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11/14

11:誤算

「ミラト、ミカヅキさん。お疲れ様」


 戦場から酒場に戻った俺とミカヅキさんを迎えてくれたのはシグレットだった。


「ああ、シグレットこそお疲れ様」


「シグレットさああああん!! ごめんなさい!」


「おい違うだろ! 俺達をかばってくれてありがとうございました!!」


「えへへ、どういたしまして。ほんと無事にクリアできて良かったよ」


 俺の後ろから出てきた初心者二人組がシグレットに飛びついて泣いている。


 な? シグレット君はそんなことじゃ怒らないだろ?


「いやー、楽しかった。ほい、これオレの」


 ストライカーが俺の前に来てパネルを操作すると、目の前にメッセージが表示された。


≪ストライカー さんからフレンド申請が来ています≫


「ん? おお、サンキュ。じゃあ俺のも」


 俺はメニューからフレンドカードを選び、シグレットを除く5人に渡した。


「これでいつでも遊べるな」


「ああ、それじゃ、今日は疲れたから落ちるわ」


「お疲れ」


「おつー」


 そう言うとストライカーはログアウトしていった。


「さてと、俺達もそろそろ行きますか、ミカヅキさん。ミカヅキさん?」


「……」


 ミカヅキさんが無言で俺とストライカーのフレカを眺めている。


 そういえば、もともとは友達を助けるためにPKしたいって話だったな。


 友達のことを想っているのだろうか?


「……はっ。すみません、なんですか?」


「いや、あなたの依頼、絶対にかなえて見せるから」


「ありがとうございます。それで、今からどうするんですか?」


「今日はとりあえず解散で。また明日会いましょう」


 PKの技術は一朝一夕に身につくものではない。


 ましてさっきまでまともに銃を撃てなかったのだ。CPU相手だったとはいえ、かなり自信がついたはずだ。


 本格的に対人戦を行うのは明日からいいだろう。


「明日はちょっと……」


「明日は予定でも? なら明後日で」


「いえ、それも結構ですね」


 明後日も無理かぁ。それだと大分先になってしまうな。


「だって今日再戦するので」


「……え?」


「ミラトさん、本当にありがとうございました!! これであの人を倒す自信がつきました。今から行ってきます!」


 ミカヅキさんがふかぶかと頭を下げて酒場から出て行った。


 ……え、マジ? 今から戦うの?


 たった一回PvEしただけで? いや、マジ?


「シグレットさん!! ありがとうございました!!」


「うん、また遊ぼうね。ごめんミラト、遅くなって。……ミラト?」


「……っは!?」


 初心者二人組から解放されたシグレットに肩を叩かれて我に返った。


 しまった、あまりのことに混乱してしまっていた。


「もう、ミラトったら。ところでミカヅキさんは?」


「シグレット、大変なことになった。今夜戦うんだ」


「へ?」


「ミカヅキさんは赤髪のPKerのところへ行った! 再戦は今日だったんだ!!」


「ええ、ええええええ!?」


 事情を理解したシグレットが驚きの声を上げる。


「そんなの聞いてなかったよ!」


「俺も聞いてなかったさ!」


 まずいことになったな。


 今日戦うなんてまったく知らなかった。


 てっきり修行してから再戦を申し込む物だとばっかり……


「勝てるの?」


「……難しいだろうな」


「どうしよう!!」


「どうしようもない。とりあえずミカヅキさんを追おう。話はそれからだ」


 俺達は酒場の出口に向かって走った。今ならまだ追いつくはずだ。


「お~い、オレンジ色~」

「すまん後だ!」

「オンドレオレンジ色ォ!!」

パンパンパン!!


≪おいしいゆかりん さんをキルしました!≫


 こんなときに限って邪魔が入る。急いでるんだ、どいてくれ!!


 酒場の外に出たが、もうすでにミカヅキさんの姿は消えていた。


「クソッ、遅かったか」


「どうしようミラト。見失った!」


「誰かに聞こう!……あんた、ちょっといいか?」


「うん?」


 俺はそこらへんにいた金髪のプレイヤーに声をかけた。


「このへんで長い黒髪の女性を見なかったか?」


「ああ、さっき見たね。タクシーに乗ってどっか行ったよ」


 タクシーか。


 このゲームにはファストトラベル機能がない。早く移動するなら乗り物を使う。


「ありがとう。助かった」


「どういたしまして。それよりアンタ、オレンジ色だよな? さっき指名手配」

パンパンパン!!


≪麦チョコ子 さんをキルしました!≫


「ミラト、タクシーだと追いつけないよ」


「ああ」


「どこに向かったか分からない?」


「恐らく駅だろう。俺達も乗り物を使うぞ」


 俺は手元に呼び出したパネルを操作して、乗り物と書かれたタブからバイクを選んだ。


 すると数秒後、パラシュートに吊るされたバイクがゆっくりと上空から舞い降りた。


「飛ばしていくぞ!!」


「うん!!」


 シグレットを後ろに乗せてバイクに跨る。


 エンジンをかけ、アクセルを全開にして駅へと全力で向かった。


読んでいただき、ありがとうございます


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