善人の異世界転生
「おーい優馬これ頼んだぞー」
「おう、任せろ」
「優馬これ、任せたぞー」
「そこに置いててくれ」
俺は桜井優馬25歳独身のサラリーマン、彼女は生まれてこの方ずっといない。世間で言う彼女いない歴=年齢と言うことだ。ただ、それを嫌だとは思わないし寂しいとも思わない。俺は自分ではそうは思わないが親やみんなからはイケメンだと言われてる。
「これ終わったら飲みに行きませんか?」
この人は後輩の吉田朱莉さん22歳独身。スタイルが良く超絶美人で仕事はほとんど完璧にこなすキャリアウーマンで会社のマドンナ的存在だ。
「俺はいいけど、他のやつは?」
「私と桜井さんだけです」
「わかった、終わったら連絡するから」
「分かりました、早く終わらせてくださいね」
「わかってるよ」
彼女との関係は2年前に彼女が入社してきた時に仕事を一から全て教えた。驚くことに一度教えると全て完璧に覚えるのだ。彼女曰く「昔から物覚えが良く事務的な仕事は得意ですから」とのこと。
俺は「仕事を覚えるのが早くて完璧とかすげーな」と言うと彼女は頬を赤くして「ありがとうございます」と言ってきた。この時の彼女の顔がとても可愛かったのを覚えている。
仕事を終え時計を見ると午後9時半を回っていた。急いでメールで連絡しながら会社を出ると後ろからトントンされ振り返ると吉田さんが立っていた。
「先輩遅すぎですよ、女性を待たせるとか」
「ごめんごめん、頼まれた仕事をしてたら遅くなった」
「はぁ〜先輩はまた仕事を頼まれて、用事があるからって断れば良いじゃないですかー」
「ごめん、でも頼まれたら断れなくて」
「もう良いですよ、でもそのかわり先輩の奢りで」
「わかったよ、可愛い後輩の頼みならなら」
そんなことを話しながら歩いていると一台のトラックが信号無視してこちらに突っ込んできた。
「‼︎‼︎」
俺はそのことを瞬時に察知して避けようとすると
隣で吉田さんが動かず立ち止まっていた。
多分気が動転して動けないのだろう。そのことに気づいた次の瞬間俺は吉田さんを押し飛ばしていた。そして。轟音と共に俺の体だけ吹き飛ばされた。
トラックに吹き飛ばされて意識がもうろうとしていると吉田さんが駆け寄ってきた。
「桜井さん大丈夫ですか‼︎しっかりしてください‼︎
今救急車を呼んでもらってますから‼︎」
吉田さんはそう言って俺の意識を保とうと必死に声をかけてくる。だがもう意識が遠のいていく。
すると。吉田さんがこう言ってきた。
「死なないで、死なないで、私はまだあなたに伝えたいことがあるのに」
と、涙を流しながらそう言った。
俺は心の中で(最後の最後に気になるセリフを言うなよ)と思った。そして、俺の意識は完全に消えた。