする。

しかし上手く体が動かない……治癒をしようにも上手くいかない……

するとそこに

「おい! ここに誰かがいるぞ! 」

生存者を捜索しに来た攻略者達がやって来た。

「おい、 大丈夫かあんた……フラフラだぞ……」

攻略者は清火に駆け寄る。

「……回復の……魔法を……」

「え……」

「回復の魔法を……もしくは薬を……早く! 」

清火は急いで攻略者に回復をさせる。

「……助かりました……」

回復して貰った清火は攻略者に礼を言う。

「え……えぇ……それより……あんたは……」

「私はモルス……今、 日本各地に出現した魔物達の殲滅に当たっている者です」

それを聞いた攻略者は驚愕する。

「も……モルス! ? あの殲滅の死神の! ? 」

「……えぇそうです……」

そう言うと清火は立ち上がり、 ドラゴンゾンビを呼び出す。

「時間が無いのでこれで失礼します……回復ありがとうございました」

「あ……あぁ……」

そして清火はドラゴンゾンビに乗り、 その場から去った。

中国地方のとある野原にて……

黒く変色した大地の真ん中に一人の男が佇む……

そこに

「アンタで7体目ね……」

清火が空から降りてきた。

清火は黒いオーラを纏い、 既に戦闘態勢になっていた。

『……顔色が悪いぞ……それで闘うと……? 』

男は清火が疲弊しているのに気付く。

「……アンタの次で最後だ……今更休んでる暇は無いんでね……」

……いや……待て……何故こいつは話せる……

清火は男が会話できる事に気付く。

「ねぇアンタ……話せるの? 」

『……我にも分からぬ……突然……意識が戻って……』

……こいつだけ……正気を……?

すると清火は男にある提案をする。

「ねぇ……どうか大人しく殺されてくれない……? アンタらが何かに操られている事はもう分かってる……終わらせたいんでしょ? 」

そう言うと男は

『……それは叶わぬ提案だ……意識が戻ったとは言え……こうして話すので精一杯……貴様が我に手を出せば……恐らく……我の体は我が意識とは関係なく動き出すだろう……』

冷静に返してきた。

……体は言う事を効かない……か……どうする……こっちの体力はかなり消耗している……できれば激しい闘いは避けたいんだけど……

清火は考える。

そして

「……分かった……アンタと戦う……」

清火は男と戦う事を選んだ。

『……それで良いのか……疲弊したその体で……しかも単独で我と立ち合うなど……不策にも程があると思うが……』

「確かにそうね……でも何だろう……私の本能が……」




「今アンタと一対一で決着を付けろと言っている気がする……」




そう言うと男は不敵な笑みを浮かべる。

『奇遇だ……我も貴様と同じ意見だ……』

そして男は大杖を振り上げ地面に突き刺した。

次の瞬間、 杖が刺さった所から地面がブロック状に砕け、 周囲の空間に舞い上がった。

瞬く間に周囲の空間が歪み、 地面がありとあらゆる場所に浮いた状態になった。

清火は浮いている地面の一つに着地する。

……流石はラスボスの一歩手前と言ったところか……凄まじい力を感じる……

清火は男が創り出した空間に圧倒される。

すると清火の視界にあの男が映る。

『存分に力を振るえ……強き者よ! 』

そう言うと男は自身の周囲に黒い霧を発生させ、 清火の方へ触手のように飛ばしてきた。

それを清火は大鎌を回転させ、 風圧で霧を吹き飛ばした。

……腐食性を持つ気体か……耐腐食性を持つ私の体でも触ればひとたまりも無いか……でも……防げなくはないか……

そう思い清火は目にも留まらぬ速さで空間を駆け回り、 瞬く間に男に距離を詰める。

そして大鎌を振りかぶると

『……まだ若造だな……』

男には視線を清火に向け、 そう呟くと指を鳴らした。

次の瞬間、 清火の視界が逆さになる。

「何ッ! ? 」

『ここは我の空間だぞ……距離、 方角……この空間に存在する概念全てが我の手の内ぞ……』

状況が分からない清火に男はそう言うと手を清火の方に向ける。

すると清火の体は吹き飛ぶように男から遠ざかる。

そして清火は背後に浮いていた地面に叩きつけられる。

「……ッ……やっぱり強いな……でも……今までの敵の中で一番動きが遅い……隙さえ突ければ……」

そう言い、 清火は起き上がると同時に

『言ったであろう……この空間の全ては我の手の内……どこからでも貴様の姿は見える……』

男が清火の真横に現れ、 囁く。

驚く清火に男は空かさず黒い霧で攻撃する。

清火は間一髪で男の攻撃を避ける。

「……は……は……」

……クソ……回復してもらったとは言え……まだ完全には回復できていない……視界が……眩む……

清火は息を切らす。

すると男はこんな事を呟いた。

『……我には師がいた……赤き髪に……美しい白いローブを身に纏っていた……』

「……急に何の話? 」

『我は師から魔法の全てを教わった……しかし……この我でも……真似のできない技があった……』

……まさか……ヒントを与えてる……? アイツの師匠にしかできなかった技……それが奴の弱点……?

男は話を続ける。

『……全ての魔を焼き尽くす聖なる炎……そして……全てを封じる不懐の氷……その二つの力はどの魔法よりも力強く……美しかった……正に神の領域だった……』

……炎……氷……? それが奴の弱点……?

すると男は清火を見る。

『……貴様からはそんな我が師と同じ気配がする……果たして……それがどんな意味を持つのか……』

そう言いながら不敵な笑みを浮かべると男は再び指を鳴らす。

次の瞬間、 周囲に浮いていた地面の塊が清火の方に迫ってきた。

まずい……

このままでは潰されると感じた清火は空間操作で瞬間移動しようとする。

しかし力が作用しない。

そっか……ここは奴の空間だっけ……

空間操作ができないと悟った清火は大鎌を構える。

すると

「うおぉぉぉらぁぁぁぁぁ! ! ! ! 」

清火は凄まじい覇気を放ち、 雄叫びを上げながら大鎌を振り回した。

大鎌からは凄まじい威力と大きさの空気の刃が発生し、 瞬く間に清火に迫り来る地面の塊を斬り裂いた。

それを見た男は

『あぁ……この凄まじい力……正しく王の血……やはり……貴様は……! 』

感激するように身を震わせる。

「はぁぁぁ……! 」

清火は大鎌を肩に担ぎ、 黒いオーラを身に纏い始める。

……正直限界だけど……奴を超える力はこれしか無い……

そう思った清火は騎士と闘った時と同じような形態に変化した。

すると……

「……あ……あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛……! ! 」

清火の全身はどす黒いオーラに包まれ始める。

顔も黒い影に包まれ、 紅い目が不気味に光る……

口は心なしか鋭い牙を持ち、 全てを喰らわんとする怪物のように見える……

その清火の姿を見た男は固まる。

『何だ……この圧は……これは……死……? いや……憎悪……? ……何もかもが混ざり合っている……この世の『負』その物だ……』

すると清火の周囲の空間にヒビが入る。

次の瞬間

「う゛お゛あ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛! ! ! ! ! ! 」

清火? は大口を開けながら凄まじい叫び声を上げた。

それに呼応するように空間の亀裂が瞬く間に大きくなり、 ガラスが割れるように砕け散ってしまった。

気付くと辺りの景色は元に戻っている。

男は困惑していると

「喰らう……私は……『死』だ……! ! 」

清火? が男の真後ろに立ち、 大鎌を首に掛ける。

そして大鎌は勢いよく引かれ、 男の首に斬りかかった。

しかし、 男は瞬間移動し逃れた。

男は黒い霧で反撃するも……

『まさか……我が力が効かぬ……』

周辺の植物は腐り落ちているのにも関わらず、 霧に包まれた清火? は平然とそこに佇んでいた。

すると清火? は口から炎を吐き出した。

男は見えない膜のようなものを出現させ、 防御する。

しかし

『ぐぅ……! 』

炎は何も無いかのように通り抜け、 男の腕を焼いた。

『……この炎は……』

男は清火? の炎を浴びて何かに気付く。

次の瞬間、 男の腕を包んでいる炎が氷に変化し、 男の腕を砕いてしまった。

『……間違い無い……この力は……! だが……それと同時に……この悪意は……』

男は清火? の力に凄まじい憎悪を感じた。

すると

「ヌ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ……! ! 」

清火? は男のすぐ目の前まで瞬間移動し、 大鎌を振り回し始めた。

大鎌は不思議な炎に包まれており、 男の体を焼き斬ろうととする。

その炎は赤いのにも関わらず、 散らす火の粉は雪のように白い……

その炎は弧を描きながら男の胸元を焼きにかかる。

男は必死な様子でその攻撃を避ける。

『攻撃が荒々しくなっている……貴様……自我を……』

「う゛がァ゛ァ゛ァ゛ァ゛! ! 」

暗い意識の中……


『……お……ね……』


あの少女の声が聞こえてくる……


『……お姉……ん……』


清火を呼んでいる……


『……しっかりして……お姉ちゃん! 』




『あの人の魂を食べちゃダメ! ! 』




「ッハァ……! ! ! 」

無意識の中で少女の叫び声が聞こえた瞬間、 清火は自我を取り戻した。

戻って来れた! ……でも……また持っていかれそう……今しか……無い! ! !

「うぉぉぉぉぉぉ! ! ! 」

再び意識を持っていかれそうになった清火は一瞬の機を逃さず、 大鎌を振り上げる。

すると大鎌を包む炎が瞬間移動し、 男の胸を焼き斬った。

胸を斬られた男はその場で吹き飛ばされるように倒れた。

それと同時に清火を包んでいた黒いオーラも消え、 清火の姿が元に戻った。

「……はぁ……はぁ……! ! 」

……胸が……痛い……心臓が飛び出そう……

清火は痛みに耐えつつ男の側に寄る。

男は胸を焼き斬られ、 立つ事も出来なくなっていた……

しかし、 その表情は安堵している様子だった……

『あぁ……危うく……貴様に魂を喰われるところだったな……ははは……』

そう言いながら男は笑う。

「……正直……アンタの事が誰なのか……アンタらの言う王が誰なのかも……分からない事だらけ……でも……これだけは何故か分かる……」

すると清火は男の顔に手を添える。

「……アンタは……私の事をよく知っている……」

そう言う清火に男は微笑む。

『あぁ……その瞳……我が師と同じ……優しい瞳だ……』

その言葉を最後に、 男は氷に包まれ、 粉々に砕けてしまった……

空に舞い上がる氷の粉を見ると清火は無意識に涙が溢れてきた……

……何だろう……懐かしい人に……別れを告げたような……寂しい感覚……

清火は胸を締め付けられる感覚に襲われる。

「……にしても……この力……何なの……? 」

清火は先程までの自身の力に恐怖を覚える。

…………

『う゛がァ゛ァ゛ァ゛ァ゛! !』

……怪物どころの騒ぎじゃない……あれはこの世にいてはいけない何か……そんな感じがする……

でも……

『あの人の魂を食べちゃダメ! !』

清火は少女の声を思い出す。

…………

……止めてくれたんだね……

「……ありがとう」

清火はそう呟くと立ち上がる。

すると次の瞬間……

『あぁぁ……妬ましい……妬ましいぃ! ! 』

空から憎悪の籠った女の声が響き、 竜巻のような突風が巻き起こった。

清火は空を見上げるとそこには……

「ちょっと……冗談じゃないよ……! 」

怒りの表情を浮かべる黒い翼をもつ天使の姿があった。

そんな……あと一体は関西にいるって……まさか瞬間移動してきたっての! ?

慌てる清火に天使は呟く。

『……その力……あの王の……あぁ……何故……何故お前が……その力を……妬ましい……妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい! ! 』

凄まじい圧に清火は押しつぶされそうになる。

今までの奴と比べ物にならない力を感じる……やばい……もう……体力が……

既に限界になっていた清火は体を動かせなかった。

そして天使は清火を囲うように無数の黒い槍を出現させる。

次の瞬間

『死ねぇェェェ! ! 』

天使がそう叫ぶと槍は一斉に清火の方へ飛んできた。

……マジか……また私……死ぬっての……?

視界に映る無数の槍を見て清火は死を覚悟し、 目を瞑る。

続く……


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