第26話 イベント……?
お久しぶりです
この頃忙しさが増して書く時間がなくなりつつあります。辛いね( ノД`)…
街に出ると、もう大騒ぎだった。沢山のプレイヤーらしき人々や街の住民達が、街の外に現れた大軍がなんなのかと的外れな憶測を飛ばし合い一目見ようと行く者を押し留める兵士の怒号や、人混みに埋もれて離ればなれになってしまった幼子の泣き声があちこちから聞こえた。
「急がねば」
ディーノスを急かし、急いで街の門へと向かったが、門番に止められてしまった。
「おっと門に近づくな! 」
「街の外に用があります。」
「だめだ! 今は街の外にはどこの所属かもわからない軍隊がいる。白旗を上げて敵意なしと見せているが、ブラフに決まっている。門を開けたら一気に攻めこんでくるに違いない!」
門番は半ば恐怖と緊張で正常な判断ができなくなっていた。
「あれは私の使役する者達です。門を空けてください。これから彼らは仲間になります。それに、私は領主様よりこの騒ぎを預かるよう仰せつかっています。」
「そんなわけあるか! お前みたいなジジイに領主様が……!」
「これでも同じことが言えますか?」
領主様から貸してもらった紋章入りの懐中時計を見せる。この紋章は領主様の家紋であり、それを付けた者はその関係者。その中でも信頼をされたり高い功績をあげた者のみが、この紋章入りの道具を使うことを許されている。
「そ、それは! 失礼しました!」
「一人用の門で構いません。そこから出ます。」
「は!今すぐに!」
兵士に少しだけ開けてもらった扉の隙間をサッと通り抜け、久しぶりの草原に出た。前と違うのは……プレイヤーの量だろうか、それとも遠くで嬉しそうに旗を振っている悪魔達だろうか。
急いで向かうと、悪魔達のまわりには沢山のプレイヤーらしき人物が集まっていた。中にはパーティーを組んで攻撃を仕掛けるものもいたが、攻撃を受けた悪魔は全て避け、持っていた槍で全員の頭を一瞬で貫いてしまっていた。
「ちょっ! 一撃かよ! 無理ゲーじゃん!」
「イベントキャラには勝てないから仕方ないだろ!」
「え? イベントなのこれ?」
ヤバい。早く話して街に引き入れよう。援軍として周知させれば、騒ぎも収まるはずである。しかし、あの契約を結んだ悪魔はどこにいるのだろうか?
「ほうほう、人間にしては悪魔の気配が強い。もしやそなた、アグレアス様と契約を結んだ人間か?」
隊列を眺めながら野次馬の中をうろうろしていると、背後から話しかけられた。
「どちら様でしょうか?」
振り返ってみるとそこには、深緑のローブ姿のナニカがいた。
目の前にいるのに気配が一切わからない。おそらく相当高い隠匿系のスキルを使っているか、種族的な特長か…あるいは両方かだ。
「アグレアス…たしかに私が契約を結んだ悪魔……。」
「ほうほう、やはりそうか。私の読みが当たったか。……ああ、自己紹介が遅れたのう。私はアグレアス様に仕える臣下が一人、エンディムと言う。アグレアス様を探しているのだろう? 私に付いてこい。」
「ああ、頼みます。」
エンディムと名乗る者に付いていく。野次馬の中から抜け出し、堂々と悪魔達に近付いているというのに、誰も気づいていないのは不思議な感覚だった。
「……気になるか?」
エンディムはくつくつと笑い、教えてくれた。
彼(彼女?)と私の周りに結界のようなものを張り、誰にも見えなくなっているようだ。これはありがたかった。
悪魔達に敵対されるどころか、幹部らしき者から案内されている人物などプレイヤーからすれば気になるだろう。
質問責めになるのは明白である。しかも、ゲームの世界だ。一部の人は遠慮の文字は皆無に等しくなっている。気をつけるに越したことはない。
「ついたぞ。」
案内されたのは悪魔の兵士達が取り囲むように守っていた中心部のようだった。そこに鎧姿の悪魔の姿があった。簡易的ではあるが大きな椅子に座る姿は騎士の鎧姿と言えども、悪役寄りである。まあ悪魔なのだが。
「アグレアス様、つれてまいりました。」
「おおお!待っていたぞ我が契約者よ!」
アグレアスは椅子から立ち上がり、私にハグをした。
……痛い痛い痛い。
甲冑の金具が当たって痛い!嬉しいのはわかるが身体が軋む!
「おっと、すまぬ!」
「ゲホッ…殺す気ですか。」
咳き込みながらも愚痴る。
「それで、アグレアス。この軍団はなんですか?」
「おお! よくぞ聞いてくれた! 」
説明したくてウズウズしていたのかアグレアスは得意気に話てくれた。
「人間界に出るのは久しぶりでな! 元々は大隊でいく予定だったんだが……我の話を聞いてるうちに皆行きたいと騒いでこうなったのよ!」
ワハハハハハと笑いながらアグレアスは続ける。
「まあ!悪魔の呼び笛に見合う報酬となるのは我だけでなく、我ら全員が仕えることで契約は成るからな。対価に釣り合った戦力だ。」
悪魔の呼び笛の価値が高過ぎだろう。この戦力なら小国なら一瞬で陥落させかねない。正直、戦力過多だ。
「それにしても多過ぎです。」
「うむぅ……。」
アグレアスは呻く。こういう時は領主様に聞いたほうが早いな。
『…という訳でして。』
『………うーむ。娘の為とは言え戦力過多だな。』
『どうにかなりませんかね?』
『………私の領内には3つの都市がある。それらに分散させるのが今の所ベストな選択か。』
『3つですか。』
『ああ、ここファスナから森を越えて第二の領地モス。そして森の端を通って山の麓にある第三の街ロクがある。どれも流通専用の道があるからそこの許可証を用意しよう。』
おっと、こんなところで新しい街の情報が。
『ありがとうございます。』
領主様からの話を手短にアグレアスに伝え、彼もそれに賛成した。
「うむ。この街は外敵が攻めるには、まずその2つの都市を落とさねばならないからな。事前に守るのはいいことだ。すぐに出発しよう。」
アグレアスら本来来るべきだった人員はこの街に、残りは均等に分けて配属するということで話がついた。
「アグレアス。これからよろしくお願いいたしますよ。」
「こちらこそだ! 世界一難攻不落の領地にしてみせようぞ!」
《条件をクリア》
《称号:【魔界の軍団長】を入手しました》
《スキル:【大号令】を入手しました》
握手を交わし、その瞬間にアナウンスが鳴った。
これで一段落ついた。新たなスキルや称号の確認はあとにして、とりあえずここにいる奴らを移動させよう。
「アグレアス。さっそく先程教えた街に部隊の移動をお願いいたします。」
「了解した!『行動を開始せよ!』」
アグレアスが大声を張り上げると、悪魔達は3つの部隊に別れてそれぞれの街に向けて移動を始める。
一糸乱れぬ動きはさながらパレードのような華やかさを覚えるものだった。
「見事な練度ですね。」
「ああ。魔界でもこれほどの軍勢をもつ奴は数えるほどしかいないぞ。」
それぞれの街に向かって歩を進める悪魔達を見送り、そしてしばらくしてアグレアスらの軍だけとなった。
プレイヤー達も何処に行くのか気になったのか、半数近くが着いていった。恐らく通行許可が出てないから彼らが街に入るのは厳しいだろう。
「では、我々も行きましょうか。」
「うむ!」
そうして街へと戻ろうとした時、一本の矢がこちらに飛んできた。
「……ん? 矢か?」
兵士達には領主様から連絡が行き渡り、アグレアスらは敵ではないと伝えた筈なんだが……。
「エンディム!」
「かしこまりました。」
エンディムが短杖を一振りすると、飛んできた矢が空中で固い壁にぶつかったようにピシリとはぜた。
「……スチュワート。」
「いや、兵士は領主様からの御触れで攻撃はしない筈です。」
「ならば異邦の民か…。」
「そういうことになりますね。」
「うむぅ。我々は歓迎されていないのか。」
いや、多分何も考えないで弓を放った気がする。それかヒーロー願望の強い誰かだ。
「まあ気にしないでください。正式な契約、この街の戦力という肩書きがあれば、そのようなことはほとんど無くなりますから。」
「うむぅ、そうか。仕方ない、しばらくのがま」
「報告します!」
アグレアスの言葉を切って1人の悪魔兵士が飛び出すようにやって来た。
「…む、何事だ。」
「ハッ! 街の門の前に立ちはだかる者達が現れました! 道を空けるように説得を試みましたが聞く耳をもちません! 」
「そいつらはなんと?」
エンディムが問いかける。
「そ、それがその者は勇者だと…。」
「ゆ、勇者だって?」
脳裏にかつて裏町での事件がよぎる。
「どうしたスチュワート。何か知っているのか?」
「いえ、なんでもないです。それで、彼ら他に何か言ってましたか?」
「はい、この軍を率いてる責任者を出せと……。」
「「責任者」」
アグレアスと顔を見合せた。この場合どちらが行くべきか迷ったのだ。
「………とりあえず、お二方が行けばよいかと。」
見かねたエンディムが助け船をだした。
「そうだな! 流石はエンディムだ! という訳だ! 案内しろ!」
「ハッ!」
「………恐らく、あいつかなあ。」
アグレアスらに付いていきながらも、頭の中ではあの話を聞かない若者の姿が浮かび上がっていた。
そしてそのあとの展開がどうなるのかも。
友人「なぜ遅れたか…説明してもらおうか。」
私「……覚悟せいっ!」
友人「ギャアアアアアア!」
私「禁断のアレ行っちゃいます!」
(流れるオーケストラ)
友人「女々しいぜ…。」
WINS (わかる人にはわかるネタ)




