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1-46.「洛陽(5)」

 あの悪魔は、危機感はないのか? 抱いているか?


 俺たち全員に向けていた視線を、俺だけに向け直す。

 俺だけに注目を集める事が出来て、これはいい。望んでいた展開だ。

 十分に勝てる。


 あの悪魔は俺の剣撃に対応するに精一杯で、負傷したセシリアお母様にも、その傷を本気で維持しているアシュレイ姉様にも、非戦闘員の専属メイドのローザにも意識を向けさせずに勝利する。

 その後に俺も母様の傷の応急処置に加わる。

 これで完璧だ。


 俺の得物は2本の剣。

 城の固い壁をぶち破って今ここにある剣だ。

 だが少しだけあった違和感が、すごく大きくなっていく。



「今の轟音を聞いても誰も来ない。1人で来たわけではないからな」

「なんだ? お前の仲間は、城の騎士や兵士を無力化して回ってるのか?」

「そう聞いている」



 抑揚の感じられない声が特徴な悪魔はそう言う。

 なんだ、仲間がいるなら尚の事速攻で倒さないといけないじゃないか。


 それに保険をかける。

 水魔術と氷結魔法を使い、後ろの3人の女性の周りを氷の壁で囲む。

 氷結魔法が、先天性の魔法である俺ならではの手法だ。

 氷の壁は戦闘に参加できない人たちを保護するのだ。

 悪魔は単体で攻めて来たわけではなかったと自白してしまってるし有用だ。

 なんなら最初からやってれば良かったな。


 戦闘に集中できる環境は整えた。

 そして思考を整える。

 悪魔ダエーワの仲間は再度眠らせているのか、殺しているのか知らないし。

 情報は悪魔からだが、とりあえずの防御も出来た。

 今から魔法が効かない相手と戦うし、全力で魔法を使用した。

 当分魔法は使わないと踏んでいるが、状況がそうでなくても後ろの家族だけは守る。と決めているので、強固な壁にしていたろう。





 二刀流の利点は手数が増える事。

 だが、まだ11歳の子供の身体では、将来振るう剣を2本は安定しない。

 別にいいさ。無理矢理にでも使いこなすから。


 俺はダエーワに向かって駆け、右手の姉の剣で横殴りに斬りつける。

 それに跳ね剣で対応した悪魔に、左手の自身の剣で、横に振り斬りつける。


 跳ね上がり、空中で最初の攻撃を防いだ悪魔はそのまま剣を引き抜き対応しようとする。

 だが悪魔の剣は、俺の右手の剣の攻撃を防御する為の剣だった。

 擦り合いから抜け出そうとする悪魔の剣を、角度を変えて調整して斬り折る。


 俺の2回目の攻撃に対応しようとして、俺の1回目の攻撃の最後に対応できなかった。


 そのまま左手の剣は悪魔の身体を斬る。

 が、悪魔は高速で手を動かし、身体を上下半分に斬り終えられる前に間一髪後ろに下がる。



「ふぅ……ううッ!」



 大きく唸るような声を吐いて、斬られながらもギリギリを保った悪魔。

 だが、次で終わる。

 正面に踏み出し、斬った傷めがけて左手の剣を振る。


 悪魔の黒い身体はそのまま上下2つになる事なく、超至近距離で鋭利な水が、顔の前から発射される。

 その水は形があるというより、速さに殺傷能力があるのだ。


 体格差から、俺を狙う為に下を向いて放たれた超速の水分は、俺の左横の腹を擦る。

 そんな展開予想していなかったので、苦痛なんて準備していない。

 すごく痛い。

 その痛みに一瞬動きが止まったようで、空いている左手で殴られ、飛ばされる。

 俺は、自ら母様や姉様の防護のために張った氷の壁にぶつかった。


 どこにアレだけの力が出せる体重があるんだよ。



反省と改めだ。

・俺の魔法が一切効かないが、悪魔は魔法を使用可能。

・そして使う魔法は、適確に殺人をする為のようなものだ。

・殴りの威力もかなり強い。

・武器の破損は大した損害でないと見ていい。



 だがそれでも、悪魔の身体は半分ほど斬られている。

 見た感じ、再生は無いし苦痛も感じている。

多分、人間がああなったらあんな痛がり方ですまないだろうけど。


 痛みを振り切ったように、悪魔は全身から先と同じ水を高速噴射する準備をする。

 見慣れない黒い肌が、もう忌々しく感じる。


 噴射された水を、走りながら避ける。

 だが、その水は俺を追ってこない。

 そのまま壁を撃ち続けていたのだ。

 恐らく、氷の壁を削って中のアシュレイ姉を狙うつもりなのだろう。

 そんな事はさせない。


 走る体を、そのまま方向転換。

 再度右手の剣で悪魔に攻撃を仕掛ける。

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