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1-49.「デッドエンド」

※場所、世界観、人物などが違いますが続きです。

 俺の名前は相良(さがら) (りん)

 中学生から続けていた優等生を高校でも継続して、生徒会に入っている。


 高校生1年目。登下校は汗だくで、自転車で片道1時間30分かかる。

 偏差値が高い高校で、クラスメイトは皆やる事は勉強ばかり。

 他の社会勉強にかまけてた生徒は、両立して部活を頑張ってたけど怪我で退学した俺の友達が最後で、男も女もガリ勉だ。



 家は貧乏でも無いが、父の仕事の都合上で都会に住めていない。

 今は夏。窓の外からセミの鳴き声が聞こえる。


 どんどん不安定になる世界で将来が不安で、最近の本気で楽しかった事。なんて考えてしまう客観的な自分がいつも嫌だけど、それでも楽しく毎日学生をやっている。

 という、

 今の、どこにでもいる普通の高校生だ。



 家族構成を紹介しよう。

 16歳の俺は黒髪ショートの燐。

 1年下の可愛らしい年子の妹で、ストレートとボブの中間な髪で、黒髪の14歳の理沙。

 そして父と母の、相良 玄と麻理子。

 祖父祖母は、それぞれ両親の故郷の実家に住んでいて、年に数回合う程度だ。


 徒歩数分の場所にある駅から電車で20分程乗れば、貯まったお小遣いを散財できる程度の大きな都市に出る。

 だが普段は街の中で事足りるし、若者だって十分に楽しめる。

 だから基本の移動手段は母と父の車であり、電車なんて年に数回程度しか使わないのだ。





 だがその日は両親共に車を出して貰えなかった。

 大きな花火大会を見に行く毎年恒例の行事に、今年は両親の都合が合わなかったのだ。


 俺の友達は数人だけ。

 最近は合わないし、携帯の連絡ツールのグ ループも家族と生徒会と個人と少ない。

 妹の友達は、少ない俺の3倍程度。

 集まって遊ぶような関係じゃない俺と違って、妹は去年まで毎週のように、部活終わりに遊んでいたのに、こういうイベントは家族と一緒に楽しむのだ。

 俺と違って、反抗期なのに親離れしない子だな。

 母は少し心配しているように見える。



「今年もメイちゃん達と行かなくてよかったのか?」

「いいの。いつも一緒の芽衣達より、お兄ちゃんと一緒に行きたの」

「俺も、家で夜は一緒にいるだろうに」



 兄離れも心配な妹だ。

 俺の通っている高校に入学すると言って、勉強を頑張っている。

 俺的に、上位の成績で入学出来そうなくらいに頭がいい。今日は休憩も兼ねて半日遊ぶのだ。


 ちなみに、妹の友達達は近場の高校を選ぶらしい。

 妹も含めた彼女達曰く、「『オタクの友情は、そう容易いものじゃないわ』」だそうだ。

 昔の俺の影響からか、妹はアニオタだ。

 ゲームも兼ねたいが、受験勉強で時間と頭の容量がないので将来の予定だそうだ。



 会場には、浴衣を着て電車で向かう。

 通行規制で車は途中から通れず駐車しないといけないので、駐車場もそれが原因でほとんど空いてない。


 会場の、河川敷の広場には8割が人。

 屋台とそれに並ぶ人。

 土手やその上から、友達や彼氏彼女と騒ぐ人。

 レジャーシートを敷いて、花火を待ちながら夕食をとる家族。


 俺と妹は、駅の途中にあった惣菜屋さんで唐揚げやポテトフライを買ってから向かった。

毎年恒例の、馴染みの惣菜屋さんは会場の法外な値段より少し安い。

でも、会場でも買うんだけどさ。


 揚げ物をまとめて、主食の焼きそばを買ってレジャーシートを引ける場所まで歩く。

 前の方では、それぞれ団体やらクラブやら学校の部活やらが、花火が始まるまでの夕方の時間に演技やらをしているらしいけど、毎年あり恒例で興味はない。

 後ろの方は、まばらに場所が空いていて2人じゃなくても座れただろう。



「お兄ちゃん、口開けて」

「ん? あぁ、ありがとう」

「はい。あーん」



 腕で俺の腕に巻き付け、油分を落としたポテトフライを一本あーんしてくれる。

 妹は可愛いし、嬉しそうにやってくれるし  で嬉しい。が、妹だ。

 妹の態度が、本来兄にするものじゃないけど、少し嬉しくなってる俺もいる。

 妹は、ぼけーっと生きている俺が精力的になる存在だ。





 いつもは夕食後に、アイスとかき氷を買いに行くのだが、今日は2人。

 妹は1人にはさせられないけど、シートが無人になってしまう。

 あ別に良いか、高い物も無いし。と、落ちている石を重しにして、買いに行こうとすると。



「あれ、理沙じゃない?」

「本当だ。彼氏なの? 誅すべし」

「いや、彼女は世間一般のリア充ではないわ。ただのブラコンよ!」

「な、ななぬ!?」



 会場の賑やかさの中、後ろから姦しい女の子達のの声が聞こえた。

 腕を絡めてた妹は、驚いたように機械のように振り返り、俺も聞き慣れた声に振り返る。


 そこにいたのは妹の友達の3人。

 少し前までよく家に来てたから、顔と声は覚えている。

 「あ、お兄さんこんばんは」と俺を覚えてた子と夜の挨拶を交わす。

 いつも楽しそうな笑顔の彼女が確かメイちゃんで、幼稚園からの幼馴染だったはずだ。

 あわあわと、それでも腕を離さない理沙。

微笑ましく楽しそうな妹を残して、かき氷とアイスを買いに行った。





 夏の解放感と場の雰囲気で、人は変わる。

 いつもは遠巻きでつるんでるだけの男達が、少し勇気を持てる季節なのだ。



「お、俺。ちょっと話しかけてこようかな?」

「お、おう。行ってこい!」



 離れた位置から、しゃがんで話している妹達をみる男達がいる。

 あかき氷とアイスを1つずつ買った俺は、それを止めに入る。



「やめておくといい。あの子達はあんたの友達にもなる気はないから」

「え、……誰なんでーー」

「俺の連れなんだ。話しかけてこないでくれ」



 呆然と、固まったままの男を放って妹の所に戻る。

 妹が告白にYESと答えた試しが無いので、事前に断っておいた。

 俺の身長と見せかけの威圧で追い払える小者だ。夏のチンピラなんかに遭遇して、妹とその友達が気が悪くならなくて良かった。


 妹の友達も、1人が持って来ていたシートをひいて、お尻を付けて話している。

 さっきの子達に1人2人増えていて、この子達もよく家に来てたっけな。


 妹の所に戻った俺達は、付属のストローのスプーンで1つのかき氷とアイスを分ける。

 妹の友達がまじまじと見てきて、あ。コレは恥ずかしいわな。



「1人で食べるか?」



 首を振って否定する妹。

 素直なのも妹のいいところだ。


 そして時間。花火が上がる。

 ソロソロと、シートを片付けて土手の方に移動した妹の友達がいなくなり、また2人になる。

 かき氷とアイスを2人で分けながら、説明アナウンスと交互で始まる花火ををずっと見ていた。


 また腕を絡めて、もたれかかってくる理沙に応じてやる。

 兄にベタベタ過ぎるし甘えん坊なところは、またいつかなおせばいいか。





「ふぅ。面白かったね、お兄ちゃん」

「ああ、綺麗だったな」


 1時間程続いた花火も、大きな落ちる花火から大迫力の乱れ打ちになり面白かった。

今は立ち上がって、人が少なくなるのを待っている。

 相変わらず腕は絡まったままだけど、満面の笑みでよかった。

 初の受験で夏休みはほとんどずっと勉強していたから、少し思うところがあっても楽しんで欲しかったんだよね。


 ゆっくりと荷物とゴミをまとめて俺たちも駅に向かう。

 あ通行規制があったのは大通りだけで、別の道は車はよく通るので、信号機の問題で人はあまり進まない。

 1年で1番の交通量がある歩道を話しながら進む。


 信号の色が青に変わり、進む。

 もう後ろには数人しかいない状態だ。

 2人で横断歩道を渡ると横から大きな音がする。信号待ちをする車の後ろから。

 ガキガキ、ガチガチ、ドンドンと何かと分かった時俺は横の骨董品な車を見る。


 もう時間がないなと判断して、俺は緊急で妹を横断歩道から戻した。

 変な音を立てていた車が後ろから段々と押され、目の前の自動車に俺は飛ばされる。

息苦しい。


 大きなトラックなら即死だってあり得たが、ぶつかってきたのはビンテージ感のある小さい自動車だ。

 人間にぶつかってその部分がひしゃげている。

 妹を救えてよかったな。





 最後、俺はその衝撃が死因で死亡した。

 確か、そんな記憶だったはずだが、全て思い出したぞ。

 呆気なく、幸せの後に死んだ俺は、そのショックから記憶がないまま、流れるように転生させられて次の世界の人生を送った。


 ジークエンスとして生きている間は、俺は前世の記憶がないままだった。

 そしてまた死んだんだっけか、どうだったっけか。

 懐かしの記憶だったな。

 終わりはデッドエンドだけど。



「お前は、死んでいないぞジークエンス」



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