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依頼を達成しに村へ(2)

「こ、これはようこそお越しいただきました。グレートオーガが目撃されていつ襲われるかと戦々恐々として過ごしておりました。漸く冒険者が依頼を受託して下さり感謝しております。ところでお仲間は何処に?」


 門番風の男が連れてきた冒険者であるクロイツ以外の冒険者の所在を確認する村長。


「いや、ここに来たのは俺一人だ。と、そんな不安そうな顔をするな。しっかりと仕事はするから安心しろ」


「そ、そうでございますか。それ程の自信……もしやAランクの方でしょうか?」


「?いや。今日冒険者登録をしたばかりだが?」


 正直に話すクロイツに対し、明らかに落胆する村長と門番風の男。


「成程。普通の冒険者であればあの程度の報酬では受けてくれませんからな。理解しました。余程腕に自信があるか世間知らずか。恐らく後者でしょうが、最早打つ手がない我らにしてみれば縋るしかない……少しでも成功率を上げるためにはどうするか……」


 少し前のクロイツのように、一人ブツブツ言っている村長。


「村長。それなら、あいつを使うか?」


「……それしかない…か。いつまでも役立たずを置いておくわけにもいかないのも事実だ。これが最初で最後のチャンスならば出来る事はするべき……冒険者殿!いつ依頼を実行して頂けますか?」


 クロイツには理解できない話をされていたのだが、何やら助力してくれそうな内容なので余計な事ではあるとは思っているのだが取り敢えず善意を無下にするわけにもいかずに黙って聞いていた。


「……いつでも。と言うよりも、俺にも事情があるからな。早速今から行きたいと思っている」


 事情とは颯爽と依頼を達成して受付を食事に誘うと言う、クロイツにとっては何よりも重要な事だ。


 依頼を少しでも早く達成し、あの潤んだ目で手を握ってくれた受付にアタックすると決めていたクロイツ。


 早速動こうとした所、村長からある提言を受けた。


「では少しでも冒険者殿の助けになるように、村からも一人サポートを付けさせていただきます」


「いや、そんな者はいらな……」


「是非に。我らの報酬が見合っていないのは存じております。少しでもその分を補填するべくお付けします。もちろんその者の安全は気にせずとも結構。何卒!」


 断ろうとしている所を、被せ気味に強く主張する村長。


 ここで初めて報酬と言う物が気になり依頼書を良く見ると報酬は金貨一枚(10万円)と書かれておりこれが高いのか安いのか分からないクロイツだが、村長の言い分だと相当安いのだろうと理解した。


 その分の補填として、極論生贄にしても良いと言う表現で一人つけると言っているのだ。


 前世の記憶が少々あるクロイツ、そして王族としての立場のあったクロイツはその表現に眉を顰める。


 そんな表情をしている事に気が付かない村長達は、いつの間にか一人の薄汚い人物を連れて来た。


これ(・・)は冒険者殿が如何様に使って頂いても良い者です。何卒宜しくお願い致します。依頼達成後に生存していましたら、そのまま冒険者殿の所有物としてお連れ下さい」


 絶句しつつも、何とか言葉を出すクロイツ。


「この人物はここの村民ではないのか?」


「いいえ。この者の両親は奴隷で既に死亡しておりますが、その子供は村民にはなり得ません。道具です。ですがこの道具の維持にも費用が掛かるのですよ。この際、村の存続の為に最後に今までの恩を返すべく働く事が互いの(・・・)益になろうかと」


 とてつもなく胸糞が悪くなるクロイツだが、ここまで言われている人物は表情に一切の変化がない。


 髪はボサボサで薄汚れ、当然服もボロボロ。


 食料事情が良くないのか痩せてはいるが、恐らくその見た目からは女の子である事だけは辛うじてわかるレベルだ。


 ここまで酷く無ければクロイツとしては鉄板の出会いに喜んでいただろうが、余りの惨さに怒りの感情しかわいてこなかった。


 だがここで怒りを爆発させても依頼は達成できないし、この世界の、この村のルールがあるのだろうとグッと堪える。


 そもそも自分のいた国家、ナスカ王国でも奴隷は合法だったからだ。


 仮にここで断って依頼を達成した場合、再びこの村が同じような状況になってしまった時に目の前の少女の命は潰えるだろうと考えたクロイツは村長の申し出を受ける事にした。


 受ける意図は村長の考えとは全く異なるが、村長は自分の意見が通ったと勘違いしながら安堵している。


「お前……君。名前はなんだい?」


「……リサ」


 少女の目線にあわせる様に、少々しゃがんで会話を始めるクロイツ。


 少しでも安心してもらおうと、敢えて優しく語り掛けていた。


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