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2-19.「リズと一緒に王都観光(3)」

「これからどこに行くのだ?」



 俺がリズと話していた間に確認してた事を、ローザに説明させる。



「まずはここです。殿下」

「ん? あぁ、アレがジークハイル巨神像なのか」



 ローザは御者に指示して馬車を一旦停止させ、右側の窓の扉を開いて俺たちに説明する。



「いや、人も少ない所の様だ。降りて直接見に行こう」

「分かりました」



 ローザは御者のおじさんにこのまま留めておくように指示して

 馬車に乗っていた俺、リズ、ローザ、メルティ、アリスは馬車を降りていく。


 場所の問題なのか、ここでも交通規制しているのか知らないが、行き交う人の数がかなり少ない。

 まぁ、元々この場所の往来が多いかは知らないけど。


 そしてこの場所に置かれた神の偶像の一つを見つめて見る。



「ご存知と思いますが、この像は我が国を作り出した地母神でありながら土地神であるジークハイル神。

 その神を模して初代国王であるモナーク・フラムガル王が像、の12の複製品の1つです」

「いいかしら? 私がずっと判らなかった事だけど、何故複製品は12つなの? もう少し多い方が各地にも設置できて良いと思うのだけど」



 俺たち2人に像を説明するローザ。長年の疑問をこの機会に聞いてみた妹のリズ。

 像を見ながら説明を聞き流している俺。


 ジークハイル神は地母神。

 地母神とはこちらの世界でも母なる神という意味だけど、この像のジークハイル神には胸部に膨らみはないし、顔の彫りは深くてイケメンな男顔。


 男神なのに、母なる神。

 転生する前に声を聞いた推定ジークハイル神も声は男だったし、俺も生まれてこの方気にしてなかったしで、普通の事なんだろうな。



「私には詳しくは分かりませんが、認められた12つの複製品は王都の街に置かれるという契約だったそうです」

「そうなの」

「神との契約は破ってはなりませんよ」

「そんなこと分かってるわよ、アリスっ!」



 楽しそうに笑う妹とそのメイド。


 俺は一旦引いて、像をよく観察してみる。

 外に飾られている物だからか、デザインはシンプルで塗装もない。何の金属か俺には判らないが雨水で削られている様子もない。


 そして魔力的な視点でも別に異常性はないし、結果ただの像だった。



 別に面白みはなかったけど、リズも楽しそうだったし。

 俺たちはもう一度馬車に乗り込み、王城とは別方向の場所に向かっていった。





 もう時間もお昼時。

 昼食文化が無いこの国では、お昼ご飯はとらないので「今から外食に行こう」とはならない。


 でも、1日2食だとやっぱりお腹は空く。

 聞いた話だと、仕事が単純作業な人だとそれでも問題がないらしいが、頭を使う仕事だと間食が増えて、そして太るらしい。



 ちなみに俺の将来の仕事が単純な労働な訳が無いので、適度に体を動かしていないと太ってしまう。

 太ってる王子なんてキャラは嫌なので、俺はしっかり体も動かしているが、2人の兄のことは心配だ。


 兄達は現在離れて暮らしているので、再開した時は、領地を治めながら痩せていられるのかを知りたい。



「先程、ジークエンス殿下がオークションに興味を持たれていた様子でしたので、今からオークションの会場に行きましょう」

「今日はまだ開催されていませんが、準備はかなり進んでいるはずです」

「そうしよう」



 エルモパール商会で俺がオークションに興味を持ち、それに行けない事に悲しんでいたのが態度に出ていたらしい。

 それに配慮して、ここも行き先に加えてくれたそうだ。



「ここは王家から期間中だけ貸し与えられるホールで、貴族や商会の代表方が参加するオークションの会場です」

「かなり大きいな」

「はい。では中に入りましょう」



 さっきまで並んでいた店や家は近くにはなく、何軒もの家を合わせた程この会場は大きかった。


 壁は黒くその雰囲気は暗く。

 正面入り口は当日閉められるらしく、このオークション会場はライトな感じがしない。



 中では、数日後に控えたオークションに向けて働くここの職員達。

 受付をスルーして廊下と階段を進み、一つの部屋に出る。



「ここは貴賓席の一つです。王家の方々が御利用なさる時に使用できます」

「そうか」



 部屋からは同じ高さの他の部屋は確認できないようになっていて、正面ステージだけが見えるようになっている。

 雰囲気を体験したい俺は、部屋の椅子を持ってきて座ってみる。



「あの……お兄様?」



 何か尋ねてきたリズも膝の上に座らせる。



「えっ、お兄様?」

「どうした? ローザ達は俺の為に連れて来てくれたが、空の会場で出来る事は少ないな。ゆっくり話でもしよう」

「わ、分かりました」



 事実、会場内では職員が忙しなく働いているだけで特別な事は起こらない。

 でも、ローザ達が予定に追加してくれた場所なので長居するか。



「お兄様は、今回のオークションで何か欲しい物が有るのですか?」

「いや、目当ての物はないな。ただ行くきっかけが出来たから興味が湧いただけだ」

「そうですか。私がお兄様の代理として参加も出来ましたが……」

「それは駄目だ」



 同じ方向に座らせていたリズだが自分で向きを調整して、対面した向きで俺を下から覗き込むようにして尋ねてくる。


 別に、マグヌスの言っていた目玉商品の奴隷が欲しい訳ではない。

 そもそもそんな事しなくたって、王子である俺ならなんでも手に入るさ。


 ただ、俺にはオークションが魅力的だっただけだから。

 まだ小さな子供の妹をこんな場所に送ってまで、欲しい物なんて俺にはない。



「あの……」

「さっきからどうした? 話したい事があるなら私が話を聞くが」

「お、お兄様に『お願い』があります!」

「『お願い』?」



 さっきからずっと「あの……」とモジモジしながら、話を切り出せずにいる妹のリズ。

 尋ねてみると、俺にお願いがあると。



「お兄様が、私とまた『約束』をしてくれると、馬車の中で言って下さいました。」

「あぁ。もうそのお願いを決めたのか?」

「はい!」



 3年以上待ってくれていたリズを置いて昨夜、俺が先行して城下に降りてしまったから、リズが考えた別の約束をしよう2人で決めた。って話だ。

 3年以上待たせた挙句に、仕方ないとはいえ破ったんだから罪悪感があった。それの贖罪というかお詫び。



「あの、あの……また、お兄様のベッドで一緒に眠りたいです」

「ーーリズ、どんな『お願い』でも聞くつもりだったが、お前も後数年で成人なんだ。兄とはいえ男のベッドで一緒に寝るなどいけないだろう」



 リズは決まった相手がいないとはいえ、まだ小さな女の子だ。

 何も起きないとはいえ、将来兄と一緒に寝た思い出なんて邪魔なだけだろうし。


 ついでに言えば俺には許嫁という決まった人が居るので、その人を放って妹と一緒に寝るというのは誰も許可しなさそう。



「お願いですお兄様。私の三年を一晩で、一夜で清算致しますから」

「絶対にやめておいた方がいいと思うぞ」

「いいえ。絶対に後悔しません。私が後悔したなら私の頬を強く叩いて頂いても構いません」

「ーーいい加減にしろ」



 3年間。俺には一瞬で記憶もない期間待ち続けた彼女を無視した行動を取ったんだから、お願いなんてなんでも望むところだ。

 それでもな、



「私は可愛い妹の頬を、喜んで叩くような人間ではない。だがリズのお願いはよく分かった。また時間を作って、夜私の部屋に来たらいい。

 しかし、自分で自分を傷つけようとする言葉はもう吐くな」



 さっきから、腕を回しながら抱きついてお願いして来たリズは、今少し涙目になりながらまだ俺を見つめている。



 言葉と口調に注意して諭したけど、やっぱりまだ可愛い子供だ。

 もう一度俺に抱きついて、胸に顔を埋めて来たので、そのままさすってやる。

 泣くほどではなかったみたいだけど、仕返しなのか胸を頭でグリグリとしてくるので、一旦離す。



「なんだ、もう笑えているではないか」

「いいえ。これは無理に笑ったんですよ。」

「いい笑顔だよ。まだこうしているか?」

「うん。」



 顔を離したリズは自然なニヤケ顔をしていた。実はリズのこの表情は初めて見る訳じゃない。

 まあ、それでも可愛い顔なんだけど。





 そんな訳で、俺の膝に乗りながら背中や腕に抱きついてきたリズだが、

 俺も途中で暇になってリズに抱き返したりしてたのだが、流石にそれも1時間を超えるとお互い暇になり眠ってしまった。



「痛っ、少し膝が痺れたな」



 何時間眠っていたか分からないが、でも倒れかかって寝ていた妹は落としていない。


 部屋の中を見回すと、俺の声に反応したのか一緒に来ていたローザとアリスが椅子から立ち上がる。

 メルティは立ちっぱなしだったようだ。



「すまない、今起きた。私はどれくらい眠っていた?」

「かなりの間眠られておりましたよ。後少しで夕食です。かなり疲れておられたようでしたので、そのままに」



 「城に夕食は遅れると連絡を送っている」と「抱き合ったままだったので椅子に寝かしたままに」と説明を聞く。


 俺が疲れたのはこの観光が初めてだらけだったからで、眠ったのは一時間あまりに暇だったからだけど。

 ローザの説明を聞くと『昨夜の疲れがまだ残っている』と思っているようで、寝かしたままにしておいたのだそう。



「帰るか。陛下は今日も一人でとるだろうが、お母様方とお姉様3人の食事というのは寂しいだろうからな」

「分かりました、ジークエンス殿下。ではリズ殿下は私が」

「いや、兄である私が彼女を背負おう」



 久し振りにおぶってあげたくてなって、リズを運ぼうとした専属メイドのアリスを止める。

 寝起きで足元がふらっとしそうになる俺を心配する待機していた3人。


 窓から外はもう暗くなっていて、俺はリズをお姫様抱っこする。

 服装的におんぶは出来なかったのだ。

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