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2-10.「城下」

 城の自室を出た俺たちは、まだ明かりが多くある街の中腹を目指す。


 王都は、城の周りの区域を上級貴族や豪商専用の高層用。

 その周りを、境界線曖昧で下級貴族やそれなりに金を持っている商人達。

 更にその周りに王都で暮らす民。所謂平民が住んでいて、一部にはスラム街もある。

 そして、その外が他の領地となる。


 城から遠くなればなるほど、少しずつだが高さが低くなり、違いは少しずつだが王都の入り口から見れば王城が一つそびえる形になる。


 俺たちは、目的のエルモパール商会の倉庫がある下級貴族達の住む区域に進む。

 勿論。犯罪が頻発するスラム街は面しておらず、平民達が住むには優良な地帯にも商会の他の倉庫があるのだが、

 そこが一番大きな倉庫なので初めはそこと決めつけて向かってみる。


 しかし俺も、行ったこともない城下の知識をよく覚えていたもんだ。




 俺は、下級貴族らが住む倉庫から少し離れた区域に来た辺りで、魔法を使った屋根伝いをやめて適当な道に降りる。


 そこはまだ明かりがあり、人の行き交いも少しある。

 流石に子供の姿は珍しいが、ゼロではない。



「……はぁ、はぁぁ。殿下はこれから何処に向かわれるのですか?」

「今は、私の事を『殿下』と呼ぶな」



 さっきまで俺に抱えられながら「あー」やら「うー」とか「るー」とか唸ってたメルティだが、切らした息を整えながら俺に尋ねてくる。

 そういや、メルティにはまだ十分な説明をしていない。

 ただ付いて来いと言って、連れてきただけ。



 彼女からは常に『殿下』と呼ばれるのだが、子供がゼロではないだけで子供は珍しいし注目される。

 そんな2人が、片方がなれた敬語でもう片方は『殿下』と呼ばれてたらすぐバレてしまう。

 なら、何と呼ばせれば良いか……。



「私が王子と知れていい事はない。そうと分かってしまう『殿下』では呼ぶな」

「分かりました。……では、なんとお呼びすれば宜しいでしょうか?」



 殿下呼びを改めさせ、俺はメルティになんと呼ばせるか考える。

 王子を連想しないなら俺の名前で良いんだけども。



「私の名前は周知されているのか? 知られていても、3年眠っていた王子の名前には反応しないだろう」

「殿下は民とは関係があまり無かったですし、眠り続けていた事は隠されていました。

 偽名を使う事も考えましたが、やはり恐れ多いです」



 偽名は、思いつかないな。

 2年で名前が忘れられたならジークエンスでいい。

 また今度、しっかりした偽名を考えておこうかな?



「では、今だけは私の事は『殿下』ではなく『ジークエンス』と呼べ」

「分かりました。ジークエンスさーー」

「ーー様をつけるな。意味がないだろう」



 メルティは呼び捨てす流のに抵抗があるようで、あたふたとモジモジとしながら中々呼び捨てができていない。

 まあ、『敬称無しで王子の名前を呼び捨てにする。』なんてできる事じゃないのかな。



「わ、分かりました……ジークエンス……。」



 尻すぼみで小さくなる彼女の言い方には緊張感がないよな。

 先に目的を全部話したらよかった。





 メルティに目的を話した俺は、路地から出てくる。

 路地裏まで行くと夜は危ない集団がいるのはお約束なので、大通りから少し隠れた位置でコソコソと耳に伝えた。



「エルモパール商会の倉庫はこの先の区域だが、それを確認できる範囲の人の数は数百人程度いる。

 特に倉庫の中と外を囲むようにして、数十人の人間がいる。動きを止めているから、私を取り囲む気なのだろう」

「なるほど……」

「私と一緒について来い。広場に近づいた後にもっと範囲を広げて検索する」

「はい」



 2人で軽く状況を共有する。


 王都は魔力の源泉である龍脈が太く通っており、王子という立場の補正も相まって少ない魔力で広範囲の魔術が使える。

 本で読んだだけの知識だったけど、王城よりも広範囲の平面を対象に使うなんて、初めての体験だ。




「ーー殿下っ!」

「誰だ、この声は……」

「マグヌス殿下、戻りましょう。チェリン様は私達が探し出しますので」

「なら爺やも捜索に当たれ! 私は私で妹を探す!」



 道の少し前では少年と老人が話しており、それを聞くためにスッと路地に身を隠す。


 マグヌス殿下と呼ばれた少年が爺やと呼ばれた男に食ってかかってるのだが、彼は必死だ。

 それに『殿下』呼びされてるし。



「イルシックスとアルバータから来たこの国に居る王族の名前は分かるか?」

「いえ。王都周辺ではガーベラ王女殿下の到着は早すぎますし、小国群からの留学生にもマグヌスと言う名の王子はいません」



 彼が誰だか分からない。

 俺たちは路地から再び、倉庫を目指して歩き出した。


 彼は、服装がちゃんしていて多少膨よかなただの人族の子供だ。

 見た目の年齢も、俺と変わらない。


 『殿下』は王族に付けられる敬称だ。

 だが、彼がそれを付けられる理由が分からない。



「殿下と呼ばれる理由は分かるか?」

「……宜しいですか?」

「間違っていても良い。早く教えろ」



 彼らの姿が見えなくなった辺りで、メルティに聞いてみる。

 マグヌスと言う男も、その妹のチェリンも知らない名前なのだ。



「ーー分かりました。王子以外が『殿下』と呼ばれる理由は、恐らく庶子だからではないでしょうか」

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