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I am Aegis Mors 3  作者: アジフライ
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第24話【黒き炎を纏いし騎士】

前回、 清火は北海道に出現した少女の影を倒した。

そして、 次の目的地である中部地方へと向かった……

「……」

中部地方のとある街……

そこは黒い炎の海と化しており、 周囲の建物が何かに斬られたように崩れていた。

……また何か強力な気配を感じる……それにこの黒い炎……触れただけでヤバいっていうのがビリビリと伝わる……ここに来る途中で送り出した魂達がいくらか戻ってきているし……この近くにいると見て間違いないか……

清火は黒い炎を避けながら先に進む。

すると

『……聞こえるぞ……その鼓動……只者ではあるまい……』

錆びた鉄を擦ったような男の声が聞こえた。

その先にいたのは

「アイツが四体目の魔物……か……」

黒く不気味な光を放つ剣を肩に担ぎ、 その場でしゃがみ込む一人の騎士がいた。

その姿は何とも不気味な雰囲気を放っており、 全身を黒く染める鎧を身に纏い、 ボロボロのマントを靡かせている。

そして目は血のような汚れが付いているボロボロの包帯で覆い隠しており、 顔は良く分からない。

ゲェ……また剣を使う魔物か……刃物を使って来る魔物ばっかでそろそろうんざりしてきてるんだけど……

そんな事を考えつつも清火は大鎌を手に取り、 変身した。

すると騎士は立ち上がり、 清火の前に歩み寄る。

『……名乗るが良い……強き者よ……』

「……私は……モルス……皆は殲滅の死神とか呼んでるけど……アンタは? 」

『我は……名を失いし流浪の騎士……名は無い……』

そう言うと騎士は剣を構えた。

やけに武人らしいな……ああなる前の性格が少し残ってるって感じか……

しばらく二人は睨み合う……

「……」

『……』

隙が無い……と言うより……どこを見ているのか分からない……それに……あの闘気……あの天使や影とは格が違う……

清火は騎士の闘気に圧倒され、 冷や汗を流す。

すると清火はおもむろに剣を腰の鞘に納め、 何かの構えを取る。

あれは……よくアニメやら映画で見た事がある……抜刀術ってやつか……?

清火は騎士の構えに警戒する。

『……剣技……神……殺し……』

騎士がそう呟いた次の瞬間、 騎士の周囲に黒い炎が立ち上り、 それと同時に騎士の姿が清火の前から消えた。

ッ! ! ? まず――

清火は何か嫌な予感を感じ、 防御の体制に入る。

しかし……

『ブシュッ! 』

「ウッ……! ? 」

清火の脇腹に深い切り傷が入った。

気が付くと騎士は清火の目の前におり、 剣を天に向けて引き抜いた体制で止まっていた。

何……されたのか……分からなかった……あの影とは違う……速度とかそう言うのじゃない……!

清火は焦りつつも傷を治癒しようとする、 しかし傷には黒い炎が纏わりついており、 治癒を妨害していた。

「この……炎は……やっぱりヤバいやつだったか……」

清火は深い傷を治癒出来ずにいると

『……貴公は強い……だが……惜しかったな……我には及ばなかった……』

騎士はそう言うと清火の目の前に歩み寄る。

ヤバい……ヤバいヤバいヤバい!

清火は命の危機を本能で感じる。

咄嗟に事象の書き換えもしようとするも、 黒い炎のせいか何故か効果を発揮しない。

せめてもの抵抗に清火は黒月を構えるも……

『カァンッ! 』

騎士は黒月を清火の手から弾き飛ばしてしまった。

そして……

『……悪く思うな……貴公は良き戦士だ……』

騎士はそう呟き、 清火の首を刎ね飛ばした。

宙を舞う清火の視界……

清火の感覚は首から下までで無くなっていた……

……あぁ……私……死ぬのか……こんなあっという間に……

僅かに残った意識の中、 清火は冷静になる……

……過信していた……私は……誰よりも強くなった……そう思っていた……でも……忘れていた……この力はただの貰い物……あまり信じすぎるのは危ないって……どこかで分かっていたのに……




私って……やっぱ弱いんだなぁ……




そこで清火の意識は暗闇に堕ちた……

何も見えない暗闇の中……

清火はただ宙に浮かぶ感覚を覚える……

……私……死んだのか……情けない……あの時……あんなことを豪語しておきながら……

清火はぼんやりとする意識の中、 自身に対する苛立ちを覚える……

すると……

『……まだ……死んでは駄目……! 』

謎の少女の声が聞こえてくる……

それは清火が一番最初の頃、 力に目覚めたときに聞いたあの声だった……

……この声……あの時の……うるさいわね……ここまで戦わせておいて……まだ戦えっての?

愚痴を言う清火に少女の声はすすり泣くような声で言う……

『……私も……お姉ちゃんをこれ以上苦しませたくない……でも……まだ駄目……ここで終わってしまったら……全てが終ってしまう……』

もうどうなろうと知ったことじゃない……私が死んでしまえばそれまで……世界がどうなろうが……私はこれ以上死ぬことも無い……

『違う……違うの……お姉ちゃんの世界だけじゃない……この世の全てに存在する世界……それどころか……神々すらも……その存在が……全てが……消えてしまう! 』

……どういう事……全てが終わるって……神々の存在すらも消えるって……?

すると清火は不思議と体の感覚が戻るのを感じる……

そして清火の顔に小さな手が触れる感覚を覚える……

目を開けるとそこには……

『お願い……お姉ちゃんしか……いないの……! 』

夜空のように黒く長い髪……

清火のような赤い瞳……

10歳とも行かなさそうな小さな少女が清火の顔に手を添えていた……

その眼からは沢山の涙が溢れており、 悲しそうな表情で清火の顔を見つめる……

アンタは……?

『今……ここで……お姉ちゃんに……私の力を貸してあげる……使って……どうか……勝って……』

少女がそう言うと同時に清火の中から何かが溢れ出して来る感覚を覚える……

この感じ……前にあのリンゴを食べた時と似ている……でも……あの時よりも……強い……!

『この力は強すぎるから……人間の身体じゃ長くは使えない……気を付けて……』

少女はそう警告すると清火の意識は再び暗闇に堕ちた……

「……クソったれが……まだ死なせてくれないってか……」

『! ? 』

静まり返っていた戦場で清火の声が響く。

騎士は振り返り、 清火の首の方に顔を向ける。

すると閉じていた清火の目は開き、 騎士の方を睨みつけた。

同時に倒れていた清火の体が一人で動き出し、 黒いオーラを纏い始めた。

次の瞬間

「あぁぁぁあぁァァァァ……! ! ! ! 」

清火は振り絞るような声を上げ、 真っ黒なオーラをその周辺に解き放った。

騎士はそのオーラに吹き飛ばされる。

「……確かに凄い力……今にも心臓が張り裂けそう……」

巨大な黒いオーラの中心には首が繋がった清火の姿があり、 大鎌を持ったまま項垂れる……

白かった髪は黒く染まり、 黒く暗いオーラの中で赤い瞳が不気味に光を放つ……

その清火の姿を前にした騎士は畏怖するように後退りする。

……凄い……溢れてくる憎悪で頭がおかしくなりそう……誰でもいい……殺したいと……私の心に……何かがずっと語り掛けてくる……

時間が無いと悟った清火は騎士の方を見る。

「……来い……第二ラウンドだ……」

『……』

次の瞬間、 騎士は目にも留まらぬ速さで清火の前に現れ、 剣を振り上げた。

しかし……

『ッ! 』

清火は指先一本で騎士の剣を止めた。

まるで岩に剣を当てたかのように動かなかった。

……遅い……何もかもがゆっくりに見える……それに体が勝手に反応する……

清火は自身に起こっている不思議な現象に少し驚きつつも騎士から目を離さない。

すると騎士は剣から黒い炎を放ち、 清火を包み込む。

しかし清火はその炎にもビクともしなかった。

次の瞬間、 清火は素手で騎士の剣を鷲掴みにしてきた。

騎士は剣を引き離そうとするも一ミリも動かない。

清火は剣を掴む手に力を込め始める。

すると剣は徐々にきしみ始め、 ヒビが入る。

それを見た騎士は清火の体を蹴り、 その反動で剣を引きはがした。

『……一体何が起きた……その力……神に……否……神をも超える力……幾つもの世界すら死に包まんとするその瘴気……貴公は……一体……』

明らかに動揺を見せる騎士に清火は答える。

「私は……モルス……文字通り……『死』だ……クソったれな次元迷宮に……『死』をもたらす……」




『殲滅の死神』だ……




清火がそう言った次の瞬間、 辺りが暗闇に染まる。

騎士は慌てた様子で辺りを見渡す。

すると清火の背後から全てを包み込まんとするほどの大きさの『何か』が顔を出す。

それは全ての生きとし生ける者に恐怖を与え、 魂をも喰らわれてしまうと感じる程の異様な雰囲気を放っており、 その口からは無数の人間や動物の叫び声が響いてくる。

騎士は恐怖からか、 身動き一つできずにいた。

その時、 清火の中であの声が響く……


喰らえ……喰らえ……全ての魂を我が物に……


何かが清火に騎士の魂を喰らえと語り掛けてくる……

しかし清火は抵抗した。

駄目だ……この……人達……は……ただ……無理やり……動かされてる……だけ……苦しむ魂に……これ以上の……苦しみは……!

清火は頭を抑える。


喰らえ……喰らえ……喰らえ! !


「うるっせぇぇぇぇぇぇぇ! ! ! ! 」

そう叫ぶと同時に清火は大鎌を持ち、 騎士の目の前に瞬間移動し、 首を刈った。

すると暗闇が晴れ、 元の景色に戻る。

「はぁ……はぁ……」

ギリギリで正気を保った清火は息を切らす。

すると首だけになった騎士が清火に語り掛ける。

『貴公……我に……慈悲を与えたか……』

「……慈悲なんかじゃない……ただ……アンタらがあまりにも居たたまれないから……わざわざ力を抑え込んで手加減してやっただけ……」

『……そうか……』

騎士はそれ以上何も言わなかった。

すると清火は騎士に向かって言った。

「アンタらの王が誰だか知らないから探しようも無いけど……これだけは約束してあげる……アンタらを苦しめた奴をいつか見つけ出して、 ぶち殺してやる! 」

そう言うと騎士は微笑む。

『貴公には……我が王と同じ鼓動を感じる……感謝するぞ……死の……英雄……よ……』

その言葉を最後に騎士は灰のように散ってしまった。

それと同時に辺りで燃え盛っていた炎が消え、 天には星々が煌めく夜空が広がった。

……死の英雄……か……英雄……私なんかが……英雄なんて呼ばれる資格が……あるのかな……

静まり返った街の真ん中で清火は夜空を見上げながらそんな事を考えた。

いつの間にか清火を包んでいたオーラも消え去り、 元の姿に戻っていた。

…………

その頃……

ゼヴァはと言うと……

紅い火の海が広がる戦場の真ん中で炎の翼を持つ天使と睨み合っていた。

『……炎の天使……貴様とは……何か繋がりを感じる……あの剣の天使と同じだ……』

天使を見たゼヴァはそう呟く。

『蒼い……炎ぉぉ……私を……焼いたぁぁ……あの……炎ぉぉ……あぁぁぁあぁ……』

天使はゼヴァに顔すら向けず、 ただ譫言を続けながらその場で蹲る。

『聞く耳持たず……か……だが構うまい……モルス様の命により、 その命……頂戴する! 』

そう言ってゼヴァは天使の方へ突撃した。

同時刻……

攻略者協会本部にて……

修次郎はいつものように会長室で仕事をしていると

『ブゥンッ……』

「む……? 」

部屋の奥に空間の亀裂が入った。

何事かと修次郎は身構えるとそこから

「ふぅ……久しぶりの外の空気だ……」

「ここまで大変でしたね……イージス様……」

イージスとザヴァラムが出てきたのだ。

二人を見た修次郎は驚愕する。

「い、 イージス……君……? それにザヴァラム君まで! 」

その声に二人は修次郎に気付く。

「あっれ! ? 修次郎さん! ってことはここ会長室? 」

「どうやら少々変な座標に出てしまったようですね……」

「お……驚いた……昔からずっと生きているとは思っていたが……まさかここで会えるとは……」

修次郎は二人に会えたことを大変喜ぶ。

「……それより……今まで姿を見せなかった君達が何故今になって……? 」

修次郎が事情を聞くとイージスは真剣な表情になって答える。

「詳しく話すと長くなるんですが……まぁ簡単に言うと……ようやく分かったんです……」

「何が……? 」




「……次元迷宮を……作った存在の正体が……」




その言葉に修次郎は固まり、 戦慄する。

突如として日本各地に現れた謎の魔物達……清火の中にいる少女の正体……現世に姿を現したイージスとザヴァラム……そして次元迷宮を作った存在とは……

清火と次元迷宮の戦いはまだ続く……


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