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I am Aegis Mors 3  作者: アジフライ
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第26話【数多の魔を率いる魔女】

前回、 炎の翼を持つ天使を単独で倒したゼヴァ……しかし、 ゼヴァはそこで倒れてしまった……

大切な仲間を一人失った清火は嘆き悲しむも、 次なる魔物が待つ地域へと向かう……

九州地方のとある街の商店街……

そこは不気味なほどに真っ白な霧に包まれ、 一寸先も見えなかった……

そこに……

「……感じる……魔物はここを何度も通っている……」

ザリ……ザリ……と、 不気味に響き渡る足音を立てながら清火は商店街を探索していた……

……攻略者達の死体が転がっている……傷口は……複数の魔物にやられたと見て間違いないか……

現場で闘っていた攻略者達は全員見るも無残な姿で死んでいた。

しばらく清火は商店街の奥へ進むと……

『……私の愛しき御方……? 』

清火の前方から不気味な少女の声が響いてきた。

清火は戦闘態勢になり、 身構えると

「……うっわ……」

深い霧の奥から無数の魔物の影が見えてくる。

その中心には異様な程に強力な気配がする。

……なるほど……あの魔物達を操ってるって訳ね……

中心に魔物を操る親玉がいると推測した清火は大鎌を横に振りかぶると

『ザンッ……! 』

大鎌を勢い良く横に振り、 巨大な空気の刃を魔物の大軍に目掛けて飛ばした。

魔物の大軍は綺麗に横に斬り裂かれ、 黒い霧のようになって消えていく。

空気の刃は次々と魔物達を斬っていく

すると……

『ギャハハハハハハッ! ! ! 』

大軍の中心から形容し難い笑い声が響き渡り、 黒い霧が波動になって放たれた。

空気の刃はその波動で掻き消える。

その声の主は

「……まるで口裂け女ね……」

目玉が樹洞のようにぽっかり空いており、 口が耳まで裂けている少女だった。

その少女は清火の方に顔を向けると

『あぁ……あなたは……違う……』

そう呟くと同時に清火の方を指す。

次の瞬間、 清火は何かを感じ、 素早く横へ避ける。

それと同時に清火のすぐ横を見えない何かが横切る。

それは地面を抉り、 清火の後ろに大きな溝を作った。

……見えない斬撃……何だろう……何故か避けれた……前までの私だったら当たっていた……

清火は自身の気付かない内に戦闘能力が強化されているのに気付く。

まさか……あの時の影響か……

清火は騎士との戦いの出来事を思い出しつつも再び戦闘態勢に入る。

すると少女は首を在らぬ方向に曲げながら清火の方に顔を向け、 大量の魔物達を清火の方へ嗾ける。

……この数を一人で相手は流石に面倒だけど……

「こっちにもいるんだよ……軍隊が……」

そう言うと清火は地面に手を当てる。

次の瞬間、 大量の魔物の魂達が地面から湧き出るように出現し、 魔物達に襲い掛かった。

後半戦にこいつと当たって良かった……今まで魔物の足止めに魂達を使っていたから数が少ない時だったら少し危なかったかも……

そう思いつつ清火は少女が操る魔物達の間をすり抜け、 少女の方へ向かっていく。

そして清火は少女の目の前まで来た瞬間、 黒月の銃口を少女に向け、 引き金を引いた。

しかし……

『ヒヒ……』

「……」

少女は目にも留まらぬ速さで手を動かし、 指で弾丸を挟むように黒月の弾を止めてしまった。

……なるほどね……魔物をけしかけるだけが能って訳じゃないってか……

すると次の瞬間、 少女は受け止めた弾丸を凄まじい速度で清火に目掛けて投げ返してきた。

しかし弾丸は清火の目の前で停止し、 消滅する。

「自分の攻撃で死ぬほど私は馬鹿じゃないよ……」

そう言い清火は大鎌の刃を少女の背後から首に掛ける。

すると少女は一気に清火の目の前まで距離を詰め、 清火の首に掴みかかろうとする。

次の瞬間

『……? 』

少女の首元にもう一つの大鎌の刃が出現し、 少女の首は前後から大鎌の刃に挟まれる。

少女の背後には清火の影があり、 少女の首を背後から刈ろうとしていた。

「ぼさっとしてると後ろから刈られるよ……死神はどこからでも首を刈れるんだから……」

清火はそう言うと影と息を合わせるように大鎌を引き、 少女の首を前後から挟むように斬ろうとする。

しかし、 それと同時に少女の姿が搔き消える。

気付くと少女は清火から距離を取った場所に出現していた。

「……まぁ……そう簡単には殺らせてくれないわな……」

清火は呟く。

すると少女は自身の体を抱き締め、 体を痙攣させる。

『……あぁ……あぁぁぁこの感覚……死の感覚……はぁぁぁ……素晴らしいわぁぁぁ……! 』

少女は息を荒くし、 興奮している様子だった。

な……何なの……新手の変態……?

清火は少女の様子にドン引きする。

次の瞬間

『私を……殺してぇェェェ! ! 』

少女は凄まじい速度で清火の方に突進してきた。

「うっわ! ホラー映画かっての! 」

清火は慌てて少女の突進を避ける。

そして少女は立ち止まり、 形容し難い動きで清火の方を向く。

……怖……

ホラー映画も顔負けな少女の不気味さに清火は恐怖する。

でも……何だか余裕がある……あの女の子の動きも追えない程じゃない……魔物達は魂達でも対処できるし……この戦いの中で格段に成長しているのが分かる……

清火は自身の成長を感じながらも大鎌を構え、 少女に向かっていく。

数分後……

商店街の建物の殆どが半壊し、 辺りはほぼ更地になっていた。

少女が率いていた無数の魔物達は全て消滅し、 残った魔物の魂達は少女を囲っていた。

少女は相変わらず不気味な笑顔のまま固まる。

「……もう諦めなさい……アンタの軍団は全滅……私の軍隊はこれだけ残っている……勝機は無い……」

清火は動かない少女に言う。

すると

『……あぁ……この力……あの御方と……同じ……』

少女は何やら意味深な事を呟くと

『ギャハハハハハハッ! ! 』

再びあの不気味な笑い声を上げ始める。

それを見た清火は一斉に魂達を嗾けるも……

「っち……」

少女を中心に黒い霧の波動が放たれ、 魂達をかき消してしまった。

波動は清火の方まで迫り来る。

危険だと察した清火は自身の周囲に黒い霧のようなモノで膜を作り、 防御した。

「……魂達が一瞬で全滅……なるほど……凄まじい魔力ね……」

『ヒヒ……ヒヒヒヒ……』

清火は少女を睨む。

……下手に近付くと危険か……黒月も有効打にならないし……以外に面倒な相手ね……

清火は少女の様子を伺っていると……

『……~~~~~~……』

少女はぶつぶつと何かを唱え始めた。

すると少女の体から分裂するように分身が出現し始めた。

その数は数十体にも及び、 清火は少女の分身に取り囲まれてしまった。

少女は不気味な笑顔を見せる。

「……立場逆転ってか? ふざけやがって……」

完全に馬鹿にされた清火はイラつく。

そして少女の分身は一斉に清火へ襲い掛かってきた。

すると次の瞬間……

「……」

清火が少女の本体に向かって睨み付けると辺りの動きが停止する。

……試しにやってみたけど出来るものだなぁ……

実はこの瞬間、 清火は自身のありとあらゆる動作を周囲の何千倍もの速さに引き上げたのだ。

思考速度も勿論、 動体視力も強化され辺りの時間が止まっているように見えているという事だ。

……遅い……と、 いうより……もうほぼ止まってる……

すると清火はゆっくりと歩き始める。

脚を踏みしめる度に砂が舞い上がり、 停止する。

そして清火は少女の目の前まで来ると大鎌を構え

……悪いわね……早々に決着付けさせてもらう……!

少女の首を斬った。

それと同時に周囲の動きが元に戻り、 少女の分身は一斉に消える。

斬られた少女の首は地面に転がる。

そのまま体も倒れるかと思ったその時……

『あ゛……あ゛ぁ゛……ゴブッ……』

少女の体が倒れる寸前の体制で止まり、 再び起き上がってきた。

そして側に落ちた自分の首を持ち上げ、 再び自分の首に付けたのだ。

ゴキッ……ゴキッ……という不快な音を立てながら少女は首を左右に回し、 首の傷を瞬く間に再生させてしまった。

「……嘘でしょ……首を斬っても死なないって……」

それを見た清火も流石に驚く。

清火は再び大鎌を構えると少女は不気味な笑顔を浮かべ、 両手を広げる。

すると少女の足元から黒くネバネバした謎の液体が溢れ出、 宙に浮く複数の黒い塊を作り始めた。

あの液体……リーグと同じ魔法……?

清火は一度リーグの魔法と同じモノかと考察したが、 その黒い液体の異様な雰囲気で全くの別物だと確信した。

あれは……あの騎士の炎と同じ……!

そう察した清火は距離を取ろうとした次の瞬間

『キェアァァァァァァァァ! ! ! 』

少女は避けた口を限界まで開き、 発狂する。

それと同時に黒い塊は形を歪め、 清火に目掛けて棘のようなものを凄まじい速度で伸ばしてきた。

清火は間一髪でその棘を避ける。

黒い塊の棘は瓦礫に刺さると、 まるで溶岩で溶かしたようにコンクリートの壁を溶かしてしまった。

辺りは一瞬にして伸ばした棘だらけになり、 複雑に入り組んだジャングルジムのようになっていた。

「……触るのは危険か……全く……とんだ隠し芸ね……」

そう呟き清火は体制を整え、 少女の方を見る。

少女は伸ばした棘の上に飛び乗り、 それを伝っていく。

使った本人には影響が無いのか……面倒な……

次の瞬間、 少女は棘を蹴って辺りを跳び回り始める。

少女は清火の方へ突進してくる度に棘を飛ばして来る。

清火はそれをかわすので精一杯になる。

「……」

すると清火は何を思ったか、 その場で棒立ちし、 目を閉じ、 大鎌を刃が後ろになるように構える。

……奴は首を斬っても死ななかった……となると他に急所があるという事……首以外に急所があるとすると……あそこしかない……

そして清火は構えたまま静止する……

少女は相変わらず清火の周囲を駆け回り、 棘を飛ばして来る。

棘は清火の体をかすめるように飛んでくる。

しかし清火は動かない……

『あぁ……あなたは死ぬのね……可哀想に……可哀想にぃぃ! ! 』

少女はそう叫んだ瞬間、 無数の棘と共に目にも留まらぬ速さで清火の方へ突進してきた。

次の瞬間……

「……ッ! 」

清火は目を開き、 体を捻って一回転し、 少女の真横に回り込む。

そしてその回転の勢いに合わせて大鎌を少女の上から振り下ろした。

大鎌の刃は少女の心臓を背中から貫き、 地面に突き刺さった。

それと同時に清火を囲っていた棘の動きが一斉に止まる。

「……ッはぁ……はぁ……! 」

集中で息が止まっていたのか、 清火は吹っ切れたように息切れする。

そして

『キャァァァァァァァァ! ! ! 』

心臓を貫かれた少女は発狂する。

すると少女の体は黒い霧に包まれる。

霧が晴れるとそこには目玉もあり、 口も裂けていない普通の顔をした少女がいた……

『……あぁ……これで……終われるのね……』

正気に戻ったように少女は呟くと周囲にあった黒い棘がガラスのように砕け、 ゆっくりと落ちていく……

それを見た清火は刺さった大鎌を抜き、 少女の体を抱える。

「……アンタら……本当に何者……? その凄まじい強さ……普通じゃない……」

清火は少女に質問すると

『……フフ……それは……竜に聞けば分かるわ……』

少女は不敵な笑みを浮かべながら言う。

「竜……? 竜って……誰の事? 」

『私は……もう……何も覚えてないわ……ただ……私の最後の記憶は……』




『二本の大剣を携えし守護者と……王の姿……』




……二本の大剣……?

それを聞いた清火はおもむろにゼヴァに持たせていた大剣を出すと

『……それは……あぁ……懐かしい……』

少女はその大剣に触れ、 涙を溢す。

そして少女は清火の方を見る。

『……そう……あなたは……王の……フフ……また……会えるなんてね……』

その言葉を最後に、 少女は清火の顔に手を添えながら消えてしまった。

……また……今の女の子と言い……あの騎士と言い……私と誰とも分からない王と……何か関係が……?

清火は魔物達が度々残していく意味深な言葉に引っかかる。

すると清火は頭痛を感じる。

ッ……ずっと戦っているから疲れてるのか……?

そう思った矢先、 清火の中で記憶が流れ込んでくる。


『……どうか、 ここへ置いて行ってしまう事を……許して下さい……』


身に覚えのない記憶……声……


『私は、 必ずまた貴方の前に現れると誓います……』


地面に突き立てられた赤い刃を持つ黒い剣……


その前に赤い髪をし、 白いローブを見に纏う一人の少女が跪いている……


『例え、 全てを忘れてしまったとしても……』


「……ッ……」




『シュラスさん……』




聞き覚えの無い誰かの名前を聞いた瞬間、 清火はその場で気絶してしまった……

その頃……

中国地方のとある野原にて……

そこに一人の男が佇んでいた……

男は深紅のローブを身に纏い、 枯れ枝のようないびつな形をした大杖を持っている。

そしてその男を囲うように周囲の草が真っ黒に変色し、 枯れていた。

『……感じる……我が王がお戻りになさった……そしてこの気配……』

頭の中に直接響いてくるような不気味な声で男は呟く……

そして男は顔を上げ、 虚ろな目で前を見る……




『我が……師……? 』




黒く染まる野原の真ん中で男はそう呟いた……

続く……


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