2-12.「浅ましい者共」
今俺は、エルモパール商会の倉庫の中の倉庫内をを広く見渡せる位置にいる。
目の前にもすぐ隣にも、今さっきまでこの娘を捉えていた奴らがいるのだが、俺が使用した『王権』により半数が跪いている。
この事から、跪いていない半分が他国の者となる。
相当馬鹿なのかどうか、王族に喧嘩を売ったのに『王権』対策が無いとダメダメな敵だ。
抱えていた娘が、手足をばたつかせて地面を探していたので床に下ろす。
この子が俺が探していた義妹なようで、捕らえられているのを助けたところだ。
「ん、ん……」
「少し目を瞑っていろ。助けに来たよ」
「ん……。あなたは……?」
「私はーー君のお兄ちゃんだ」
口調を少し優しく、
彼女に優しく声をかける。
見た目7、8才程の女の子で、病気なのか少し痩せ型で身体が細い。
ここは明かりが少ないけど、この娘の可愛い顔はよく分かった。
俺には、産まれた時から知っているリズがいるけれど『お兄ちゃん』を自称したのは初めてかもしれない。
そして知らない声に「君のお兄ちゃんだ」なんて言われて困惑する彼女。
そりゃそうだ。
「名前を聞いていいかな?」
「チェリンです……」
「初めましてチェリン。私は(うーん)、君と初めて会ったが君の兄だ」
「ありがとうございます……」
彼女の名前は『チェリン』と、先程すれ違った少年が探している妹と同じ名前。
恐らく彼女がそうだ。
警戒からか、少し怯えているような妹。
名前は流石に言えない。
いや、言った方がカッコいいし最後にカッコ付けて言おうかな?
「君の家までの道は分かるか?」
「はい。です」
「では、帰り道は教えてくれ」
「え、あうっ」
彼女を抱えて膝裏に腕を通し、首を支えてお姫様抱っこをして倉庫を出る。
そしてこの妹に家の方向を指差して貰い、そちらに向かって妹の身体に負荷がかからないようにして、ゆっくり走りかけだした。
倉庫に残る『王権』が効かなかった他国の野郎どもだが、跪く仲間にビビって動けないままの奴もいるがほとんどは俺達を追いかけてくる。
妹が怖がるので、怒号はあげないでほしい。
なので早々に撃退することにした。
「少しだけ耳と目を閉じておいて」
「わかりました……」
片手間だが、戦闘シーンを見せたくないので、耳と目を閉じてもらった。
勢い任せに突撃して来る、生き残りたちが数10人。
跳んで勢いで攻撃する敵の前に、氷結魔法で作った氷を生成し配置をし、勢い良く氷に突貫した敵たちが血を流し意識を失い倒れ込んだ。
「勝手に死んでくれるなよ。目を開けたこの娘トラウマになる」
目が見えない。
音が聞こえない。
それが怖いのか、耳と目を開きそうになる妹の目と耳を左手で押さえる。
スピードを付けすぎなかった野郎達は立ち上がって、再度攻撃を仕掛けてくる。
その視線はもう妹ではなく、俺とバックだけに集中していた。
「俺を倒して、金貨と宝石を奪い取りたい」と、コイツらはそれだけの為に妹を誘拐したのかだろう。
「大金! その大金が欲しい!」
「いや、それは私が頂くのよ!」
「浅ましい。お前達はどんな環境で生きてきたんだ? 金貨100枚。それで大金か?
王の血を引く者を誘拐したのだ。その金が使えるなんて思うな」
便利な水魔術と氷結魔法で、『氷の剣』と背中にくっ付けた『氷の腕』を作り出す。
こんな奴らの血は自らの刀に付けたくないので作った氷の剣。
氷の腕を伸ばして氷の剣を掌で握る。
一応武装し、腰の剣を抜いて攻撃を仕掛ける生き残りの生き残り。
そいつらに大きく斬り込んで、一人一人に致命傷を与える。
「愚か者供が」
魔法で作った氷の剣と腕を解除して、その場に捨てて彼女の家の方向にまた、走り出した。
遠距離からの攻撃が無かったよな。
まぁ、倉庫の近くだし二次被害的に撃たなかったのかも。
金目的の奴らが倉庫の中を荒らしていないのはおかしな事だけど、馬鹿なのは分かったのでこれから手に入る成功報酬に浮かれていたのだろう。
◇
「家はここから遠いのか?」
「もう少しです。」
人通りも少し増え、住宅街に入ったようだ。
すれ違う、誰かを探している風な大人は恐らくマグヌス少年が言っていた妹のチェリンを捜索する人達だよな。
マグヌス少年が走り回る姿も、遠目で見える。
まあ、少年とかいっているけど彼とは歳は変わらないんだけども。
実はずっと情報検索は続けていて、今しがた確認すると2人の男が怪しい行動を起こしていた。
倉庫に走り寄ってくる男。
急速にその場から離れる男。
急速にその場から離れる男は、黒幕予想本命の男でメルティが全速力で男を追っているた。
倉庫の後に、メルティの元にも向かうか。
「ここです。」
「お、もう着いたか」
「はい」
家は大きく、周りに他の家が見えない。
その扉の前で彼女を下ろして、最後に名乗る。
「チェリンちゃん。私も自己紹介をしておく。私の名前はジークエンスだ。
そしてまた君に何かあれば、『ジークエンスお兄ちゃん』の名前を出しなさい。また助けてあげるから」
最後は爽やかカッコ良さげに。
最後に握手をして、扉が開くまで見送ってあげる。
「またね」
「あぁ。またね」
◇
そのまま倉庫に戻って来た俺。
ここには俺が来るまでに何人か先乗りしていて、そのうちほとんどが倉庫の中に残っている。
敵の仲間だろう。
と、覗いたら違った。
中では、満身創痍のさっきの敵数10名vsマグヌス少年の図式があった。
彼も妹を探してココに来たのなら少しだけ遅かった。それを教える為にも、軽く介入する事にした。




