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3-2.「朝食の席にて式の予定日」

 部屋の中にはセシリア母、ステイシア母、アシュレイ姉、妹のリズの全員が揃っていた。



「母様姉様おはようございます。リズもおはよう」


「おはよう。」


「おはよう。ジーク、そちらの方がガーベラ様ですか?」


「はい。母様はご存知だったのですね」



 まず、挨拶を返してくれた2人の母様方。


 そして事情を知っている風な質問をしてくれたステイシア母に答える。

 それから右を向斜め後ろにいるガーベラ王女の方に目を向けて、挨拶を促す。



「初めましてセシリア様、ステイシア様、アシュレイ様、リズ様。私はジークエンス様の許嫁として今日城に入りましたガーベラ・イルシックスでございます」


「貴方がガーベラ姫だったのね。昔一目見ただけだったから分からなかったけど、貴方を歓迎しますよ」



 母様たちは食卓の椅子に座っていて、セシリア母様が、自己紹介を行なったガーベラ王女を歓迎した。


「おはようジーク、ガーベラ様も」「おはようございます。お兄様! とガーベラ様」とアシュレイ姉様とリズからも朝の挨拶を受け、リズの頭を撫でてから空いている席に座る。


 部屋の入り口から見て右の奥から俺、ガーベラ王女、リズ。左の奥からセシリア母様、ステイシア母様、アシュレイ姉様だ。

 元々ガーベラ王女が座っている席にはリズが居たのだが、リズは察して席を移動したのでこの順番だ。



「リズ、席を代わってくれてありがとう」


「ありがとうございます」


「私が間に入ってはいけないので」



 口を尖がらせて不満そうなリズ。彼女に感謝を伝える。

 俺も久し振りに再会した許嫁と、隣で楽しく食事をしたいしね。



 俺たち2人が席に着き落ち着くと食事が運ばれて来た。

 今日の朝食は、丸いパンに柔らかいステーキとサラダとスープ。紅茶に茶菓子のクッキーとノーマルな食事だ。

 ガーベラ王女は小食なのか旅の疲れなのか余り食べなかったが、「美味しいです」と気に入ってくれて良かったよ。





 食後は紅茶とクッキーと談笑の時間だ。

 いつもは話を聞いている側だが、今日はガーベラ王女というネタがこちらにあるので、ティーカップを置いて話し出す。



「私の成人式はもうすぐですが、私がガーベラ様と婚姻を結ぶのはいつなのでしょう? 私はよく知らないのですが」


「成人式は7日後ですからね。婚約の約束は既に交わされましたし、成人式当日に婚姻を結びその2日後に式を挙げるのはどう? 貴方たちがよければそうするわよ」


「私はそれで構いませんがガーベラ様は大丈夫ですか? 長旅で疲れましたでしょうし」


「私は構いませんわ。待ち遠しい日を遠ざけることはしません」



 式の予定は予め決まっているものなのだが、俺たちが主役なので、数日くらいの変更は出来るらしい。

 結果、元の予定でいいって事で7日後の成人式の2日後。つまり、9日後に結婚式を行う事になった。



 俺たちは政略結婚だ。

 隣接する国家間で王子と王女が許嫁。なんと分かりやすい。

 でも俺はこの結婚は嫌じゃない。


 相手は同い年の可愛い女の子で性格はお淑やかそうだ。

 幸いにも彼女も「待ち遠しい」と言ってくれているので、俺には最高の政略結婚と言えるだろう。

 カップを置き目を開けた俺と、ガーベラ王女の目がふと合った。



「私も貴方との式が楽しみですよ」


「あ……ありがとうございますジークエンス殿下」



「ーーガーベラ様、ジークの事をまずはジークエンス様と呼んであげなさい。ジークがかわいそうよ」



 俺たちの会話を聞いたセシリア母様が言う。



「私は構いませんよ母様。彼女の呼びたい呼び名で構いません」


「いえ、申し訳ございません殿下。これからは改めます」


「そうですよ。もうすぐで結婚するのですから、結婚した後にジークを『殿下』と付けて呼んでいたら私が叱ります。

 ここは公的な場ではありませんから。貴方も気を張る必要はありませんよ」


「ーーはい。ありがとうございますセシリア様」



 セシリア母様とガーベラ王女の話で俺の呼び名が『ジークエンス殿下』から『ジークエンス様』となった。

 自分のタイミングで変えて欲しかったけど、これも良いタイミングだったんじゃないかな。

 話の真意は、結婚する間なんだから私的な空間で公的な敬称をつけるな。という事だろう。



「良かったわねセシリアさん。それと美味しかったわ」



 話を聞いていた1人のステイシア母様が食事終了の言葉を宣言してご馳走様だ。

 そして俺たちは食卓の部屋を出て、各々部屋に戻る。





 俺がガーベラ王女を連れて部屋に戻る前、一緒に部屋を出たリズが声をかけて来た。



「あの、お兄様」


「なんだ?」


「え……と、んと」



 言い難い事なのか歯切れが悪い。

 俺はガーベラ王女の手を離し、その反対の左手を頭に置いて中腰になり話を聞いてみた。



「どうした?」


「あの……お兄様。私、昨日の夜何か懐かしい夢を見ました。どんな夢だったかは、覚えていないけど……」


「あぁ」


「……お兄様。好きです!!」



 妹からの愛の告白。

 婚約者の目の前でするのはどうかなと思うが、可愛い妹から『好きです』なんて言われて嬉しくない兄などいない。

 リズはやっぱりブラコンだが、俺も十分にシスコンなんだなって思ったよ。



「ありがとう、私もリズのことが大好きだよ」



 でもリズは涙目になっている。

 勇気を出して告白してくれたからなのか分からないが、好きと言われて泣かれるのは嬉しくないな。


 そして俺はリズの頬に軽くキスをして、目を合わせる。

 俺の体が壁になって後ろにいるガーベラ王女には見えていないはずだ。

 リズにも早く運命の人を見つけて欲しいけど、俺は今の涙を止めてあげたくて、キスをしたんだ。



「お兄様……?」


「私は部屋に戻るよ。リズも今日一日幸せに過ごすように」



 もう一度左手で彼女の頭を撫で、立ち上がって右手でガーベラ王女の手を取って部屋に戻る。

 今度は話すネタも思いつかないので2人とも無言だ。


 部屋に戻ったらまずは将来の領地での良さそうな仕事を探して、メルティにクラウディア母の家に白羽の剣を取りに行かせて、その後に風呂に入るか。

 そしてガーベラ王女の様子が少し疲れているように見える。

 彼女は今日城に入ったとの事で、その旅の移動が原因かもしれない。部屋とベッドは用意されているので、休んで貰おうかな。





 俺は部屋に戻り、ガーベラ王女に提案してみた。



「ガーベラ様。やはり旅で疲れているのではないですか? 部屋の用意はありますし、ベッドで眠ってはどうですか?」


「じ、ジークエンス様はこれから何をなさるのですか?」


「私は少し調べ物をして、その後に入浴しようかと思います」



 この城での今後に安心したのか、彼女に疲れが見て取れる。今の俺や母様たちの前ではまだ、気を張っていたのだろう。

 そんなガーベラ王女に就寝を進め、今からの予定を説明した。



「ならば私も共に入ります。主人の肩を流すのは妹ではなく妻の役目と聞いています」


「いや、駄目ですよ。それにリズとは入りません。ガーベラ様も入りたいというなら先に入ってください」


「いえ、待っています」


「…………」



 何故か食い下がらないガーベラ王女は一応保留。

 彼女がリズを引き合いに出す理由はさっきの告白だろうけど、それは妹というポジションを羨ましがっているののか。もしくはイルシックス王国では妹が肩を流す(推測)なのか。


 妹と婚約者では立場が違う。互いにそれになれないから、ガーベラ王女は『妹』の立場を羨ましがっているのだろう。

 愛が主題な考察は、自分でも何を考えているか分からなくなってきたよ。



 そして彼女にソファーを進め、俺は机の前に座り、将来の領地である『アテン ザ ミステル』の資料の一つを取った。

 さて、元奴隷の少年少女たちの仕事先は何が理想かなあ〜。

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