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3-5.「王城案内」

 俺の手はガーベラ王女の手を取り、王城の中を案内しながらゆっくりと歩いている。



「ガーベラ様、彼らの名前を教えてください」


「えぇ。執事のダン・クランクにメイドのレイラン、私の騎士のフルマルン・ライトロードです。ですが名前で呼ばなくとも……」


「大丈夫ですよ。知るのは名前だけですし、既に覚えましたから。3人も、この城の勝手を少し知ってくれればいい」



 ガーベラ王女のメイド、老執事、スーツの騎士の名前を教えて貰った。

 この城案内はガーベラ王女が王城に慣れる為以外に、その使用人の3人に俺の普段の居場所を教える為という理由がある。


 だが王城内部施設を一部とはいえ紹介するのは危険。

 彼らは根本的に他国の人間なのだが、アシュレイ姉様からの忠告も無いし、彼らはガーベラ王女に付きっきりのようなので王城内の紹介を行った。



「私は普段自室にいます。君たちは用があれば私の部屋を尋ねる用に」


「畏まりました」


「そして朝と夜の食事ですが、基本この同じ部屋で食します。食事前に私が迎えに行きますから、ガーベラ様は部屋で待っていて下さい」


「分かりました」



 俺は基本自分の部屋にいる。用があれば来る様にと3人に言うと老執事が答え、了解した。

 プラスで朝、朝食を食べた食卓の部屋を紹介。今までは時間の少し前にローザ達を連れて食事に向かっていたけど、今日から王城では毎回毎回彼女をエスコートすると決める。

 俺、心配性なのかな?


 説明しながら城の一階を歩く俺たち。

 廊下を歩いている途中、懐かしの中庭の庭園が見えた。確か11、2年前の前回にも彼女と見た庭園。

 庭がよく見える部屋に入り、その話を交えて説明する。



「この場所を覚えていますか? 貴方がベルベット様と共にこの城に来た日、モナーク兄様の勧めで見た光景です」


「はい、覚えております。確かこの花はイルシックス王国では咲かない花のはずです。しかし綺麗な花です」



 こういう時って「貴方の方が綺麗だよ」なんて言った方が良いのかな?

 彼女が見ている花は単色をグラデーションして綺麗な仕上がりな花だ。

 前世では花に詳しくなかったから分からないが、それでも前世にはないだろう見た目をしている。名前はスチュアート。


 知らない名前の花がある中、知っている花としてタンポポやアジサイやバラなどはこの中庭や庭園でみれる。

 ちなみにガーベラの花も存在する。





 部屋を出た俺たちは近くの階段を上がって二階に。

 そして外が見える窓を開けさせ、下に広がる野外演習場の説明をする。



「部屋に居ない場合、ほとんどここに居ます。

 フルマルンも、腕を鈍らせたくないならばここで鍛えるといい。対人は申請を出す必要があるがな」


「ありがとうございます、殿下」


 今現在ここで自主練をしている騎士は2、3人。

 普段はそこでちょうど練習中の騎士や兵士。相手になれる奴が居なければメルティと剣を打ち合っているのが俺。


 実力を測られる事や国家間でのトラブルなどで、実践をやる場合は他国の者は複数の契約を結んでないといけない。

 フルマルンは一応他国の者なので必要になるのだ。が、俺の許可でどうともなるので俺が許可した者となら申請なしで戦える。相手は例えば俺とかね。


 ここは剣だけでなく小規模なら魔法の使用も可能だが、本気の魔法を使うならこの奥にある、魔法専用の演習場に行かないといけない。

 そして、フルマルンってどこかで聞いた名前なような……。





 再び一階に降り、王家の神殿の前まで向かった。

 扉の前数メートルは敷かれている絨毯が赤から黒に変わり、扉の両脇には武装した兵士が2人立っている。



「ここが王家の神殿です。私も数日に一度は訪れますね。この場所に用があれば、部屋番をしている2人に事情を説明せ。すると中から誰かが出て来ルはずだから」


「承知いたしました」


「そしてガーベラ様もこの場所には1人では入らないで下さい。この部屋は"王家の神殿"ですので」


「はい、肝に銘じておきます」



 予定が無い日なんかに、気分転換に訪れたりたまに祈ったりしている場所。


 俺にとっては読書する場所の一つだが、仮にもここは王家の神殿だ。

 まだ結婚していないガーベラ王女がここに入るのは風習的にも、存在するかもしれない未知の神パワー的にも止めておきたい。



「他はアシュレイ姉様の魔法研究の部屋くらいですか。城の表や庭や空き部屋以外は、大まかこれで終わりですね。

 でもしかし、これで私の行動範囲の狭さがよく分かりました。10年もよくこれで嫌にならなかったものだ」


「……ジークエンス様、部屋に戻りましょう」


「そうしましょうか」



 俺はガーベラ王女の手を取り、部屋に戻る。

 彼女の部屋は俺と同じ2階の空き部屋で、その部屋に彼女を送り終える。



「夕食前に迎えに来ます。私は自分の部屋に居ますから、用がありましたら気にせず訪ねて下さい」


「ありがとうございました、ジークエンス様。待っております」



 ガーベラ王女と執事、メイド、騎士が頭を下げ同じ階にある自室に戻る。


 改めて感じた。

 俺の活動範囲を教えたらその場所がピンポイントで、俺の行動範囲が更に狭いのだと感じた。

 俺ってばよく、こんな空間で退屈はしたものの居続けられたものだよな。


 ……気分を変えて、新しい剣技の構想でも立てようかな。





 新しい剣技の構想は浮かばないが、探索者という職業の事を考えていた。


 探索者とは、迷宮を探索する者。

 迷宮には異形の魔物が存在する事からある程度の実力が必要であり、

 迷宮内の狭さから剣を大振りするのは危険。風の通りが遅いと無闇な火魔法などの使用や長時間粘る戦法が使えないなど、戦い方が特殊。

 折角、自分の領地に迷宮都市なんてものがあるのだから、新しい戦い方を学んでみたいな。とか思っていると、



「殿下、あと少しで夕食の時間です」


「ではガーベラ様を迎えに行くか」



 ローザが俺に時間だと報せる。

 椅子から立ち上がった俺は部屋を出て、ガーベラ王女の部屋まで移動する。

 彼女らの部屋を護衛していたこの国の兵士が俺に気づき、扉が開かれガーベラ王女が出てくる。



「では参りましょう」


「えぇ、ジークエンス様」



 同じ服装ながら少し余裕があできたようなガーベラ王女。彼女の手を取り、一階にある食卓の部屋に入った。

 中にいるのは、使用人を除けばアシュレイ姉様だけだ。俺たちは隣同士になって席に座り、アシュレイ姉様に話し始めた。



「姉様、昼は断ってしまい申し訳ありません」


「構いませんよ。1人で考えたい事もありましたから」


「それならばよかったです」



 お互い『風呂』『入浴』の言葉を使わず、会話する。

 この国で、魔法分野で俺以上な者は数が少ない。そしてその1人のアシュレイ姉様が何か新しい魔法に失敗したと。


 そんなに強い人が失敗する魔法が何かと気になるが、他の人のいる前でそれを聞くのは無粋な話だ。

 また今度1人の時に教えて貰おう。





 この後2人の母様とリズが入室したが、まだ食事をが用意されない。

 という事は、夕食には父も出るという事だ。

 そして食卓の部屋の扉が開かれた。



「「お疲れ様でございます」」


「あぁ。皆揃っているのだな」


「はい、お父様」



 母様たちの挨拶に答えた父様。

 その父が俺とガーベラ王女に目を向けてそう言ったので、そうだと返す。


 父様が座ると、時間を見計らった執事たちが食事を持ち運んで来た。

 朝とはソースや肉の味が少し違うステーキ。トマトスープにサラダにスパゲティに紅茶が出され食事を開始。静かに食べきった。



 食事中の会話は滅多にしない。その理由は話をしてはいけないから。

 父様は食後の紅茶のカップをソーサーの上に置き、俺たち2人を見据え話し始めた。



「結婚式後の予定をお前達に伝えておく。

 ジークエンス、お前はモナークやハイルハルトに大きく劣るものがある。分かるな?」


「はい、分かっております」


「ならばそれを埋める為、そしてお前が優れた統治者となる為に式を挙げた後に、兄であるモナークとハイルハルトの領地へ向かうのだ。

 そして各地で30日滞在後に、お前達が自ら領地へ向かう事を許可する」


「はい、畏まりました」


「畏まりました」



 俺が2人の兄に大きく劣るもの。それは3年間の空白から来るもの全てだ。

 3年前に、これから3年かけて学ぼうとしていた事が頭の中にないのだ。


 そこで父様は、既に働く兄達の姿や仕事ぶりをみて学べというな事なのだろう。

 俺はそこまで理解した上で、ガーベラ王女は俺の後に続きその言葉を了解した。



「そうだな、お前たち両親覚悟を決めている事は感じた。では各自部屋に戻れ」



 父様が席を立ち、それに続いて皆が部屋から自室に戻っていく。

 俺もガーベラ王女の手を取り、彼女の部屋までエスコートした。



「私はまだ起きていますから、私に用があれば部屋まで訪ねて下さい」


「ありがとうございます。ですが私は少し疲れてしまいましたので、今から眠ろうと思います。おやすみなさいませ、ジークエンス様」


「おやすみなさいガーベラ様」



 今日はそれなりに眠っていたけど、慣れない場所で疲れたのだろう。

 それなら今日は俺も早く寝ようかな?

 明日からは、ガーベラ王女を迎えに行かないといけないからね。


 「今から寝る」とメイドに伝えて指示を出し、普段着から寝巻きに着替えさせてベッドに入る。

 自室の照明の明かりは消え、瞼を閉じる。

 いつものように俺が眠るのを見守る、ベッド脇のローザとサーシャを感じながら俺は眠りについた。

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