クロイツの新たな生活(2)
見た目からは想像できない程にあっけなく始末できてしまった。
「何だよ、一発かよ!」
毒突くクロイツだが、一応この魔獣は適正ランク通りにSランク相当の強さを持っている魔獣であったりする。
その魔獣に気配を悟られない位置から一撃で仕留めるクロイツが異常なのだ。
クロイツとしてはリサがいない寂しさからか少々体を動かせる事に期待していたが、全くの期待外れであり、思わず愚痴が漏れてしまったのが冒頭のセリフだ。
「うぇ~、やっぱり気持ち悪りぃーな」
微妙に腰が引けつつも、これ以上この魔獣に対して何か作業をする気持ちが一切ないクロイツは、心底嫌そうな顔をしながら収納魔法で巨大な昆虫型の魔獣を片付ける。
全くの消化不良だが、一応これでダンジョン村への資金は得る事が出来たと気持ちを切り替えて、リベラ王国のギルドに戻る。
「あれ?クロイツ様。何か情報漏れがありましたでしょうか?」
クロイツがこのギルドを出てから数十分後に戻ってきたので、流石のSランク依頼対応故に慎重に行動していると判断したミューテル。
ギルドで掴んでいる情報は余す事なく伝えているとは思いつつ、新たな情報を探しているのかと問いかける。
「いや、もう終わったぞ。どこに出せば良い?」
いくら熟練の受付でも、存在していない高みにあるSランカーが受けるべき依頼をBランクのクロイツが単独で受けて、数十分で依頼を完了して戻ってきたと言われては頭が追い付かない。
「え?ええ??」
「だから、終わったって言ってるじゃねーか。どこに出す?いつものとこで良いか?」
埒が明かなくなると思い、いつもの通りではあるが少々強めの表現を使う。
「は、はい。やはり目撃情報通りに大きいのですね?」
「あぁ、グロナスと同じ位だな」
グロナスと言えば、見た目恐竜で肉が非常に美味しい巨大なBランクの魔獣だ。
以前クロイツとリサが余りの美味しさに、発見即討伐と言い切っていた魔獣。
そのおかげで、二人が活動した後に暫くはグロナスを発見できなくなるほど狩りつくされている。
「そ、それほど巨大ですか……ですが、討伐部位であればこちらでも……」
「いや、それでもデケーんだよ」
クロイツはそう言いつつも、表情には一切出さずに少々やらかしたと思った。
そもそも収納魔法は異能に分類されており、この世界では誰も使えない夢のような魔法と言う扱いなので、その異能の一つである収納魔法に丸々魔獣をしまっている状態のあの巨体はここには出せないと普通に伝えてしまった。
このまま出してしまえば明らかに収納魔法持ちと思われるので、一応昆虫型魔獣の鎌の様な手、針のような手、致命傷となっている頭部だけを慌てて収納魔法の中で分離しておく。
裏手に移動している最中に作業は終わり、そこで大容量の収納袋から出したかのような体で三つに分割した素材を出す。
「これは……確かに巨大ですね。これが…この絵の手の部分ですか?そうなると、全身は相当巨大ですね。持ち帰られたのはこれだけですか?」
「あぁ、これ以上は収納袋には入らねーだろ?」
当たり前だと言わんばかりのクロイツだが、本心ではミューテルの反応に少々焦る。
「そうですね。では、残りがどのような素材として活用できるか分かりませんので、別途素材回収の依頼を出して冒険者を向かわせます。魔核も相当貴重でしょうし」
今までリサと共に行動していた時はこれ程焦るような事は起こらなかったのに……と内心毒づきながらも、取り繕う。
「いや、現地に行っても素材はねーぞ?一応致命傷はこの頭だが、攻撃の際に体は燃やしちまったからな。今頃こんがり焼けた匂いにつられて、他の魔獣の餌になっているだろ」
頭部のど真ん中にある穴を指し示しながら、真実味のありそうな事を伝えるクロイツ。
このような魔獣がいた場所には当然他の魔獣による危険がある可能性が高く、得る物が無い以上は無暗に冒険者を向かわせる事は出来ない。
「そうですか。残念です。ではこちらが報酬になります」
依頼達成は確実だと思っていたのか、受付に戻らずこの場で虹金貨を手渡すミューテル。
「ありがとさん」
その足で城下町を出ると即走り出し、後ろを無駄に付けてくる存在を振り切った上でダンジョン前に転移する。
一歩ダンジョンに入れば、即ポチが最下層に転移してくれる。
「帰ったぜ。これが報酬だ。あの人化できる魔獣に渡しておいてくれ」
『うん。わかったよ、クロイツ様』
「それと、ポチ。これってどんなレベルだ?」




