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2-4.「3年間の情報更新」

 あの後はぐっすり眠れた。

 俺に自覚はなかったが、ずっと動かした事がなかったこの体は疲れたのだろう。



「「おはようございます殿下」」

「あぁ、おはよう」



 寝起きの俺に、ベッド脇のローザのサーシャが朝の挨拶をする。

 寝過ぎで頭痛がある訳でもなく、良い朝が来た。


 相変わらず、俺の全く動けない体は急に動き出したりする事はない。

 2人と軽く話しをしながら、着替えさせられる。



「2人で大丈夫なのか?」

「はい。ですがあまり動かないで下さいよ」

「年々慣れてきましたからね」



 かけられていた毛布をどかして、俺の寝間着を脱がしていく。

 そもそも服は脱がせやすいようになっているようで、背中を浮かす必要がない横ボタンになっている。

 下は特殊なものではない。

 だが2つともモフモフしてて通気性を悪くないと感じる。


 それと、起きた後聞いた事だが

 ズボンの下の処理は、使い捨てのオムツだそうだ。

 下半身の感覚でしか分からないが紙オムツじゃない。

 いつもの下着より柔らかい毛糸のパンツ感だ。恐らく材質は違うだろうけど。


 こんな事を3年も続けていたのか。

 流石メイド。

 だが、そんな事を2人の女の子にやってもらわないといけない恥ずかしさが問題だ。

 着替えだけならいいけど、流石に排泄の手伝いは恥ずかしいだろうっての。





 今から、食事を終えた父と話をする。

 着替えたと言っても、服装はさっきとほとんど変わらない快適さ重視の病人用だ。

 とても王と一対一で話す衣装じゃないが、父からセッティングしてきたので、気にしない事にする。


 ベッドの脇にいるサーシャは、俺に説明をする。



「陛下は直々に、殿下にこの3年間の事を説明なさります」

「なにも、書面で送ってくれれば読んだんだがな」

「直接話されたい事があるのでしょう」

「殿下。お越しになられました」



 サーシャから説明を聞いていると、ローザが口を挟む。

 どうやら来たようだ。





「おはようございます」

「ああ、おはよう」



 屈強で見た目から強そうな騎士を連れた王。俺の父が入って来た。


 あの騎士は、近衛騎士で幼い頃からの仲なんだっけ。

 少し前、数度打ち合ったがかなり強かったのを覚えている。

 名前はブラッドリー・ファイン。

 騎士爵の最高位の、伯爵の爵位を持つ騎士だ。

 そのブラッドリーは窓側の、俺のベッドの右側に立っている。



「私がお前に、直接3年間の話を聞かせよう。そのまま聞いておけ」



 メイドの2人に支えられながら、俺は父の言葉を聞く。



「お前の奮戦により、セシリアとアシュレイの命は助かった。

 だがセシリアとお前の怪我は酷く、お前に至っては全治した後も眠り続けたままだった」

「……」


「そしてあの直後、報復の為の遠征部隊が組まれた。

 モナークも、ハイルハルトと共に訓練して部隊に参加した。

 我が国の魔法師団長と選抜騎士と、選りすぐりの戦士数10名で西の国にある魔界に攻め込んだ。

 そこでの戦果は上等のものだった。

 少ない犠牲で敵を倒し、モナークやハイルハルト達は帰還した。

 召喚獣が機能したと聞いている」



 召喚獣って、俺も召喚魔法をもっと使えるようになってれば!

 と言うか、あんなに強い悪魔を倒したなんて凄いな。



「あの国の城の中は、その全てが魔人だった。遠征軍が倒したのはその中の数人だけだ。城の大きさと一階の人の多さから100人を超える魔人がいるだろう」


 城の中が全部魔人って、メイドも執事も貴族も主人もみんな肌が黒いと言うことか。

 改めて、これまでの記憶と身近には黒い肌の人間がいない。

 白かベージュ。

 褐色すら、俺は見たことがない。



「だが、その中にお前が見た3体はいなかったな。恐らくあれは奴らの斥候部隊。

 お前達を無力化する力がある、戦闘能力のある3体だったのだろう。

 そしてもうあの国は壊滅状態だ」


 まあ、実際殺しにきてたし。

 その力がないと意味ないしな。

 

 それと、報復はなされたのか。

 復讐リベンジの機会はなくなってしまったな。

 父はそこであの日の話を終わらせた。



「結界は、あの日より強固な物とした。

 そしてもしもの為に、お前達の王権で王宮内の緊急装置を使用可能にした」

「緊急装置ですか?」

「王宮内での緊急事態に、戦闘に必要な武器を用意する為の装置だ。また、アシュレイにでも聞いておけ」



 護衛や専属メイドでも、人がいるところでは話せないのか、今教えてくれそうにない。

 またアシュレイ姉に教えてもらおう。



「そして、イルシックス王国との関係だが、オリンポス公爵に記憶は残っていた事で国交は途絶えずに済んだ。

 モナークの結婚は1年伸びたが、今は旧都で一緒に暮らしている筈だ。

 そしてお前の婚約もそのままだ」

「ガーベラ王女ですね」

「『ガーベラ』という名は儀式に使う幼名だそうだ。今の名前は本人から聞くといい」

「分かりました。ありがとうございます」



 俺が寝ている間に父は王として、王の仕事をやっていたのか。

 やりたくないな。前世の知識も相まって大国の王なんてやりたくない。


 そして旧都ってのは、解体された旧エルレント公爵家の事だ。

 王家に反乱を起こそうとしたが、王権の前に破れた一族として歴史に残っていた。

 その時代は成り上がりも多く、その中で唯一味方に裏切られない国としてジークハイル王国は大きくなったという。

 騙し討ちしようとしたら返り討ちにされた感じだ。


 更にさらに、俺の許嫁の話だ。

 ネタバレなしで嬉しい配慮だ。お父さん。

 ガーベラって幼名なんだね。姉のベルベット殿下と同腹のはずの2人で、幼名の有る無しが違うのか。


 それにしても、3年前も起きない男とよく婚約解消しなかったなと思う。

 一生起きないかもしれないのに、それを知らなかったのか?

 なら彼女はまだ、この国に来ていない。って事なのか?

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