1-47.「洛陽(6)」
俺は、右斜め上からの大きく斬り込む。
それに反応したダエーワは、折れた剣の刃を叩き折り、左目だけ視線を俺に向けた。
刃は全て落ち、体と同じ色の剣は斬り落とされた部分が伸びた。
今度は金属の刃は付いていない。
だが、その剣での対応は間に合わないぞ?
しかし、ダエーワは作り出した剣を動かすことなく体が揺れる。
そしてその黒い体から、人間達が溢れて来た。
剣は止まる事なく溢れ出る人間を斬るが、それを囮にしたダエーワはこの隙に、氷の壁に向かって走り出す。
何かの召喚魔法なのか、剣と同じで作り出したのか。
どうでもいいが、ダエーワを止めなければならない。
その為に、襲いかかってくるこの黒い人間達に対応する。
◇
氷結魔法での、全力の空気氷結。
一瞬で肌が痛くなるような温度にまで下がり、空気が水になり氷になる。
魔術では時間のかかる行程を一瞬で行う魔法の芸当。
作り出した氷で黒い人間を押しのける。
が、その黒い体に触れた魔法は消えた。
作り出した氷は、体に吸収されたのだ。
踏み出そうとしていた一歩目の右足で全身を止め、その体勢で伸びている右足の、足元からの氷を動かして軽く後ろに飛んだ。
『作り出した人間達はダークマターなのか?』と考えるが、貫通したでもなく透過したでもないのだから、これは恐らく正解で、対応策はこの2本の剣だけとなる。
見直したら、黒い人間達って結構人型なだけで見慣れない形のやつもいるし、
ダエーワと違って簡素に人形のように、関節の分け目にしか線がなく、顔にも服にも線がなく、単調な影しかない。
そして数は10人程度。
「そう。例えば住民の内。敵を喰らう牙の者」
相変わらず言葉足らずで意味不明だ。
俺が両手の剣で2人の黒人間に斬りかかるのと、ダエーワが氷の壁に斬りかかるのはほぼ同時。
俺は2人を斜め方向に斬り落とし、ダエーワは俺の視界の端で氷の壁を斬りつけた。
「なに!?」
「あんな刃が付いていない剣で?」と思ったが、対応策に頭を回すには反射の言葉以上は言葉にできない。時間の無駄だから。
いや、中途半端に刃を付けていないから、見た目ダークマターから作られた剣は俺の魔法を斬ったのか。
クソぅッ!
全員斬り殺しながら進んで、間に合うのか!?
◇
容易く俺の氷の壁は壊された。
「ひいっ」
だが、それに反応できるのは母様の体を押さえるローザのみ。
母様は血を出さない体勢のまま、苦痛に体を揺らさずに耐えており。
下を向いて、うつ伏せになる母に回復魔術をかけるアシュレイ姉は、俺が来るのを待ちながら歯をくいしばる。
開いた氷の壁の中で、ダエーワは剣に刃を付けて走る。
狙いはアシュレイ姉だ。
それを知っているのに、足を止めずに斬っているのに間に合わない。
アシュレイ姉は俺を待っているはずだ。
恐らく壁の中の3人全員が、すぐそこにいるダエーワに気付いている。
が、悪魔の剣は振り下ろされた。
しかし、最後に振り絞られた力の方が速かった。
セシリア母は、自分を回復していたアシュレイ姉を押し飛ばし、代わりに斬撃を受けた。
◇
アシュレイの代わりにセシリアを殺して しまって驚く悪魔。
固まった悪魔は、思い出したように飛ばされたアシュレイ姉に攻撃を加えるが、今度は俺が間に合う。
今まで生きてきて、1番力が入った蹴りで悪魔を吹っ飛ばす。
「貴様ァアッ! よくもお母様をッ!」
怒りの力で飛ばしたそれは、氷の壁を破り地面に剣の刃を突いて体勢を整える。
一瞬で体勢を直したそれに、突進して斬りつける。
外に繋がる扉の前での攻防だ。
攻防といっても、怒りの剣は悪魔を斬り続けるほとんど一方的な攻撃。
肩の関節部分を斬り、腰の足の生え際を斬り、胴体の真ん中の心臓部分を突き、追い詰める。
母を斬りつけてから、敵が弱くなったのか俺が強くなったのか。
もう勝負はつき、最後は返した剣で斬りつける。
「少々、遅すぎたなダエーワ」
「とどめを刺したら、戻りますから」
殴られたように飛ばされた俺は、そのまま氷の壁の中のみんなのところに飛ばされる。




