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第4話 コミカル・オブ・フォーメーション

 天気は快晴。太陽は今日も頭上から光を道行く人たちに余すことなく浴びせている。

 今は朝の8時過ぎ。学校の登校時間である。

 オレも普通の学生の例に漏れず学校へ向かっている最中だ。

 いつもの道を歩いていると後ろから声がかかる。

「よ〜っす、幸輔! 今日もバカみたいにいい天気だな、ってうおぉぉ!?」

 声を掛けた和正がオレの顔を見て驚く。

 そりゃそうだ。オレも朝見た時は驚いた。

「お前、プロレスラーとでも戦ったのか?」

 そう、オレの顔にはそこらじゅうに絆創膏(ばんそうこう)がはられ、左頬は大きく腫れ上がっていたのだ。

「いやいや、ただ転んだだけですよ」

 と嘘をついてみるが……。

「絶対嘘だろ」

 見事にバレる。

 あぁそうだよ嘘に決まってんだろ。転んだだけでこんなにならねぇよ。と言いたかったが本当のことは話せないのでこの話題に関しては黙秘を貫くことにした。



 ――昨日の夜。

 気を失った花梨を道端にそのままほっとく訳にもいかなかったオレは一先ず家まで花梨を担いで帰るしかなかった。

 家に到着すると花梨を担いだままゆっくりと玄関を開ける。なんか軽く泥棒みたいな気持ちだ。

 両親たちは幸いもう寝てるようだったので二階のオレの部屋まで無事に運ぶことができた。

 こんなところ家族に見られたら絶対誤解するに違いない。悪い方向に。

 部屋に着いたオレは花梨をベットに寝かせ長い長いため息をつく。

「どうすりゃいいんだよ……」

 思ったことが口に出てしまう。

「つか早く目を覚ませよなぁ。なんでオレが運んでやらないといけないんだよ」

 次々に不満が溢れてくる。しかしそれくらい言う権利はあるだろう。

 しかも一応オレも思春期の男だ。この状況で一歩でも間違えれば犯罪者扱いだ。その気持ちも察して欲しい。

 気をしっかり持つんだオレ! 健全な行動を心掛けるんだ! Yes,We Can!!

「……まぁとりあえず起こさなきゃな」

 このままでは自分の理性があぶないと思ったオレはベットに寝てる花梨の身体を揺すりながら声をかけてやる。

「お〜い。起きろ〜」

 …………。

「おい!起きろ〜。朝まで寝る気か〜?」

 ……………。

「お〜い。頼むから起きてくれって。お〜い!」

 …………………。

 業を煮やしたオレはさらに強く揺するため立ち上がり、花梨の両肩を掴んだ。

 途端、花梨の目が開きオレと目が合った。これで安心だ。

「おっ、やっと起きたか。だいぶ呼んだりしてやったんだぜ?」

 見ると花梨はなにかぷるぷると震えている。何かあったのだろうか。

 そう考えて気がつく。オレの今の体勢を。花梨の両肩を掴んで強く揺すろうとしたオレはだいぶん前のめりになっており、その顔は花梨の顔のちょうど真上にきていたのだ。

 少しマズイなと思った。だから弁解をすることにした。

「いや、この体勢には大した意味は――あぶッ!」

 なんとその瞬間、花梨の右ストレートがオレの顔面にクリーンヒット。

 鼻血を出しのけ反りながら床に倒れるオレ。

「なにしてんのよあんたわぁぁぁ!?」

 大音量の叫びが風間宅にこだまする。

「うおおおおお! そんな声出したら両親が起きる〜! ちょっ、タンマ! タンマ! 声でかいって! 頼むからちょっとタンマ!」

 オレはこれまた鼻血を出しながら必死でなだめに入る。

「別にオレはやましい事なんか何一つとしてしてねぇよ! むしろその逆だ! 健全な高校男子として花梨をこれでもかとエスコートしようと必死に―――」

「馴れ馴れしいしなんか気持ち悪いわぁぁぁ」

「ぶふッ!」

 再び殴られるオレ。しかも先の戦闘で負傷した左頬へのストレートパンチ。

 痛みで軽く意識が飛びそうである。

 しかしその時。

「陽介? ドタバタしてどうしたの?」

 母さんの声だ。マズイ! なんとかせねば!

 咄嗟にオレは扉が開かないように足で扉下部を押さえつけた。

 案の定、扉を開けようとした母さん。しかし当然扉は開かない。開かない扉に違和感を覚えた母さんは言う。

「陽介? 扉が開かないんだけど、大丈夫?」

 全然大丈夫ではないがこの混乱を悟られないように出来る限りゆっくりと冷静に答える。

「あ、うん。今部屋を掃除しててちょっと扉のところに荷物を置いてるんだ。気にしないで」

「そう。じゃあ、もう少し静かにね」

 そう言って母さんの気配が扉から離れていく。

 こ、これは……心臓に悪すぎる。

 安心したのもつかの間、花梨の視線がオレに突き刺さる。

「まぁそういうわけでここはオレの家なんだ」

「そいじゃあ、さっきあたしにキスしようとしてたのはいったい何?」

「いやいや、それは違うぞ。あれはなんというかタイミングの問題というか……。そう! タイミングの問題だ!」

「はぁ……、まぁもういいわ。あたしもいきなり殴って悪かったわ」

「ッ! 許してくれるのか?」

「まぁそんな鼻血ダラダラの顔見せられたらね」

「おぉ! なんて言ったらいいかわからんがサンキュー」

「その代わり今度やったら殺すからね!」

 何気に恐ろしいことを言う花梨。コイツなら本当に殺しにきそうなのでマジで気をつけなければ。鼻血をティッシュペーパーで拭き取りながらそう思ったところで、そんなことよりもオレはこの目の前にいる少女に聞かなければいけない事があることに気付く。

「それでさぁ、結局のところあのイドとかいう化け物はなんなわけ? それに花梨は何であんなのと戦ってるんだ?」

 すると急に花梨の目付きが鋭くなる。

「……そんなことあんたは知らない方がいいわよ。関わったら最後、死ぬわよ?」

 何故だかまたあの恐怖が蘇る。俺を追う赤い眼孔。獣のような叫び声。凶悪に光る爪。

 思わず冷や汗が出てくる。……でも。

「わかったでしょ? 普通の人間が関わっていいことじゃないのよ」

「もう関わってる」

「え?」

「もう関わってるって言ってんだよ! オレはあの化け物にもう二度も襲われてるんだぜ?」

「………。また襲ってくるって?」

「あぁ。そんときオレ1人だったら間違いなく殺されちまう。違うか!?」

 オレは結構必死で言う。

「それで?」

「だ  か  ら!」

 ここでハッキリ言ってやる!!

「オレをお前のパートナーにしてくれッ!!」

「はぁ!?」

 驚く花梨。無理もない。

「だからさぁ、オレは化け物に襲われて死ぬのが嫌で、花梨は一人であの化け物と戦ってて大変なわけだろ?」

「別に大変じゃないわよ」

「ぐっ、いやまぁここでは大変だと仮定するとしよう」

「なんでそこで仮定の話が出てくるのよ!?」

「それでだッ! オレはパートナーとして花梨の手助けをするんだ!」

「ちょっと! なんで勝手に話進めてんのよ!」

「するとどうだ!? オレは化け物から身を守れて幸せ。花梨は化け物退治が楽になって幸せ。どっちも幸せでまさに一石二鳥じゃないかッ!?」

「だから人の話を聞けえぇぇぇ!」

「そういう訳でこれからよろし―――がふッ!?」

 いくら言っても止まらないオレに対して遂に花梨の強烈な蹴りが炸裂する。

 今日何度目かの悶絶を体験するオレ。思わず床にうつ伏せ状に撃沈してしまう。もう本当に死にそうだ……。

 そんな中、花梨が口を開いた。

「あんたはこれがどれだけ危険なことかわかってんの? あたしと一緒にいてもいなくても同じことよ。いや、もしかしたら一緒の方が危険かもしれないわ」

 それを聞いたオレはうつ伏せのまま言ってやる。

「どっちにしても予想……だろ? 結局、どっちが危険かわからないままならオレはお前を手伝うことを選ぶ!」

 花梨は何も言わない。

「お願いだ! オレに手伝わせてくれ! 後悔はさせない。なんだってやってやる。だからッ!」

 ハッキリと、真剣に、そして力強く伝える。今の思いを。今までの日常を非日常に塗り替えるために。

「……………。」

 花梨はやはり何も言わない。やはりダメなのだろうか? オレは不安になった。しかし。

「わかった」

 そんな声が聞こえた。オレは嬉しくて、しかし痛みで立てなかったので床から顔を上げて花梨を見上げた。

「その代わり、文字通りなんだってやってもらうわよ。覚悟しときなさい」

「………………」

「何? 嬉しくないわけ?」

 いや、そうではないんだ。嬉しいんだ。そう、今のオレは嬉しいんだよ。いろんな意味で。

「あ、あのさ………ス、スカート」

「ん? スカート? ……………ッ!!」

 そうオレに言われて花梨は気付く。スカートの花梨を見上げているオレの現在位置がバッチリで、ある物の絶好のウォッチングポジションだったことを。

 花梨の顔が烈火の如くどんどん赤くなっていく。

 このままでは危ない! そう悟ったがもう遅かった。

「滅却!!」

 花梨の足がオレに振り落とされた。



 昨夜の世にも恐ろしい出来事を思い出しながらオレは和正と学校へと向かった。

てなわけで第4話です。

書いてて思ったんですがシリアスさが全くと言っていいほど感じられないですね。

まぁシリアスさは後半になれば嫌でも出てくると思うので今回は、というかしばらくはコメディな部分が多くなりそうですね(笑)

読み直した時に自分でもこれなんてラブコメ?って思ってしまいましたよ。

ラブコメ調に書くつもりは全くなかったんですごい恥ずかしい(汗)

まぁでも良しとしときます(笑)

ではではッ。

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