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12/14

12:交渉

「いた! ミラトあそこだよ!!」


「ああ!」


 駅に着いた俺達は早速ミカヅキさんを見つけることができた。

 ミカヅキさんの目の前には赤髪のプレイヤーが立っている。


「じゃあ、そういうことで。行こうか」


「はい」


「ちょっと待ったぁー!!」


 そう叫びながらバイクをドリフトさせて停車させた。


 間に合ったか!?


「ミラトさん!? シグレットさんまで」


「誰だアンタたち」


 2人が豆鉄砲食らったような顔をしている。


「通りすがりの賞金稼ぎだ。その勝負、ちょっと待ってくれ」


「いや、通りすがりは無理があるでしょ」


 知らん。そんなことは今重要じゃない。


「ミラトさん、どうしてですか? あ、そうか。依頼料まだ払ってませんでしたね」


 ミカヅキさんが思い出したようにそう言う。


「違う、戦っちゃ駄目だ。今のあなたでは勝てない。勝負は一旦保留だ」


「どうしてです? 私はもう覚悟したんです」


「無理だ。人はNPCとはまったく違う」


「ちょっとアンタ、勝手に出てきて何の真似? もう決まったことなのだけど」


 赤髪のプレイヤーが前に出てきた。こいつが件のPKerか。


「こっちで決まった話を邪魔しないで欲しいんだけど」


「それは困るな。この人はPvP初心者なんだ。お前には決して勝てないような、な」


「そんなこと関係ないわ。お互い合意の上でのことよ」


「初心者狩りが何を……!」


 赤髪の態度にシグレットが怒りを表す。


 だがここでそれはあまりよくない手だ。


「落ち着けシグレット、相手の思う壺だぞ」


「……くっ!」


「……で? もういい?」


 赤髪のプレイヤーが退屈そうに聞いてきた。


 もはや相手になどしないとでも言いたげだ。だがそういうわけにはいかない。


「いや、よくない。あんたには俺と戦ってもらう」


「ミラトさん……!?」


「……」


 最後の切り札だったが、迷っている場合ではない。


 さて、どう出る?


「なんで私がアンタと戦わなくちゃならないの?」


 そうなるよな。しかし引き下がるわけにはいかない。


「あんた、金が目的なんだよな? 俺に勝ったらミカヅキさんの倍は出すぜ」


「へぇ、それなら後で戦いましょ」


「いや、今じゃないと困る。この後ログアウトするからな」


「それは残念」


 まだだ……


「実はな、ミカヅキさんに依頼料として5万Gもらう約束になっている。それもやる」


「……」


「……そうか俺に勝てそうにないと思っているな? そうだな。だから初心者しか相手に出来んのか」


「なにを……?」


「これでも俺は対人戦で有名だからな。仕方ないか。ここらには俺を倒せるレベルのプレイヤーなんていないしな」


 金をぶら下げるだけでなく挑発してみる。


 押して駄目なら引いてみろって奴。なお、これでも相手が有利だ。


「アンタの魂胆はよくわかってるんだよ。私を怒らせて気を逸らせるつもりだな? その手には乗らないからな」


 赤髪が自分の有利さに気がついた。だがその反応こそが目的だ。


「そ、それは困る! 今すぐ戦ってもらわないと」


「ふーん、やだね」


 一気に下手に出る。


 相手に自分が上だと錯覚させるためだ。


「頼む! 実は俺の首には賞金がかかってる! それも持って行っていい! なんなら武器なしでやってやってもいい」


「やってやる?」


「させてください!」


 弱点をさらけ出す。ついでに額を地面にこすりつけた。


 いわゆる土下座だ。これされれば大概の相手は調子に乗る。俺の勝ちだ。


 武器なしと言ったが、そんなつもりは微塵もない。


「ミラト……僕からも、どうかお願いします」


 シグレットが俺の横で土下座した。


 助かる。


「……へぇ、ならいいよ。そこまで言うんなら相手してあげるよ」


 釣れた!! へへ、ちょろいぜ。だがシグレット君を土下座させた罪は重い。ボコボコにしてやるからな。


「ありが」

「待ってください!!」


 ちょうどいいところでミカヅキさんが割って入ってきた。


 おいおいおい、こんなところでやめてくれ。


「これは私とテスタロッサさんの勝負です。それなら私も戦います」


 こんなところで2VS1の要求!? それはさすがに無理だろ。


 というかこいつテスタロッサっていうのか。初めて知った。


「ミカヅキさん、あなたは黙っててくれ。俺一人で戦う」


「いいぜ、2人で来いよ」


 マジか、ラッキー!


 相手が有利さを勝手に捨て始めた。馬鹿め。その慢心が命取りだ。


「ただし、使っていいのは2人で拳銃1丁。どっちかが死んだ時点で俺の勝ち。こういうルールでさせてもらうぜ」


 そのかわり結構きつめのルールを指定された。


「分かりました」


「ああ、それでいい」


 だが負けるわけにはいかない。


「よし、決まったな。じゃあ、行こうか」


 赤髪(テスタロッサ)がニヤリと笑った。


 俺も内心でニヤリと笑い返す。


 戦いが今、始まろうとしていた。

読んでいただきありがとうございます!


活動報告でも述べたのですが、あと1話か2話くらいで終わらせようと思います。

最後までよろしくお願いします。

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