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2-17.「庶子」



「どうかされましたか?」

「いや、なんでもない」



 俺の妙な反応にエルモパール商会のクラウディアさんが、義理の母親でもあるこの人から心配される。


 この人に、言葉が自然と敬語になったのは改めたほうがいいのかどうなのか。

 俺が義理の母だと知らないていなら、この人に敬語を使わない方が良いかもしれな。

 が、母に舐めた口は聞きたくない私情を優先してやっぱり命令口調は使わずに優しく話す。


 複雑な案件を心の中で自己解決していると、手前には手が差し出された。



「これはジークエンス殿下、お会いできて光栄です」



 手を出したのは、母より前に出て俺と対面するマグヌスだ。

 マグヌスは、俺の顔に視線を留めながら握手を要求しているようだ。

 マグヌスって俺より1つ年下だったよな?



「あぁ、私もだ」



 と、手をギッと握り返して、俺を見続ける彼に目一杯両目開いて対応する。

 そんなマグヌスだが、彼に戦闘中の荒々しい面影はなく商会の跡取りと言われても分かるほど。


 2人で張り合う形になっているが別にお互いこんな事がしたい訳ではないので、2人とも視線も手も外す。



「私の、妹のチェリンです。今日は私達が店を案内致します」

「おに……案内いたします」

「任せるよ」



 『昨夜俺が突然現れて窮地こ妹を救い、その妹に「お兄ちゃん」を自称した』事はバレているようだ。

 まあ、昨夜はやった事が深夜テンションだったよな。なにせこの体で初めての夜更かしだったし仕方なし。


 しっかりと『お兄ちゃん』と言おうとしたチェリンは、俺とマグヌスの無言の圧力で止めるることに成功。

 クラウディア母が驚いてしまう。



 そしてクラウディア母、マグヌス、チェリンの3人は店内を案内しながら、俺たちを目的の一角に誘導する。


 何気にリズはまだ右手を握っていた。





「殿下の目当ての『魔法媒体の指輪』は、こちらになります」

「お兄様、凄くキレイじゃないですか!」

「確かに、杖の代わりには見えないな」



 商品を紹介してくれるクラウディア母だが、母は自分と王の関係を知られていると思ってもいないようで、気まずい。


 その紹介された商品は、復活した俺のリハビリ中毎日話し相手になってくれたリズやアシュレイ姉。

 その2人との何気ない会話の中に、この魔法杖の代わりになる指輪があったのだ。



「値段表もあるが、別にそこまで高い品ではないのか」

「魔法杖の5倍ですから、少し悩まれる方もいらっしゃいますね」

「ですが、この店を利用出来るほどの方なら買えない額ではないですし、買って帰られる方も多いですよ」



 そんな3年間の間の新商品を、クラウディア母とマグヌスが説明してくれる。


 魔法杖には強大な魔法を使う為の武器で、先端にある宝石を媒介にして魔法を使用する。

 それが指輪に嵌められている物が、この『魔法発動媒体の指輪』だ。


 慣れれば両手も空き、代わりに剣やら盾やらを持てて便利だなぁ。画期的だなあって。



「剣と魔法を両立させる魔法剣士の方々が買って帰られますが、結局は杖の方がと言って魔法杖を買われます」

「そうなのか?」

「はい。魔法杖の長さで使い慣れている魔法を皮膚の近くから発動すれば、自分の魔法で怪我をしてしまいます。

 それに気を遣っていないといけない指輪は実践には向かないそうです」

「そうかもしれないな」



 俺は魔法使用に宝石は使わないが、これを買っていく現役の探索者いわく、実践になれば宝石が有る無しで差が生まれるそうな。


 宝石は魔力を循環させる補助的な役割で、俺的には相当切羽詰まった時以外には無意味なので、関係無いものだ。



「魔法の指輪ならコチラの魔法発動系が人気です。一番人気は、使い捨ての魔力盾が出現します」

「なるほど」



 隣に複数品並んだ指輪を紹介するクラウディア母。


 でもこの指輪は3年前からあったもので、

 体の一部として魔力を循環させる必要がある先の指輪や魔法杖と違い、コレは、指輪に魔力を送るだけで発動する仕様。


 簡単に言えば難度が低く、誰でもすぐに扱える品魔道具だ。



「魔法媒体の指輪を買う。城に持って来させても良かったが、折角だったのでな」

「分かりました」



 ちょっとしたアイデアで便利になりそうな『魔法発動媒体の指輪』を購入決定。

 ちなみに、そのアイデアは思い浮かばない。





 次の商品はこの店には無いという事なので、2つ隣の店まで徒歩で移動した。


 その店もエルモパール商会らしいので、案内の3人も引き続き一緒になる。

 クラウディア母が店に招き、中のある場所まで誘導する。



「召喚魔法の従魔をコチラでは扱っております。所謂召喚獣です。危険性の無いものだけですので、安心してお選び下さい」



 掌サイズの小動物、もとい従魔。が広い部屋に種類ごとに飼われている。


 モルモットやハムスターのような見た目のものや、カエルを白い布で覆ったようなもの、トカゲに骨のように細い羽根が生えたもの。

 見慣れない姿の動物を見ると吐きそうになるが、我慢してモルモットを選んでみる。


 そこに、遠くで見ていたマグヌスが俺に近づいて来た。



「ジークエンス殿下、召喚獣用の従魔は他にもご用意しております」

「ん、どうしたんだ?」



 俺の手を引いて店の端から俺に吟味させようとするマグヌス。俺はもうこのモルモットに決めたんだけど。

 そしてもう、向こうの会話の声が聞こえない位置まで来た。



「昨夜は、本当にありがとう。アナタの言う通りに家に戻っていたチェリンは、アナタに助けられたと言っていた」

「その通りだよ」

「ありがとう。妹を、あの子を救ってくれて。 私にとって今日まで王族は憎き、母の仇だった。でも昨日知って今日考えて、まだまだ考える必要があると思ったんだ」



 俺を見据えるマグヌスは、真摯な態度で感謝の思いを伝える。


 母親思いな息子な彼は裕福だが、庶子らしく自分とは違う地位にいる血の繋がった王族は恨んでいたそうだ。

 俺の昨夜の行動は、一人の庶子の少年に何かを考えるきっかけになったようだった。



 急に俺を離されて怪訝な表情のリズが、俺たち2人に近づいて来た。

 俺は感傷に浸るマグヌスの肩を叩き、選んだモルモットを指差して尋ねる。



「アレを私の召喚獣にしたい。方法を教えて貰えるか?」

「ーーはい」



 俺たちは、他の従魔を見ていたチェリン達女性陣の方に戻っていった。

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