無知の世界へと送られ
「あ。やっと起きた!」
女の子が俺を上から見つめてくる。びっくりしたぁ。
この子が誰かわからない。モザイクがかかっているような、顔のあたりだけぼんやりとしている。
「健次君寝すぎぃー。」
クスクスと笑う彼女。だいぶと幼い気がする。
君は誰?
なんで俺の名前を知ってるの?
口が動かない。聞かないと一生後悔しそうな気がする。どこかに行ってしまう気がして焦る。
焦る?
なぜ俺は彼女がどこかに行ってしまう気がするのだろう。
不意に俺の口が開く。
「いやいやそんなに寝てないよ×××。」
しかし全く言おうと思ってないことをいう。俺はそんなことを言いたいんじゃねぇよ。
あと俺最後になんて言ったんだ。
おそらく女の子の名前を言ったのだろうが、俺の声にノイズがかかっており、何と呼んだのかわからない。くそっ、何でノイズかかってるんだよ。
と俺の上体が起きる。と言うか起こされる。マジで何なんだよ。
上体を起こされる女の子の全貌が見られる。
キラキラ光る金色のウェーブヘアで純白のワンピースを着ている。強烈な既視感が俺を襲う。
ふいに女の子が俺と同じ体制で横に座る。
「ねぇ健次君。これどう?似合ってる?」
お前は誰だ。
ここはどこだ。
そう聞きたいのに
「ああ。とても似合ってる。可愛いぞ。」
どこかで聞いたようなセリフを俺は言っている。
「ねぇ××君。」
俺は勘違いをしていた。
女の子は俺を健次とは言っていなかったようだ。今までのは幻聴か?しっかり健次と聞こえていたがノイズがかかっていることから違うんじゃないのかと思う。だがまたしても何と言ったのかわからなかった。
俺の名前は何なのだろう。
「どうしたの×××?」
ノイズが耳障りにも程がある。
女の子は言いづらそうにしていたが、覚悟を決め俺に話し始めた。
「もし私が私の周り・・・特に××君にばかり不幸事が起きる体質を持っていたら・・・××君はどう思う?」