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《新世界オンライン》 執事は実は最強職?  作者: どら焼きドラゴン
第2章 《悪魔の血》と悪魔達
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第23話 森の妖精達と帰還

久しぶり!

寒くなりましたね。皆さん風邪に気を付けましょう。

作者は喉が死にました(´・ω・`)

 飛びかかってきた小人達は私の手の平ぐらいの大きさで、蹴られても大したダメージはないのだが、如何せん鬱陶しい。


「甘味をよこせー!」


「甘い匂いの元をよこせー!」


「甘い香り………クンクン」


 身体中をよじまわる小人達をひっぺはがし、背中の服を摘まんで吊り下げた。


「わーはなせー!」


「おーぼーだー!」


「首が……ぐえっ!」


「お前ら何者だ。知らない連中にアイテムを渡す程私はお人好しではない。」


 てるてる坊主のようになった彼女らを睨み付け尋ねる。


「えーと、私達はなんというか……。」


「人間から崇められる存在?」


「よくわかんない!」


 うむ、わからんぞ。もうちょっと分かりやすい説明をしてくれ。


「……おろしてやれスチュワート。彼女らは森に住まう妖精族だ。森の生態を守り、森を必要以上に破壊する者を排除する存在だ。あまり雑にあつかわないでやってくれ。」


 見かねた爺さんが答えをだしてくれた。


「なるほど、それは失礼した。 それでなぜ甘味を欲しがってたのか?」


 妖精達を地面におろしながら聞いたら答えはすぐにかえってきた。どうやら木の実やら果物やらは食べれるが、火を生まれつき使えないので、果物を使った料理なんかが作れないらしい。


【小林檎】は彼女らの中でもワーストにランクインするほど不味い果物だったのだが、その林檎が私の加熱調理により凄まじい甘い香りを放った為、彼女達のコミュニティは巣をつつかれた蜂のように騒ぎ回り、匂いの在処を探り、やっとたどりついたらしい。


「小林檎は酸っぱいから干して食べるぐらいしかなかったんです。」


「干したのもさほど甘くならない…。」


「干したのは甘草みたいな香りがするから嫌い。」


「だからその甘そうな小林檎食べてみたい。」


「だってよ。スチュワート、作ってあげたら?」


 テーブルの上に座る妖精達とリリアナはすぐ打ち解けたようだ。


「かしこまりましたお嬢様。」


 リリアナ(お嬢様)が望むなら断る理由は特にない。


【インベントリ】の中にあった焼き林檎を取り出し、妖精達に渡した。三人は目を輝かせながら、焼き林檎に抱きつくようにかぶりついた。


「あまーい!!」


「うまーい!」


「香りと味が最高!!」


 満面の笑みを浮かべながらそう言われると嬉しくなってしまう。


「ふふっ、良かったわね喜んでくれて。」


「はい。私も作った甲斐があります。」


「彼女らは濃い味に常に飢えている。自然の味そのものしか食べるものがないからな。」


「森には動物もいるようですが? 肉は食べれないのでしょうか?」


「肉は得れても火がないだろう。彼女らは火は使えぬ種族。生肉を齧るわけにもいかんだろうさ。」


「それでこんなに食いついてるんですか……。」


 焼き林檎を頬張ってハムスターのようになっている妖精達を指差した。


「まぁ、かわいいからいいじゃない。」


「そういうことにしておこう。それよりスチュワート、もう一杯お茶をくれぬか? 今度はすっきりするやつを頼む。」


「あ、私も。」


 妖精達の食べている焼き林檎の甘い香りに少し飽きてきたのかすっきりしたお茶を求めてきた。


「かしこまりました。茶葉を変えますので少々お時間がかかりますが。」


「かまわないわ。」


 ならば最高の一杯を出せるように頑張ろう。

 リアルで一回旨いお茶の入れ方の講座でも受けようかな。





「ふぅー食べた食べた。」


「お腹いっぱい……。」


「満足……。」


 お茶を入れている間に妖精達は食べ終わったようだ。三人ともお腹をさすって寝転び、満足していた。



「ありがとう人間! 久しぶりに美味しいものがたべれたわ! 」


「感謝!」


「ありがとー。」


「お粗末様でした…。」


「それじゃあお礼……むっ!」


「むむっ! 何かくる!」


 妖精達は急に立ち上がると、一礼し茂みへ飛び込んだ。


「一旦撤収! またくるね!」


 そう言ってがさがさと草を掻き分ける音と共に、妖精達は消えていった。

 一体何がくるというのだ。


「……嵐のような子達だったわね。」


「そうでしたね。」


「まあ、彼女らは自由だからな。縛ろうとすれば全力で掛かってくるから気をつけろ。……っとそろそろ時間か。」


 爺さんは私の前に来ると、私の額に触れた。


「爺さん……?」


「そろそろ時間だ。ディーノスとあの異邦人がくる。私も戻らせてもらうよ。ああ、林檎のお礼はしておこう。また何か旨そうな菓子があればくれ。」


 そう言うと爺さんも霧のように消えた。


 《スキル【食物鑑定】を入手しました。》

 《称号【悪魔給仕人】を入手しました。》


 そして新たなスキルを獲得した。

【食物鑑定】は自然にある植物からモンスターに至るまで食える、食えない、を教えてくれる。レベルが上がれば旨い調理法まで教えてくれるらしい。お菓子のレシピを調べなくては。


【悪魔給仕人】は料理、お茶等の食に関する行動に補正がはいる効果がある。つまりこれを使って更なる上手い菓子を作れとのことだろう。


 あと【悪魔法】のレベルが上がって新しく《召喚:最下級悪魔》を覚えた。前衛、後衛、バランス型にそれぞれ秀でた悪魔を呼び出し、使役する魔法だ。ボスキャラが手下モンスターを大量に呼び出すアレみたいなものか?

 まあディーノスがいるし、今は呼び出す気はないが。




 テーブルセットを片付けて、私も暗殺者(ランスキー)の姿に戻る。


「お嬢様、私の雇った冒険者がきます。一応私のことはこの姿の時にはランスキーとお呼びください。そして、これを着ておいてください。お嬢様の姿を見れば妙な詮索をされる可能性があります。」


 リリアナに緑のローブを渡し、フードを深目に被らせた。


「わかったわ。私も詮索は好きじゃないもの。」


 しばらくして、ガサガサと小枝を掻き分けると共に一匹の黒馬とグレーターチキンに乗った女性があらわれた。

 ディーノスとエリカとかいったプレイヤーである。


「おぉー! やっと出会えたー! 」


「ケケーン!」


『主よ、今戻った。』


「案内ご苦労。さて、君も随分暴れてたみたいだね。おかげで私も動きやすかった、感謝する。」


「…ど、どういたしまして。と、ところで貴方の後ろにいる小さい子は?」


 エリカはリリアナを指差しながら聞いた。ちなみにリリアナは私のローブの裾をつかみ、背後に隠れている。


「……捕らわれていた街の子どもだ。リーダー格の女が人質のつもりか連れていたから救出した。」


 嘘ではない。リリアナは街の領主の娘だから。それに、正体を言うメリットはない。


「そうだったんですね。」


「それでは、街に戻ろう。ここはモンスターも出る。この子のためにもね。」


「はい!」


『ディーノス、お嬢様を乗せてやってくれ。彼女にこの森を歩かせるのは酷だ。』


 ディーノスはあからさまに嫌そうな仕草を見せたが、リリアナを歩かせた場合のデメリットを話し、渋々納得してもらった。


『……断りたいのが本音だが……仕方ないな。』


『すまないな、後で埋め合わせはする。』


「お嬢様、私の馬にお乗りください。」


 リリアナを抱き上げてディーノスに跨がらせ、手綱を持たせた。


「私が先導するので落ちないようにだけ気をつけてください。」


「わかったわ。」


 さて、これで森を抜ける準備を済ませたかな。


「準備はいいか? 」


「大丈夫よ。」


 エリカにも確認をとり、街へ向けて移動した。


 幸い、道中にモンスターが来てもディーノスが威嚇すると逃げていったし、逃げないモンスターは私が先行し【始末】で即死させてまわったので、ペースを落とすことなく森を抜けることができた。


 街の中に入ると夕方だからか市場の活気が一段とあった。


「やーっと帰ってこれた。やっぱり人の気配がある場所は落ち着くわ。」


 エリカが伸びをしながら呟く。

 たしかにモンスターの蔓延る場所からある程度安全が保証された場所にくると安堵を覚える。




「今日はありがとう。報酬は何がいい? 私が出来る範囲なら何でもしよう。」


 金なら素材を売れば作れるし、手下がほしいなら悪魔を何体か召喚して呼び出そうかな。まあもちろん金は渡すのは決定事項ではあるが。


「な、なんでも?」


「私の出来る範囲……だがね。」


 エリカが変なところにくいつきかけたので念を押す。


「……それなら、いつか私の狩りを手伝ってください。」


「わかった。ならばこれを渡しておこう。」


 メニュー画面を開き、【フレンドタロット】という項目を開く。こいつは名前の通りフレンド機能だ。ただちょっと違うのはフレンドをある程度集めれば、タロットという占いができる。

 タロットはフレンドになった人の職業によってカード化し、自分の狩りや生産の成功率をなんとなく知れる。まあちょっとした験担ぎである。


 報酬をちゃんと払いますよ~という約束にもなるしな。

 私のカードは《鏡に映る男》だった。それをエリカに渡す。


「え! これって! いいんですか!?」


 なんかめっちゃ喜んでた。


「あ、ああ。かまわないよ。用がある時にはそれで呼んでくれ。報酬金はまた後日になるがかまわないか?」


「はい! かまいません!」


「それならこれで解散にしよう。この子は私に任せてくれ。」


「ありがとうございましたー!」


 エリカは元気よく言うとグレーターチキンに跨がり、街の人混みの中に消えていった。




「スチュ……ランスキー、あの女はもう行った?」


「はい、お嬢様。」


「……そう。なら行きましょう。お父様が待ってるでしょうし。」


 リリアナは疲れたように言う。たしかに今日はリリアナにとってかなり濃い1日だったはずだ。

 家につく寸前になって疲れがドッとでるあの感覚は社会人になってもなかなか慣れないからな。


「はい、では行きましょう。」


 ディーノスの手綱を持ち、街の奥に向けて歩き出した。







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