2-5.「朝食と、復活のへの1日目」
父は大まかに説明すると仕事へ戻っていった。
会話の内容は、
・我が国の少数精鋭の部隊が『魔界の魔人の
国』を壊滅させたが、3年前に城に乗り込
んだ奴らは発見できなかった。
・そもそもの防御面は結界を強くして、王に
しか扱えなかった城での防衛策を、王権を
振るえる全員が扱えるようになった事。
・イルシックス王国との国交は継続し、俺と
モナーク兄の婚約はそのまま。
そしてモナーク兄は結婚して旧都で一緒に暮らしていて、
許嫁のガーベラ王女の名前は幼名で今は別の名前らしい事。
と。さっき説明された事を思い返していたが俺は、用意された自分用の朝ご飯に関心が移る。
時間的にはいつもの朝食の時間と変わらない頃。俺専属の執事であるミゲルが、朝食を乗せてカートを引いて入ってきた。
注目すべき内容。スープは分かるが、このゼリーみたいな物は見たことがない。
◇
朝食は、勿論口移しだった。
まあそもそもの理由が、俺が木製のスプーンではちゃんと食べれないからなので、何もいえない訳で。
喋れてはいるが、喉に物を通すのは慣れていないって事だろうか。
2人のメイドが俺用の味の薄いスープを、固形物の代わりのゼリー状の食べ物を自らの口に含み、スープは冷まして俺の口に移してくれる。
俺は彼女たちの事を心配する。
幼い頃から側にいるから知っているが、彼女達に決まった男はいない。
だから、俺がファーストキスになっているのだろう。
無意識の俺で、キスに慣れている彼女らに少し申し訳なくなってくる。
なんだ? 嫁。あるいは妾の席でも狙ってるのか?
仮にも上級貴族の家の娘だ。それ目的で当主は送り込んだのだろうが。
まあ、扱いが下がる妾はつくる予定がないので、この介護で責任問題になれば、彼女たちは形だけでも嫁にしようか。
貰い手も無くなるだろうし。
俺は第三王子だ。
将来は、施政者の枯渇したこの広大な国のどこかの一領主だろう。
次の王になるモナーク兄に負担をかけない為にも、そのくらいの好き勝手はできるからな。
俺の為に献身的介護をして嫁の貰い手がなくなった少女を、無下にする気はない。
貴族社会の結婚で、純真さは重要になるからな。
「この3年間。お前達には何か報いたいな」
「お気になさらず、殿下」
「私たちは、殿下が明日も目覚めて下さるだけで嬉しいのですから」
「その言葉は嬉しいが、それで終わらせる気はない」
目線を正面から扉側の壁に向ける。
食事を持ってきたミゲルは、壁側で突っ立ったままだ。
妹が、主人とはいえ口移しで介護してるのは見れないよな。
ミゲルには何か報い付けてやるか。
俺だったら妹を連れて国を出るかもしれない状況だし、、まあ、彼女が嫌がっていないだけマシだけども。
この3年の間に、国に入ってきたか作られた物だろうけど、朝食はそれと水分だけ。
お腹タプタプにならない程の少量で、それでも少し感じていた空腹感が満たされた感じだ。
変なの。
◇
起きて食事を取るだけで疲れる程に、衰弱貧弱ぶりな俺は、そのまま寝付かずにリハビリを始める事にした。
「朝食はスープは美味しかったが、もう一つはお前たちの味しかしなかったな」
「え、……ぇと。うぅ」
「うぅ。私の……。」
「あれは元々、味が付いていませんから」
「そうか」
ローザもサーシャも言葉が言葉になっていない。
顔を赤らめて会話にならなかった2人の代わりに、ミゲルが説明する。
彼は、食事のカートを外に出すと外の使用人に任せたので、ずっと部屋にいる。
更にしばらくすると、軽装だが戦闘可能状態の専属騎士候補のメルティが入ってきた。
俺が目醒めてすぐなので、彼女を連れ回す予定がなくても毎日護衛に来る。
そして今の俺の部屋にはメイドと執事が、ローザ。サーシャ。ミゲルの3人。
更に護衛のメルティで計4人いる。
「今から体を動かす為の訓練をするが、その為の計画書や予定表は用意しているか?」
「あ、ありますよ殿下。国の精鋭が計算した体を動かす為の計画書です」
「ですが、今日は眠らなくて大丈夫ですか?」
「疲れたが、眠い訳じゃない。そもそも今起きたばかりだ」
サーシャは言葉で、ローザは計画書の一番上を見せて説明する。
「メリアス様とアシュレイ殿下、リズ殿下が予測されていた『魔法が使えなくなる』事の治癒法もありますね。
魔法は数日で、体は数10日で元に戻ると書いてあります」
「見せろ」
俺の腕は動かないので、ローザにページをめくらせて確認する。
計画書のページ数は思ったよりも多い。
数10枚に渡り、彼女達の研究結果が載っている。
アシュレイ姉とリズとメリアスが、俺がもし目覚めた時の為の計画を立ててくれていて嬉しかった。
「なるほど。流石は姉様たちだ。だが、俺の体の機能はもっと高いと思うのだが」
「ジークエンス様。殿下の魔力や魔法が、眠っているあいだに変化したとも書かれていますね」
「それは検討が付いている。そしてまずはそこからだ。1日で魔力を通し5日で立ってみせよう」
計画書の内容を知っている彼女達は驚くのだが、出来るだろう。
「これには徐々に体力をつける前提だ。姉様たちの優しさだろうが、魔力で体内を刺激すれば、5日で立てる」
「た、確かに殿下なら可能でしょうが……」
「立ち上がる為に書かれている事も必要な事も5日でやれる。しっかりと計画書は役に立つぞ?」
「う、うぅ……む」
アシュレイ姉たちは、これを俺を心配しながら書いたから毎日に猶予ができる予定が入っているのだ。
その好意に感謝しつつ、全身に魔力を循環させる。
巡る速さは前とは段違いに遅いし、成長期なのに魔力が大して増えていない。
魔法の源である魔力が減ってないし上々。
ある程度、魔力が体を循環したので、自分の体全身に『強化』の魔術をかける。
「うッ……ッ!?」
全身の体の操作を、筋肉から魔力に変える。
いや、正確に言えば魔力で筋肉の補助をするのだ。
右腕を動かしてみるが、無茶な行為なので普通に痛い。
軽く呻きながら全身を動かした。
当然、すぐに動けなくなるが、自身に魔術をかけてその痛みの感覚を癒す。
前世の麻酔とは違い、感覚が鈍らないのだ。
体が動かない間に全身に魔力を行き渡らせ、新しい部位を含めて体を動かす。
魔力が循環すれば、様々な魔法が使えるようになる。
計画書にあった筋肉量の調整の魔術などを使い、初日は体がボロボロになったけど頑張った。
簡単な『強化』の魔術でも使い方次第なのだ。もう献身的な介護はさせないぞ。
後、数十日も介助生活は嫌だしね。




