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1-47.「洛陽(6)」

 俺は、右斜め上からの大きく斬り込む。


 それに反応したダエーワは、折れた剣の刃を叩き折り、左目だけ視線を俺に向けた。

 刃は全て落ち、体と同じ色の剣は斬り落とされた部分が伸びた。

 今度は金属の刃は付いていない。


 だが、その剣での対応は間に合わないぞ?


 しかし、ダエーワは作り出した剣を動かすことなく体が揺れる。

 そしてその黒い体から、人間達が溢れて来た。


 剣は止まる事なく溢れ出る人間を斬るが、それを囮にしたダエーワはこの隙に、氷の壁に向かって走り出す。

 何かの召喚魔法なのか、剣と同じで作り出したのか。

 どうでもいいが、ダエーワを止めなければならない。

 その為に、襲いかかってくるこの黒い人間達に対応する。





 氷結魔法での、全力の空気氷結。

 一瞬で肌が痛くなるような温度にまで下がり、空気が水になり氷になる。

 魔術では時間のかかる行程を一瞬で行う魔法の芸当。

 作り出した氷で黒い人間を押しのける。


 が、その黒い体に触れた魔法は消えた。

 作り出した氷は、体に吸収されたのだ。

 踏み出そうとしていた一歩目の右足で全身を止め、その体勢で伸びている右足の、足元からの氷を動かして軽く後ろに飛んだ。


 『作り出した人間達はダークマターなのか?』と考えるが、貫通したでもなく透過したでもないのだから、これは恐らく正解で、対応策はこの2本の剣だけとなる。

 見直したら、黒い人間達って結構人型なだけで見慣れない形のやつもいるし、

 ダエーワと違って簡素に人形のように、関節の分け目にしか線がなく、顔にも服にも線がなく、単調な影しかない。

 そして数は10人程度。



「そう。例えば住民の内。敵を喰らう牙の者」



 相変わらず言葉足らずで意味不明だ。

 俺が両手の剣で2人の黒人間に斬りかかるのと、ダエーワが氷の壁に斬りかかるのはほぼ同時。

 俺は2人を斜め方向に斬り落とし、ダエーワは俺の視界の端で氷の壁を斬りつけた。



「なに!?」



 「あんな刃が付いていない剣で?」と思ったが、対応策に頭を回すには反射の言葉以上は言葉にできない。時間の無駄だから。

 いや、中途半端に刃を付けていないから、見た目ダークマターから作られた剣は俺の魔法を斬ったのか。

 クソぅッ! 

 全員斬り殺しながら進んで、間に合うのか!?





 容易く俺の氷の壁は壊された。



「ひいっ」



 だが、それに反応できるのは母様の体を押さえるローザのみ。

 母様は血を出さない体勢のまま、苦痛に体を揺らさずに耐えており。

 下を向いて、うつ伏せになる母に回復魔術をかけるアシュレイ姉は、俺が来るのを待ちながら歯をくいしばる。



 開いた氷の壁の中で、ダエーワは剣に刃を付けて走る。

 狙いはアシュレイ姉だ。

 それを知っているのに、足を止めずに斬っているのに間に合わない。


 アシュレイ姉は俺を待っているはずだ。

 恐らく壁の中の3人全員が、すぐそこにいるダエーワに気付いている。

 が、悪魔の剣は振り下ろされた。


 しかし、最後に振り絞られた力の方が速かった。

 セシリア母は、自分を回復していたアシュレイ姉を押し飛ばし、代わりに斬撃を受けた。





 アシュレイの代わりにセシリアを殺して しまって驚く悪魔。

 固まった悪魔は、思い出したように飛ばされたアシュレイ姉に攻撃を加えるが、今度は俺が間に合う。

 今まで生きてきて、1番力が入った蹴りで悪魔を吹っ飛ばす。



「貴様ァアッ! よくもお母様をッ!」



 怒りの力で飛ばしたそれは、氷の壁を破り地面に剣の刃を突いて体勢を整える。

 一瞬で体勢を直したそれに、突進して斬りつける。


 外に繋がる扉の前での攻防だ。

 攻防といっても、怒りの剣は悪魔を斬り続けるほとんど一方的な攻撃。

 肩の関節部分を斬り、腰の足の生え際を斬り、胴体の真ん中の心臓部分を突き、追い詰める。

 母を斬りつけてから、敵が弱くなったのか俺が強くなったのか。

 もう勝負はつき、最後は返した剣で斬りつける。



「少々、遅すぎたなダエーワ」


「とどめを刺したら、戻りますから」



 殴られたように飛ばされた俺は、そのまま氷の壁の中のみんなのところに飛ばされる。

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