1-5.「今日の予定は?」
「モナーク兄さまは、はじめは何をしましたか?」
「私は、陛下に王権の説明を受けたよ」
「私はメリアスに王権のことを聞かされましたよ?」
「あら、私と同じだわ」
紅茶を飲みながら、兄姉たちが談笑している。
俺の今日の予定の話かと思ったら、いつのまにか思い出話になっていた。
俺も『やることがたくさんある』らしい。とは聞かされていたけど、何をするのかは知らないから気になる。
「そうね。ジークの予定はどうなのかしら?」
談笑しているのを見ていた母が壁際に立っているメイドの1人に話しかけた。
「はい。メリアス殿から『朝食後にジークエンス殿下の自室に伺う』との事です」
「そう」
「はい。午後からの予定はありませんが、夕食前に陛下が『王権の説明をする』と仰らています」
「分かったわ。ありがとうミア」
俺の今日の予定を話し終えたミアは、壁際に戻っていった。
『ジークエンス殿下』とは俺のことだろう。
これまで呼ばれていた『ジーク』はニックネームか。
ミアが戻っていった壁際には、たくさんのメイドと執事が立っている。
そしてミアは他のメイドとは違って、メイド服ではなくドレスを着ていたので、ミアはメイドではなくて、もっと偉い人なんだろうか。
「美味しかったわ」
母が紅茶を飲み終わり、壁際にいたメイドや執事が近くに寄ってくる。
椅子が引かれるので立ち上がり、開かれた扉から出て行く。
◇
兄2人に続いて俺。その後ろに母と姉が話しなが付いて来ている。
「では母上。私とハルトは外に出てきます」
「分かりました。ですが、あまり下には降りてはいけませんよ?」
「分かっていますよ。ちゃんと騎士を同行させますので」
兄2人は外に出て行った。
ここの外か。3歳の幼児にはこの家も大きな世界だが、早くこの世界。この家の外も見てみたいな。
昼寝していなかったらまた、連れて行ってもらおう。
「ねえジーク。また、私の魔法を見てくれるかしら?」
「はい。見せてください」
「ふふ、それは嬉しいわ」
兄2人がいなくなったタイミングで姉がそう言ってきた。
魔法には興味が湧くので、また時間を作って見せてもらいに行こう。
姉と母と別れて、黒髪おばちゃんと一緒に俺の部屋に戻る。
さっきから心の中でずっと、黒髪おばちゃんって言ってるけど、名前を聞いたほうが良いな。
金髪の人ばかりだから、『黒髪おばちゃん』は分かりやすいくて良いとも思うけど、それだと話しかけられない。
部屋に戻ったら聞いてみるか。