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3-1.「再会のガーベラ王女」

「あぁ……ぁ」



 口を大きく開いて欠伸し、短い眠りから目を覚ます。

 視界には、ベッド脇にいるメイドのローザとサーシャ。遠くの婆やといつもの面子があり、彼女らは俺が目覚めた事に気付いて朝の挨拶をする。



「「おはようございます。殿下」」


「おはよう」



 2人が同時に言葉を発しそれに答える。


 俺はベッドで数十秒横になり、かけられている毛布をのけさせ着替えに移る。

 下は膝下まである黒で、上は白のシャツの上に薄手の黒いジャケットを着て完成だ。


 昨夜は、戦闘後に身体を洗っていないからか身体が少し汚れている。

 昨日は単純に眠かったし、元奴隷の少年少女達の方が俺と比べるまでもなく汚かったので、その比較で大丈夫だろうと思っていたのだろう。

 なので食後は身体を流しに行こうかな。と、顔を濡れタオルで拭きながらそう決めた。


 マグヌス達の家には白羽の剣が置きっぱなしなのでメルティに取りに行かせないといけないし、宿に泊めてある元奴隷達の就職先を探して仕事と宿代を持って行かせないといけないな。

 命令をすればいい事だが、面倒だ。



「殿下。今日は朝食の前に会っていただきたい方がおられます」


「誰だ?」



 ローザは「私からは…」と言い難い雰囲気だったので、早く部屋に入れる。

 部屋の両開きで外開きの扉が開き、誰かが入ってきた。


 赤を基調にしたドレスに身を包んだ同い年くらいだろう少女。

 その後ろに白髪の男性老人。統一されたこの王城のものではないメイド服を着たメイド。背丈の高いスーツ姿の女性。そして俺の執事のミゲルが入って来た。

 あれ? 彼らには何か既視感があるな。





「殿下、この方が……」


「いえ、私が名乗ります」



 ミゲルの紹介を切って断り、その少女は距離を一歩前に進め名乗りだす。



「イルシックス王国から参りました。ガーベラ・イルシックスでございます。成人式及び殿下との婚約、婚姻を結ぶ為に参りました。本日よりジークハイル国王城に入らせていただきます」



 そう言い終え、ドレスを摘んでカーテシーをきめる許嫁のガーベラ王女だった。

 そういえば、もうすぐ彼女がこの城に到着するとローザがメルティが言っていたっけ。


 彼女とは、俺がジークエンスとしてこの世界に転生した年に出逢った以来の再会なんだよな。

 11年間で、容姿もかなり可愛く変わっていたので分からなかったよ。



「おはようございますガーベラ王女殿下。私達が3つの頃以来ですから、11年振りの再会ですね」


「ーージークエンス殿下も、覚えてらっしゃったのですか?」



 ガーベラ王女の自己紹介に軽く返すと、そう幼少時代の記憶力を問われる。

 「ジークエンス殿下『も』」ってところから、彼女の記憶にも残っているんじゃないかと思われる。それは嬉しいよね。



「その頃の記憶ならありますよ。それとジークエンスでは名前が呼びづらいでしょう? 私の事はジークと呼んでください」


「……いえ、私にはまだ早いです」



 俺のジーク呼びを拒否して、ジークエンス呼びのまま。ニックネームで呼ばれるには少し時間がかかりそうだ。



「分かりました。ではこれから私と朝食はいかがですか? 


「はい。ご一緒いたします」



 結婚する俺たちには時間がある。いずれニックネームで呼んで貰おうと考えつつ、彼女はなんと呼んだらばいいのかな?

 と考えて、彼女に質問する項目の一つに加える。


 そして今から食事だ。その前後にでも様子を見ながら質問して見よう。

 そして彼女の存在は王も承知だろうし、食事が足りないという事はあり得ない。


・ガーベラ王女のことはなんと呼べばいいのか。(new)

・貴方とは、最近どこかで出会っている気がする事。

・そもそも「ガーベラ」の名前は幼名ではなかったのか? という話。(そもそもこれは、王の情報に誤りでもあったのかどうかもある。)



「ではガーベラ様、手を」


「は、はい」



 再会の挨拶をキチッとすませ、敬称を『王女殿下』から『様』に変え、エスコートする。


 挨拶は公的な呼び方で行ったが、他人行儀な敬称は必要ないだろう。ニックネームを尋ねてそれが許可されるまでは『ガーベラ様』でいこう。

 そして、そもそも俺も殿下だしね。


 開かれた扉から部屋を出て、俺たちは食事をとる部屋に向かう。

 エスコートの経験はほとんど無いけど、彼女にとってこの廊下も階段も初めて通る道だからね。





 私たちは廊下を歩き、階段を降り部屋に行く途中で話している。



「ガーベラ様。貴女の事はなんとお呼びすればいいでしょうか?」


「先と同じ、ガーベラでお願いします。そしてジークエンス殿下……」


「なんでしょう?」



 聞きたい事を一つ尋ね、彼女の呼び名がしばらくガーベラ様に決まった。

 そして彼女からの言葉。



「私にそれほど丁寧な言葉遣いは必要ありません。あなたは私の主人となる方なのですから」


「そうか? ……分かりました。あまり堅苦しい言葉は使わないようにしますね」


「ありがとうございます」



 己が無意識のうちに言葉を選んでいたと気付いた。

 彼女的にはジークハイルとイルシックスは男性優位社会だし、ジークハイルの方が国力も軍事力も高いから俺の口調に違和感を感じたのかな?



 会話が終わり、ゆっくりになっていた足のスピードを少し上げる。

 そして食卓の部屋に着いた。


 振り返ってみれば、俺とガーベラ王女を含めた俺の部屋にいた全メンバーが付いて来ていて、10を超えた大所帯となっていた。

 彼らの会話も足音も、全然聞こえてこなかったから分からなかったよ。

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