2-8.「2枚目の手紙」
「殿下?どうなさいました?」
「リズの部屋に行く。付いて来い」
「は、はい! 私も同行します」
俺の部屋の外で待機していたメルティも、リズの部屋まで連れて行く。
俺とリズの部屋はそう離れていない。
全力疾走で俺達は妹のリズの部屋に向かった。
◇
「ーージークエンス殿下?」
「中を確認させろ」
「は、はい」
部屋の前に着くと、女の騎士が部屋の前で待機していた。
彼女はリズの専属騎士候補だ。
彼女に命令して部屋に入れさせる。女の子の部屋なのに、止められないんだよ。
部屋に入る前に、やっと追いついたメルティから腰の剣を奪い取って部屋に入る。
妹は居るのか、起きているか。
◇
「お、お兄様?」
「リズ! 無事か!」
「ど、どうされました?」
彼女はベッドの上で、メイドと楽しそうに騒いでた最中。
突然入って来た俺に驚き、話しかける。
彼女はちゃんとそこに居た。
悪戯ではすまない手紙だったが、悪戯で良かった。
「あぁ。少しリズの顔を見たくなってな」
「そ、それは少し嬉しぃ……」
「ん? おい、その手紙は何だ?」
「なんでしょう、アリスは知っていますか?」
ベッドから降りた、妹のメイドであるアリスが「いえ」と首を振って否定すると、俺はリズの机の上の手紙をとる。
『リズを誘拐したした事』が書かれた手紙と封筒が同じなのだ。
ナイフを用意させて封を開け、手紙を読む。
『ここに来たお前は妹の無事を確認した。
私は嘘をつかない。
お前が知らない義妹を、しかしジークエンス・リートと血の繋がった妹を預かっている。
金貨百枚と『過剰な赤色のリンダースの宝石』を袋に詰めて用意しろ。
ジークエンス・リートがエルモパール商会の倉庫へ今夜持って来るように。
内容は引き続き、王には知らせないでおけ』
手紙の内容は、
・リズではない血の繋がった妹を預かっているので、身代金として金と宝石を用意しろ。
・それを王に知らせずに俺が持って来い。
だ。
俺は、リズ以外の妹を知らない。
当てもないし、そもそも王族を名乗るのは不敬だし。
そして手紙の内容も考えてみる。
・『赤色のリンダースの宝石』は珍しい宝石じゃない。
杖の先や魔法の媒介などの、魔法媒体として一般的な宝石だ。
それに過剰に魔力が充填されている物は、その分赤色が濃くなり、扱い方を間違えると爆発も起こる。
それを欲しているという事は、宝石を爆発物にするのが目的。
爆弾として使いたいのだろうか?
・それにエルモパール商会は、この国一の商会だったはずだ。
「どうかされましたか? あのお兄様」
「あぁ、お前はもう眠っておけ。今日は特別に結界を張ってやる」
「何かありーー「いや、また明日の朝話そうか」
「は、はい。分かりましたわ」
そう言って俺は、魔術でリズ1人分の結界を張って彼女の安全を確保する。
俺がここでリズの安全を守り続けるのは無理だけど、もしリズ以外のものが干渉すれば俺にも伝わる仕組みになっている。
というアシュレイ姉が作った魔術だ。
あの手紙は、誰がかは知らないが俺とリズの部屋に用意された。
王子と王女の部屋は、容易には入れない。
だからそこから、この悪戯の本気具合が見て取れるのだ。
「名前も書いてないのか」
「殿下、部屋に戻りましょう」
「私の部屋にサーシャを呼べ。話さないといけない事がある」
手紙を俺に渡すように言ったサーシャには、聞かないといけない事が沢山ある。
この手紙は、リスクと成功報酬が釣り合っていない。
金貨100枚&宝石と、王女誘拐の手紙の危うさとじゃスケールが違いすぎる。
庶民感覚なら大金なのかもしれないが、馬鹿げた話かもしれない。
だけどこの手紙が本当で、
たった金貨100枚と袋一杯の宝石で、今まで知らなかった妹が救えるなら持っていくべきだ。
俺の安全面は、歩けるんだし心配はない。
まずは助ける事を優先する。




