1-33.「8年後。最後かもしれない戦い」
俺は、城から出たことがない。
理由は、自由に外出できる時間があまり取れないから。
王子としての礼節と知識。剣技と魔法も、全てを会得した。
それは、俺自身が成長していっている感覚があって嫌いではない。
でもそろそろ、城の外に降りてみたいものなので、約束はしているんだ。
目覚めた日。あれから8年経つ。
◇
目覚めると、目の前には可愛い女の子がいる。
白い肌に青い眼と整ったパーツ。銀色の髪が漏れた日差しで輝いている。
さっきまで寝ていた俺を、見つめている専属メイドのローザは寝起きの俺と見つめ合い、挨拶をする。
「おはようございます、殿下」
「あぁ、おはよう」
それに答え、ローザの手を借りて起きる。
ベットから足を下ろし、かなり大きくなった寝間着を脱いで服を着る。
ちなみに全てをメイドがやる事なので、やらせている。
この部屋。俺の寝室には他にもメイドがいる。
部屋の中で一番歳上の婆やは、朝起きた俺に「おはようございます、殿下」と挨拶して着替えをさせている。
俺の着付けをするミゲルとサーシャの兄妹。
ついでに、日替わりで変わる室内の兵士2人も合わせて、この部屋には計7人いる。
「今日は、久しぶりに何もなかったよな」
「はい。予定は埋まっておりませんが」
「久しぶりの暇か」
腕を服に通して、ローザに予定の確認をする。
もうすぐで、王位継承権第1位のモナーク兄が成人する。
人族の成人年齢は15歳。人族しかいないこの国としては、年の初めにその年に成人する者が歳をとって成人する。
まあ、次の国王の成人式なんだし、大きい規模で行われるのだ。
なんだかんだで見れていない。城下の様子が描かれた絵をみて、模様の意味を知った絨毯の上を歩きながら食卓へ向かう。
ちなみに、絨毯の模様には魔術が組み込まれている。
専属メイドと執事を連れて、食卓の部屋に入る。
先に座って待っていたのはモナーク兄だけだ。
最近は緊張感からなのか、モナーク兄が一番乗りな事が多い。
「おはようございます、モナーク兄さま」
「おはよう。ジーク」
俺と一緒に来ていたメイド達は壁際に移動し、モナーク兄の2つ隣の席に座る。
モナーク兄の隣にはハルト兄が座るのだ。
「ジーク、お前は今日予定はあるか?」
「いえ、今日は何もありませんが」
「そうか。そうなら、真剣で戦わないか?
成人すると急に忙しくなるのでな。お前が、どれだけ強くなっているのか知りたい」
「はい。分かりました」
静かな空気の中モナーク兄と戦う事になった。
これまでにも、何度もモナーク兄とは戦だのだが数度しか勝てていないのだ。
それは別に俺が弱いわけではない。
剣技の講師は何人も用意して、その全員天才だと言うくらいに、俺には剣技の才能がある。
自分でも才能があるのは自覚しているし、もはや国有数の剣士なのも知っている。
でもモナーク兄も強い。
振るう剣技は魔法。
戦闘においてこと最強。その1つ『軍神の右腕』。その名の通りの能力で、あの魔法には剣で勝てる気がしない。
でも俺だって強くはなっているんだ。以前も何十回もやって、数回は勝てている。
モナーク兄はこれから、時間を作れなくなるかもしれないので、真剣に楽しもう。
そこにアシュレイ姉、ハルト兄、セシリア実母、ステイシア義母、リズ妹にリート・モルガン父と、全員揃って朝食を食べる。
8年前と比べると量も種類も増えた。
朝食だとそこまで変化はないが、夕食だと料理の種類の多さから、貿易が始まったことが分かる。
この国は一代前『魔人騒動』。つまり父の時代に、国も王宮も結構危なかったので地元の名産品から、ここ最近で復興してるんだなって分かるよ。
食後、他の3人の妹弟に俺と同じ話をして盛り上がった。
リズ妹ことリズリーもそれなりの剣の腕だ。
8才ながら、さすがは王族。
と言っても、一番強いのはモナーク兄なのでみんな『今日こそモナーク兄さまに勝つぞ!』と本気だ。
今日の次にある今度は、いつになるか分からない。
第1王子で王位継承権第1位の、成人してしまう兄に勝つ為に。
最後まで勝たれて、そのまま再戦できないってのだけは本当に望むところじゃないからね。




