表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/343

2-18.「召喚魔法」



「では今から、殿下にはこのモルモットと契約していただきます」



 皆の所まで戻って説明を始めるマグヌス。


 実験動物ではなく愛玩動物。

 俺は名前も見た目もモルモットなモルモットを、召喚獣として契約する。



「まずは、このモルモットの血を少し吸って、その血に含まれる魔力を循環させて下さい」

「ーー、どこから吸えばいい?」

「このくらいの小さな動物ならどこでも。人間なら、首あたりの血が良いと言われております」



 この店の店員は針でモルモットを刺して、血を少し溢れさせる。

 それを俺が口に含み、循環させる。


 血は赤色で人と変わらない味だったけど、不潔っぽくて抵抗感。

 ま、やらないと進まないので気にしてない風に飲んだけど。



「次は反対に、魔力を循環し手を切って血を出し、モルモットの口に挿して血を与えて下さい」



 用意されたナイフで浅く指を切り、モルモットに舐めさせる。


 今まで召喚魔法なら奴隷も呼べるなんて言われてたが、人間相手にコレをやらせるつもりだったのかよ。

 女の子ならともかく、男の奴隷とは絶対に契約したくない。


 そろそろ口から指を引き抜き、店員から道具を受け取ったローザにしっかりと洗わせて綺麗にさせる。



「これで契約は完了致しました。契約主と召喚獣は互いの体液を交換し、その関係を了解する事で決定されます」

「あぁ」

「では、確認の為に早速召喚して頂いてよろしいですか?」



 その言葉に頷き、周りとの間隔をとる。


 知識としては自分も使える魔法だしであったのだが、契約が面倒で必要ないので結局やっていなかった。

 結局このモルモットも契約して役にたつかと言うと、たまにペットとして可愛がるくらい。正直忘れてしまってもおかしくない。



 俺は再度全身に魔力を回し、右手を前に出して魔法を発動させる。



「『来い』」

「ーーおぉ、現れました」

「ーー流石です。初めて見ましたわお兄様」



 魔法は成功。

 マグヌスが抱えていた俺のモルモットの召喚獣が召喚されて、俺の前に現れた。


 俺の立ち位置的に召喚前のマグヌスのの抱えるモルモットが見えていたが、召喚魔法を発動するといつの間にかいなくなり、俺の正面にいた。


 コレは、理屈が説明出来ない部類の魔法だ。

 不思議も不思議だが、今はショッピングの途中なので取り敢えず保留。またアシュレイ姉やメリアスに聞いてみるか。



「流石でした」

「そうか? まあ私には、愛玩動物を出す能力の有用性が分からないがな」

「殿下には人手不足は起こらないと思いますが、召喚魔法はその点で便利なのです。

 奴隷。殿下であれば平民でも誰も拒みませんでしょうが、好きな時好きな場所に人を出現させるのは凄く便利ですし有用です」



 昔、召喚魔法の初めての説明の内容が少し荒っぽかったので、奴隷と契約するのは考慮していない。

 だって緊急時の弾除けって感じだったし。


 でも、どこぞの誰とも知らない奴隷なら。


 俺が契約していたなら、その選択肢を使えたなら、3年前の悪魔襲撃の事件は少し変わっていたかもしれない。



「お兄様? どうかされましたか、悲しそうな顔をされて」

「なんでもない。この従魔の飼育の方法を考えていただけだ」

「契約された従魔はこちらで預かる事も可能でございます。商会には召喚獣専門の者もおりますので」



 感傷に浸ってるのをリズに気付かれたが、心配させる訳にはいかない。

 俺、切り返しナイス。


 それと割と本気で面倒なので、モルモットの飼育サービスもまとめて購入して おいた。





「召喚魔法を使える者は普通、奴隷と契約するものなのか?」

「有効に活用されている方々は契約しています。奴隷は拒めませんので」

「なるほど」



 奴隷の主人は、奴隷限定の劣化王権の様なものを持っている。

 簡単な命令のみだが、命令を強制できるしそれを使えば奴隷は拒んでも意味はない。



「召喚魔法を使えば奴隷の移動費用は魔力で賄えますし、行く先々の宿代も必要なく、召喚主がその場に赴くだけで奴隷の労働力が出現します」

「奴隷の有用性は理解した」

「では、購入してみませんか? エルモパール商会の奴隷商を紹介致しますし、数日後には王都一のオークションも行われます。どちらとも私も同行致しますが」



 どうしても奴隷を買わせたいのか、ぐいぐいアピールしてくるマグヌス。


 それ程までに奴隷が好きなのか、それとも義兄思いなのか、儲けたいだけなのか、奴隷に溺れさせようとしてるのか。

 マグヌスの思考はどうでもいいが、奴隷には興味がある。だって……



「何を言っている、ここは異世界だぞ?

 奴隷制度は文化の一つ。王子としてそれを知るのは必要な事だ」

「ーー? では、その日は私が案内を致します」

「時期を見てもオークションは参加できないだろうが、もう片方は近いうちに行けるだろう。その時は事前に連絡を送る」

「分かりました」



 俺は、奴隷の購入に乗り気だ。

 異世界人としての人生。奴隷が居る世界なら、それを体験しないでどうする。



 王都で一番、ジークハイル神仰国一のオークション。

 数日、今年は3日にかけて行われる競りで『探索者が獲得した迷宮からの戦利品』から『通常では手に入らない遠国との貿易品』『宝石』や『巨大な魔物の死骸』などが出品される、貴族ら金持ちが行うオークション。

 他はジャンル毎に別れてのオークションなどが、大々的にそれも王都で行われる期間。


 奴隷は1人買うのにも大金が必要なので、元々売れる奴隷を、より高く売る為に目玉商品として金持ち用のオークションに出す。

 売れ残りを集めて行われる大放出祭なオークションの2つがある。


 と更に情報を語るマグヌス。


 彼の、奴隷に関する知識は凄い。

 聞いてもいないのに喋り出すんだから、こりゃ趣味だよ。



 まぁ、マグヌスが語ったオークションは魅力的だったがそろそろ成人を迎える忙しい俺には、そんな時間はない。


 ーーあれ? 成人したら王都を離れるし、俺って王都のオークションに参加出来なくない!?

 ふっ。

 今気づいたか、馬鹿め、俺。





 この店での買い物はもう終わったので、次の目的地に進む。


 マグヌスの説明に当てられて俺も興奮していたのか、テンションが変だった。

 それのせいか馬車の中でも、リズは俺を心配しているようだ。


 駄目だな。

 二度もこの妹を心配させてしまった。



「ローザ、次はどこに向かうんだ?」



 さっきの事は一旦忘れて、リズと一緒の王都観光を楽しもう。



 整備された道でも、馬車の中は車輪の音が鳴っている。

 その音にかき消されないような大声で、急に喋り出したらまたリズを驚かせてしまう。

 なので、聞こえるようにリズの耳元で囁いた。


 

「一緒に楽しもうな、リズ」

「は、はい!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ