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3-6.「手紙及び後始末の報告結果」

 瞼を開け、その視界にあるのはマイルームの内装。

 覚醒の為に「はぁ」と溜め息を吐いて、寝起きの頭に空気を送り込むように欠伸する。



「「おはようございます。殿下」」


「おはよう」



 眠っていたベッドの両脇にいる2人のメイドの挨拶。その重なった声に応えながら俺は目覚める。


 普段と変わらない時間に目覚めた俺は、いつも通り起床にメイドのサポートを借りて起き上がる。

 その後濡れタオルで顔を拭き、寝間着から上下黒色の服装に着替させて着替え完了。朝食の時間になるまでの時間をソファーに座り過ごす。


 昨日ガーベラ王女がやって来たので、今日から予定がほとんどない。

 成人式と結婚式の詳しい内容を知らない俺は、『結婚前に何をすれば良いのか』が分からない。

 成人式を経験したアシュレイ姉様や、やるべき事が分かっていそうな母様達に聞いてみようかな。



「殿下この手紙は、まさか……?」


「どうかしたか? ローザ」


「テーブルの上に、突然手紙が現れました」



 部屋のソファーの前には、それに対応した高さのテーブルが置かれている。

 その普段は綺麗に磨かれて埃一つ落ちていないテーブルの上に、読みかけの本や資料ではなく手紙が、先日騒動になったセレスティア家からの手紙があった。


 この手紙は毎回どうやって送りつけて来るかしらないけど、神出鬼没な紙だ。

 恐らく一昨日と同じ送り主だろう。

 ローザにペーパーナイフを用意させて切り、中の手紙を読んだ。



『契約の第一回目。

 ジークエンス・リートは血を容器に入れ、天魔領と王国領の間にある荒野に置きに来い。

 人間では1日で到達出来ない距離だと判明した為、日時に余裕を持たせた。十日後に実行せよ。』



 やはり、悪魔からの手紙だ。

 一昨日悪魔に『俺の血を贈る』と契約した。

 彼らは俺の血が目的だったので、血の代わりに国に入らない事を約束させた。


 というかこの悪魔さんはいつまでセレスティア家の物と分かる封筒で送って来るんだよ。

 そして……



「どこで失くしたのか、私は血液の容器を持っていないぞ」



 重要アイテムの筈なのに、忘れて帰ってきたらしいのだ。

 そして悪魔。忘れて帰ってきた。


 そういえば出すように言われたvs悪魔ダエーワのレポートを書いていないぞ俺。

 更には昨日ミゲルとメルティに頼んだ事の結果も聞いていなかった。

 この俺が、ガーベラ王女の王城訪問に浮き足立っていたのか? 



「おいミゲル、昨日の結果をしてくれ。昨日は報告を聞き忘れていたようだ。


「分かりました。……昨日、殿下の仰っていた7人の元奴隷。4人の男と3人の女に会いました。彼らは開拓村の話を了解し、馬車で村まで向かわせました。

 ……そして奴隷に志願した金髪のレティシアという少女ですが、開拓村と聞くなり奴隷になる事をやめて開拓村に向かいました」


「何故だろうな。彼女は最初の村民なりたかったのか?」



 俺はすっかり忘れて放っていたミゲルの仕事の報告を聞く。

 彼ら7人全員が村(予定地)に向かったとの事だ。


 金髪のレティシアが奴隷復帰をやめて、開拓村に向かった理由。

 なんだろうな?



「確かに迷宮都市から離れると使える土地は多くありますが、開拓村は厳しいとの事です。

 レティシアは、どれほど先祖が苦労したかの話を聞かされていたとの事でした」


「私も開拓村の知識などないまま、一瞬で考えた話だ。問題があれば後から埋めるだけだ。

 ミゲル。お前は迷宮都市で開拓村の移住を提案させろ。そして彼らには家を一軒と食べ物くらいは送ってやれ、税は極力少なくさせろ」



 村を開拓する一代目は死と隣り合わせだと追加で聞かされたというミゲル。

 最初は雨風をしのげる家もなく、育てた野菜が食べられるまで飢え続けて、それは税金にされてしまう。

 それが俺の執事が話す、少女レティシアの先祖の実体験。そしてハードな現実。


 だが今、俺の未来の領地でそんな村を新しく作りたくない。

 レティシアの先祖の語った話から、問題点を一つずつ解決させる為に金を使わせる。



「宜しいのですか?」


「村を開拓する折に、領主から家と食べ物と減税を贈られる事例など無い筈だ? これの効率がよければ良い前例を作れるではないか」



 自分が提案した仕事で餓死されたとしたら笑えない。

 俺から国のお金を出してサポートするから、彼らには頑張って生きていて欲しいな。



「後はメルティだが、アレはこの時間には居ないからなあ」



 昨日ミゲルと同時に俺が忘れて来た、王家の者の証である『白羽の剣』を持ち帰って来るように頼んでいた。

 白羽の剣は7人の元奴隷の平民より重要案件だったのだが、置いてきた場所の目星が付いていた&ガーベラ王女が訪問した浮かれ気分で忘れていた。



「メルティでしたら『白羽の剣は保管場所に戻した』との事です。彼女も昨日は伝える間が無かったと言っておりました」


「分かった。詳しい事はメルティ本人に聞く事にするが」



 俺って浮れていたんだな。

 王城にいる人達は大体顔も覚えているが、その中でガーベラ王女が新鮮だったのだろう。


 顔を覚えるといっても前世の感覚がある俺からしたら、ヨーロッパ顔の人が区別付かなくて全員が同じ顔に見える前世の感覚。

 今ではそれが若干邪魔をして、一瞬で顔を覚える事が難しくなったけどね。



 そして俺はもう1つ。

 "悪魔ダエーワ及びその諸々"を書面に書くことを忘れない為に、

 机から紙を取り出し『生存している悪魔及び薄型爆弾の脅威について』とタイトルを書き、よく開け閉めするアテン ザ ミステルの資料が入った棚に入れた。


 さて、もうすぐで朝食の時間だ。

 ローザに言われるまで今日の予定でも考えておこうかな。





「殿下、もうすぐ朝食の時間です」


「分かった。ふぅ……ならば後で考えるか」



 椅子に座って考えていた俺にローザが時間を知らせてくれる。

 今日の食事中に考えよう。その間に閃かなかったら素直に、ガーベラ王女にやりたい事を聞いてみる事にしよう。


 そう考えた俺は部屋を出て、同じ階層にあるガーベラ王女の部屋に向かった。



 部屋の前には老執事のダン・クランクが立っている。俺に気づいた執事が部屋に合図を送ると部屋の扉が開かれ

 昨日とはまた別のデザインだが基調色の赤はそのまま。昨日より表情が元気に見えるガーベラ王女が出て来た。



「おはようございますジークエンス様」


「おはようございますガーベラ様。ガーベラ様は昨晩はよく眠れましたか?」


「はい。ジークエンス様の部屋にあるベッドと同じものでしたので、私も少し慣れていたようです」


「それは良かった。では早速ですが朝食に参りましょう」


「はい」



 ガーベラ王女は俺の差し出した手を取り、俺の顔を見て微笑んだ。

 婚約者の可愛い笑顔を見せられ、朝から呆気にとられた俺。

 1秒にも満たない時間をフリーズしていたがハッと我に返り、すぐガーベラ王女の手を引き食卓の部屋に向かって歩いていく。

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