2-ss.「リズの夢の回想 りふれくしょん!」
※この話はジークエンス視点ではありません。
リズ視点です。
これは5年前、私が6歳の頃の話。
私が魔法の杖なしで魔法が使えなかった頃の話。
「なんで、できるの……」
この頃の私は既に気付いていたと思います。
それがお兄様の、私を励ます冗談でも。
◇
モナーク兄様もハルト兄様もアシュレイ姉様もジーク兄様も、私の歳の頃には杖なしで魔法が使えたと聞きました。
そして、モナーク兄様とジーク兄様は初めから杖を使わずに魔法が使えたそうです。
「ごめんなさいリズ、私は今から行かなければいけない所があるの」
「お姉様はどこに行くのです?」
「亡くなってしまったフローレンス様の領地に行かないといけないの。ごめんなさいね、陛下も一緒だから時間を合わせられなくて」
「あぁ……ごめんなさい。お姉様」
フローレンス様はレヴリー公爵家の長男で、お姉様の許嫁だった人です。
確か昨日お父様につれて行って貰うと言っていました。お姉様は悲しそうで、いけない事を聞いてしまいました。
「私の代わりにジークに教えて貰ったらどう?」
「お、お兄様ですかっ!」
「ふふ、リズはジークが大好きですからね。あの子もあなたのお願いなら聞いてくれますよ」
ジークお兄様は優しくて、私のできない事をなんでも出来る凄いお兄様です。
ずっとお城の中にいて、私と遊んでくれます。
「そう、でしょうか……?」
「そうよ。私たち兄弟でジークが私の次にあなたを可愛がっているもの。そして私もいつでも時間がある訳ではないわよ?」
「うぅ……、わかりました」
アシュレイお姉様が一番時間があると、思っていたのがバレてしまいました。
多分お姉様が魔法を使われたのでしょう。
「お気をつけてください」とお辞儀をして、私はお兄様のお部屋に向かいます。
お兄様はこの時間はいつもお部屋で勉強しているので、今日も多分ここにいますよね!
◇
「どうかしたのか?」
「はい。お兄様に教えて欲しい事があります」
私はお兄様に魔法の杖なしの魔法の使い方を教えて貰いに来て、尋ねました。
お兄様は初めから杖なしで魔法が使えましたが、実験の為に杖を使った事もあるそうです。
「兄様も姉様も、杖が必要なくなった時は杖が不要だと感じたらしい。だからそれまで待てばいいんじゃないか?」
「いやです!」
失礼なのも分からず、あの時の私は食い下がりました。
私はもう気付いていました。
『私はお兄様たちやお姉様より凄くないんだ。』と物心ついた時にはそう感じていました。
でももっと練習したらできるかもしれない。教えて貰えば上手くなるとかもしれないって。自分にお兄様とお姉様達のような才能が無いことに気付いて、焦っていました。
「分かった。こっちに来なさい。」
私は椅子に座って考え事をしていたお兄様の元に駆け寄ります。
お兄様が向かっていた机の上の紙には、難しい言葉と数字が書かれた紙や、人の絵が描かれた紙が何枚も置かれていました。
「きゃっ、おにぃ……」
「今日は私が魔法を教える。杖が不要になる条件だって分かっているから」
お兄様は私を膝の上に乗せ、机の上の紙を片付け、新しい紙を取り出し魔法を教えて下さいました。
……あの頃はまだドキドキしなかったんだ。……いやそうだったっけ?
もう。分かっているなら初めから教えて欲しかったです。
お兄様は「メリアスにもあの人なりの教え方があるから」と言いながら、私に魔法媒体の杖が必要なくなる理由を説明して下さいました。
先についた宝石とか、循環の補助の意味だとか考えた事のないことなのに凄く分かり易かったです。
やはりお兄様は凄いです。
でも、なんで私だけなんだろう……。
◇
お兄様の言う通りやってみると、その日のうちに杖なしで魔法が使えるようになりました。
もちろん私の力ではありません。
「これはリズの練習の成果だな」
「違います! ただ、ただお兄さまが凄かったんです……」
私達はお姉様の魔法部屋を借りて練習していて、もう夕方になっていました。
一日で変わりました。
でもコレを教えてくれたお兄さまは、初めて魔法を使った時からコレができていたんです。
私はお兄さまと比べて何もすごくないです。
「いや、私は教えただけでやりきったのはリズだろう?」
「違います! 私はお兄様に手取り足取り教えて貰ってやっと成功したんです。でもお兄様は、初めから出来て、何故そうなるかまで分かっていて。私なんかよりも凄いじゃないですか!」
なんで。私はなんてことを言っているの。
せっかく私の為に一日も一緒に手伝って貰ったのに。やり方も一緒に教えてくれたのに。こんな酷いことを優しいお兄様に言ってしまって……。
ほら、言っていて私も悲しくなって、涙が出ます。
「わたしは……わたしには、お兄様みたいな才能が、能力がないんです。だから私がすごく弱くて、小さくて、どうでもいい人間に思えて、お兄様達と比べて私はどうでも良い人間と思えて……っ!
なんでも一人でやってしまわれるお兄様が羨ましいんです!」
私は頑張りました、でもいつもどれも4番目。
剣も魔法でも勝てません。
私も剣で負けるのは分かってます。でもメリアスは、私がどれだけ魔法に時間を費やしてもお兄様達はすぐに一瞬で私の実力を追い抜いてしまうと教えてくれました。
私もそうなりたいんです。でも……お兄様……。
「……お兄様? どうして泣いて……」
「かなしい……かなしくて涙がでる」
お兄様は、私よりもたくさんの涙を流していました。
「ごめんな、リズがそこまで思い詰めていると分からなかった。私は……俺はリズが産まれてから、リズが誇れる兄の一人になりたかったんだ。
モナーク兄様もアシュレイ姉様もハルト兄様も皆、素晴らしい兄と姉だろう? そして私にも妹ができて、あの方達に見劣りしたくないと思ったんだ。
でもそれがリズを傷付けていたと分からなかった。本当にすまない」
「おにぃさま……」
「でも、リズは弱くて小さなどうでもいい子じゃないよ。世界でたった一人の、私の大好きな妹のリズなんだ。自信を持つんだ。
そしてまたそんな事を考えてしまったら、また私のところに来なさい。リズがどれだけ素晴らしいのかを伝えて、ぎゅーと抱きしめてあげるから」
私が悪いのに。
喋りながら悪いのは私だと分かっていたけど、お兄様は声を絞りながら私に伝えてくれました。
「本当……ですか?」
でも私は弱いですから、多分そう思ってしまいます。
だから次からは、私も知らない私の素晴らしさをお兄様に抱き締めてもらいながらです。
「本当にごめん。私がもっとリズに優しければリズはそんな事を思わずに済んだんだ。本当にごめんな……」
「いえ、本当にごめんなさい。謝るのは私です。もう、謝まらないで下さいお兄様」
いつまでもお兄様に謝罪をさせて、そろそろ私も謝るだけでは済まなくなりますね。
それに、本当に悪いのは才能に溢れたお兄様方ではなく私ですから。
「それに違います。お兄様初めから凄いです。私がいつまでも悩んでいたことを一瞬で教えてくれたんですから」
「ーーでもリズは、自分の凄さを知らないな?」
「えっ、いやないです。私には」
本当に。私にジークお兄様達と比べて凄いところなんてないですよ……。
「リズ、今お前は6歳だぞ? 6歳の子供がそこまで考えれる事が凄いんだ。私も、お前がここまで考えていただなんて知らなかったよ」
「そう……ですか? 私は頭がいいですか?」
「ああ、私もお前の将来が楽しみだよ。いや確か、リズは私と結婚したいと言ってくれていたな。その頭の良さを発揮する機会はなさそうか?」
「あ、あの時は本気でした!」
もう、私も覚えていない話を持ち出すのは反則ですよ。 『覚えているてい』で嘘をついているとバレていないでしょうか?
でも今は、お兄様がそう言い続けて私はお兄様のお嫁さんになるんだ。と思っていますから。




