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《新世界オンライン》 執事は実は最強職?  作者: どら焼きドラゴン
第 3 章 新しい世界
29/30

第29話 豚さんですよ

お久しぶりです



「あ、あのごめんなさい。」


 エリカにぶん殴られて、今は謝られ訳がわからなかった。

 だが、追求するよりかは先に進んだほうがいいだろう。領主、ひいてはお嬢様にいつ呼び出しを貰うかわからないのだ。


 今自分のレベルは《赤沼》と戦い、かなり上がっている。

 スキルも【魔導のススメ】以外は2~4レベルへと上がっている。


 ◆◆◆

 《ステータス》

 名前: スチュワート


 種族:人間?


 職業:執事  


 Lv.16


 《職業スキル》


 ・【執事の嗜みLv.5】


 ・【調理術・菓子Lv.4】



 《特殊スキル》


 ・【あなたの仰せのままに】


 《スキル》


 ・【体力自動回復Lv.4】

 ・【タフネスLv.3】

 ・【剣術Lv.3】

 ・【細工Lv.3】

 ・【馬術Lv.2】

 ・【ジャイアントキリングLv3】

 ・【魔法耐性Lv.2】

 ・【魔導のススメLv.2】

 ・【読解Lv.3】

 ・【食物鑑定】

 ・【悪魔法Lv.5】

 ・【悪魔のセンス】

 ・【大号令】


 《称号》


 ・【無慈悲なる者】

 ・【悪魔を従えし者】

 ・【悪魔の隣人】

 ・【掃除人】

 ・【悪魔の盟友】

 ・【悪魔給仕人】

 ・【魔界の軍団長】

 ・【悪魔と契約せし者】



 ◆◆◆


 現在は16レベルだ。正式リリース初日なので、レベルもスキルもトップクラスではあるが、領主様からはとりあえず20レベルにしてこいと、何とはなしに言われていたので今回を期にあげてしまいたい。


「あの、ごめんなさい!」


「大丈夫、それよりも君の叫び声で目的のフォレストピッグが来たようだ。」


 エリカが謝っている背後からカサカサと草木を分ける音が近づいている。


「次は私がいきます!」


「フォレストピッグは身体に泥を塗っている。泥に生えている蘚が濃い個体ほど長生きで強い。頭や背中は硬いから剣では狙うことをオススメしない。」


「はいっ!」


「プキッ」


 そして茂みから50キロほどの豚が表れた。蘚はあまり濃くはないが突進してくる姿には正直ビビった。

 鼻息を荒く、フォレストピッグはエリカに突進を仕掛けた。だが、エリカはそれをひらりとかわすことでフォレストピッグは木に激突した。


「プップヒー」


「やぁ!」


 脳震盪でも起こしたのか足が縺れたところに、エリカの剣がフォレストピッグの首を切り裂いた。フォレストピッグは鼻息が弱々しくなりその場に倒れた。だが、まだ息絶えてはいない。


「とどめ!」


「プキッ!」


 エリカがトドメを刺そうとしたが、フォレストピッグは跳ねるように避け、噛みつこうと駆け寄った。このままでは鋭い犬歯に噛みちぎられるだろう。


「それっ」


 エリカに噛みつこうとしたフォレストピッグのわき腹に蹴りを食らわせた。


「プキップキー!」


「今だ!」


 攻撃を邪魔したことにより、エリカの剣がフォレストピッグの首を跳ねた。


「や、やりました!」


「見事」


 エリカは剥ぎ取りナイフを刺し、回収すると次のフォレストピッグは私に譲ると言った。戦いを見たいだそうだ。


「ならばすぐに見つけようか。」


 この姿(ランスキー)の装備にはいくつかのスキルが付与されており、索敵するためのスキルもある。広範囲に探っているとすぐ近くにいるのを見つけた。


 この森は起伏が激しい場所があり、森よりかはむしろ山に近いのだろう、そんな斜面には沢山のベリーや木の実が群生しており、そこにフォレストピッグが群れを成していた。


「ちょっとこれは数が多すぎないかしら、ランスキーさん、止めときません?」


 エリカと崖近くの岩場に身を寄せながら伺う。一人ならばディーノスを呼び出して自分は【始末】や【処刑】で一撃必殺を狙った戦法ができるのだが、彼女は現在配信中だ、あんまり目立つ訳にはいかない。


「問題ない、一匹ずつ始末すればいい」


「えぇ、大丈夫かな」


 悪魔に等価交換して貰った糸をライフル型のボウガンに張りながらクランクを回し、矢を装填する。


「凄い武器ですね!どこで売ってたんですか?」


「自作だ」


 狙いを定め、放った矢はベリーをもっしゃもしゃ食べているフォレストピッグの一匹に当たった。当たったフォレストピッグはもんどりうって崖から滑り落ち、ぐしゃりと潰れた。


「うわぁ」


「もし落ちて生きていたらその時は頼む」


「あ、はい」


 それからパスパス撃っていくとフォレストピッグは流石に気付き、騒いだがパニックで崖の上に登っていくので逆に撃ち落としやすくなった。なんなら外しても自ら跳ねて滑落するフォレストピッグもいたぐらいだった。


「これで最後だ」


「わあ、死屍累々…」


 崖下はフォレストピッグの群れが死骸の山を作っていた。


 ちょっとやり過ぎたかもしれない。

 しかし、あの悪魔のくれた糸は素晴らしい。これだけ撃っても切れずに耐久してくれていた。これならば、更なる威力向上を目指せるだろう。


 とりあえずは剥ぎ取りナイフで回収である。


「ランスキーさん、終わりました!素材が沢山ですよ!」


「それは良かった」


 こちらもレベルが20になり万々歳だ。ディーノスも戦いを望んでいたが、エリカがいる手前今回は我慢してもらった。

 次ソロで来た時には頑張ってもらう予定だ。


「もう少し狩るか?」


「はい! もう少しでレベルが上がりそうなんで!」

 

「わかった」


 二人は森の奥に更なる獲物を求めて進んでいった。


「ランスキーさんが強いから楽にいけそうです!」


「一応薬はあるが、油断せずに行こう」


「はーい!」


 エリカの笑顔は眩しかった。










 暗い場所で起き上がる。ここは寝室だ。

「くそっ! あの執事め!」


 電気を付けずにパソコンに向かい、自分のSNSを開くと、やはり荒らされていた。


『ねーねーどんな気持ち?ねーどんな気持ち?』

『自分から喧嘩売ってからボロクソに負けるのほんと草』

『勇者(笑)』

『愚者じゃんもうwww』

『アクトくん最初の街出禁かもよーw』

『お前のせいでクエスト無駄になったんだから弁償しろ』

『領主の執事に喧嘩とか歴史勉強してもろてww』


「なんだっ!こいつらめ!」


 怒りで震えが止まらない。僕は正義のために戦っているのに。人々のために戦っているのに。なぜ理解されない。


 いつもそうだ。

 クラスメイトがいじめられていたからクラス会議を開いてなぜいじめをされたのか問い詰めたら不登校になってみんなが自分を無視するようになってしまったし、歩くのが不自由な老人を助けようと役場にバリアフリー化をするべきだと訴えたら警察に取り押さえられた。先生からも説教を受けたが、意味がわからなかった。人の為に動きなさいといつも言っていたのは先生達だろうに。


 そんな時にネットである記事を見つけた。自分くらいの若い子がゲーム配信者として有名になり、その子の発言にネットのみんなは常に肯定を賛成をしていた。これだ!と思った。


 何がなんでも有名になるのだ。有名になればみんなが自分の話を聞くに決まっている。いや! 現にそんな風潮があるに違いない! 自分の正義を理解するのだ!


「…まだ有名にはなりきってないな。もっと、もっと正義を広めないと。」


 SNS上や配信コメント欄には既に何人か賛同を集めている。これが徐々に増えれば、いつかは世界を揺るがすはずだ。


「ん? エリカの配信があるな。」


 配信者のエリカ・エルガは《新世界オンライン》において最近人気沸騰中である。彼女は素晴らしい、正義の仲間にしたいものだと何度かコラボを誘ったのだが、断られてしまう。

 その身の固さがまた僕をくすぐるというのに。


 今日も彼女の配信を見るとしよう。


「あ! こいつは!」


 僕は驚いた。僕が最初キルされたキャラであるあのローブの男がエリカといっしょにいたのだ。


『ランスキーさん!』


「ランスキー…あいつも最近行方がわからなかったな」


 エリカの笑顔があの男に向けられる。やめろ…やめてくれ。

 その笑顔は僕だけに来るはずだろう!? なぜ僕じゃない!

 ああ! 神よ、この世とはなんて無情なんだろうか!


 いや、待てよ。ランスキーはあの裏商店街にいる者。つまり悪いヤツだ。エリカはその悪いヤツに騙されているに違いない。相変わらず警戒心の薄い子だ。


 僕は配信を食い付くように見ていた。そして、ランスキーの技を見た。急所への一撃、必殺の攻撃、これは頂きだ。


「場所は…森か」


 僕は騎獣を持っていない。僕のような選ばれし者には大多数が乗るものなど乗れるはずがないのだ。だから森にはいけない。


「街の入り口近くで待ち伏せするのが正解か」


 エリカ、待ってろよ!僕が正義で君を救ってみせる!


 アクトと名付けたアバターを身に付け、彼はまたゲームの世界に飛び込んで行った。彼はある意味純粋だったのだろう。それ故に狂ってしまったのか。それは神のみぞ知ることである。



 ログインすると神殿の中だった。そういえば執事にボコボコにされて緊急措置で抜けたんだったか。


「よし、早速ま」


「うらぁああああああああ!」


「グハァ!」


 街にと行こうとすると神殿の奥から誰かが飛び出してきた。

 そして、自分を殴り付けてきた。なんてヤツだ!

 顔からもろに食らったので顎を地面が擦り、メチャクチャ痛い。顎が削られながら神殿の外にまで滑り、周りのプレイヤーは何事かと注目を集めた。


「貴様、今回はよくもやってくれたな?」


 そして顎をさすりながら出口に立つ人物を見て驚いた。

 それはいつも優しいそうに死に戻りしたプレイヤーを慰めたり、応援したり、それとなくオススメの店を教えてくれる神殿の最高責任者たる司祭様だった。


 だが、今日はそのシワクチャの顔は怒りに歪んでいた。


「い、いったい何を」


「貴様はこの街の、ひいてはこの先の街を治める領主サリバンの家紋を持つ執事を悪魔の手先呼ばわりし、剣を向けたそうだな。教会は貴様の保護者として肩身が狭い思いをしたのだぞ!」


「そ、それは! あの悪人が悪いんだろう! あいつが領主を何らかの方法で操り、悪魔をこの街に引きいれた! そのうちこの街は恐怖に陥るぞ! だから…」


「馬鹿者! 貴様の裁量で悪魔を計るな! 奴らは天使と対をなす存在だが、呼び出され契約を結べば勝手なことはできん! 本人にも確認済みだ!」


「そんなこと信じられるか!」


「よぉし、勇者だからと教会の保護するが、保護者として灸をすえてやるぞ!」


 司祭は心臓の部分に手を当てると祝詞を唱えた。すると神殿の祭壇や像から稲妻が走り司祭に直撃する、いや司祭はその光を吸収していた。


「ぬああああああああああ!!」


 咆哮をあげ、そして全てを吸収した司祭の姿にプレイヤー達は驚いた。


 ひょろひょろでシワだらけだった肉体は盛り上がった筋肉に覆われ、顔もシワ一つない引き締まっていた。まるで若返りである。


「いくぞ!」


 司祭は走りだし、殴りかかる。全力で逃げようとしたが、捕まえられ神殿の中に投げ戻された。


「くそっ! 僕にはやることがあるってのに!」


「貴様は勇者である! だが勇者には責任が伴う!」


 やりたくはなかったが仕方がない。司祭を無力化しなければ!剣を抜き、横に切り裂こうと振り抜く。


「ナマクラが!」


「なんだって!」


 だが、司祭はあろうことか前腕で剣を受け止めたのだ。


「そんな刃物は私には効かん! ふん!」


 司祭は剣を素手で掴むとバキリと折ってしまった。なんてやつだ!


「お前は正義がなんであるかわかっていない!」


「正義は必ず勝つ!」


「必ず勝つ! そうだろうな! 勝ったやつが正義を語ればそれは真になるからな!」


「わけがわからない!悪は悪! 正義は正義だ!」


「貴様にはかなりの教育が必要だな!覚悟しろ!」


 司祭はこちらを捕まえようと走りだした。だが、それは一度見ている。丸太のような腕をスライディングのように避けて、背後にまわり念のため持っていたナイフで切り裂いた。


「なっ!? 刃が通らない!?」


「私に刃は効かん!」


「しまっ!?」


 しまった! 驚きのあまり足を止めていた。

 司祭の腕に捕まえられ、首から持ち上げられる。


「貴様のせいで教会は迷惑をかけられた。貴様が正義を貫きたいなら、他人の迷惑にならない範囲で考えてやれ!」


「ぐはぁっ!」


 浮遊感を味わって地面に叩きつけられた。そして司祭は馬乗りになると拳の連打を浴びせた。なんとか抜け出したいが、痛みで何も考えられない。


 《異常検知! 緊急措置 痛覚設定2%までダウン》


 急に痛みが引いて、思考力を取り戻せた。まだ神は僕を見捨ててなかったようだ。


 …と思っていたが、僕の目の前には


「死にやがれぇ!!」


 拳しか映っていなかった。


 《あなたは死亡しました》

 《聖職者との戦闘に負けました》

 《【反省部屋】にリスポーンします》

今回で勇者(笑)アクトくんはお叱りを受けちゃいましたね。



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