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8-13.「王の結論、悪魔の独白」

※ この話は主人公(ジークエンス)視点ではなく、三人称です。

ジークエンス王子から送られた通信文は、無事に王城まで届く。

機密保持の為に暗号化されている通信文はすぐさま解読され、その文言は国王へ届けられた。


『旧都領の村及び、侯爵領へ向かっていた馬車を強襲した悪魔を捕縛。尋問を遂行した。

 結果、悪魔がジークエンス王子を狙う理由を話した』


『理由は以下の通りであり、ジークエンス王子も自身の見解を述べている』


『ジークエンス王子は魔界の脅威となる力を有しており、このことを知っている悪魔の中に王子を脅威として排除したいという考えがある』



 解読された手紙には以上のことが書かれており、読了した国王はこの見解に溜め息を吐いた。

 その後、信頼のおける二人の部下を招集した。





 招集されたのは宰相のヴァン・レッサー・アルレイド。

 及び、魔法師団長の一人であるクレイグ・ハルキースだ。


「この文書を読んでみてくれ」


 国王は、彼等を呼び出して早々に本題へ入る。

 その本題とは送られて来た通信文の文言についてだ。


「成る程。この話が本当ならば、恒常的に殿下を襲って来る悪魔共への対応策として考慮すべき内容です。情報の信頼度は皆無といえましょうが」

「えぇ。故に、悪魔がこの情報を我々に流すことで起こそうとしていた事は容易に想像できます」


 どうやら王子から届いた尋問結果は、国王の忠臣である二人にしてみれば"怪しい情報"に思えるらしい。

 また、国王も両名と同じ見解だ。


「悪魔は、私達にジークエンス王子の存在を危険視させたかったのでしょう。我々が対処不可能な魔界から脅威だと扱われる存在として。

 しかし王子が不当な扱いを受けるということはあり得ない。陛下や、神の言葉がそれを許さないでしょうから」


 それが三人の共通した意見であった。





 場面は王城から変わり、フラムガルルーツ侯爵領のハウンズの都市から数時間の距離にある森。その中にひっそりと隠れる建物の中だ。


「ああ、私は、同胞だと名乗った奴らに使われていたのか……合点がいった」


 魔界でも自慢だった己の魔力を抑制する鎖に繋がれた悪魔の捕虜は、呟いた。


 彼は有益な情報を喋るように促されていた。しかし故郷を売ることはできず、その思いは今尚変わっていなかった。

 故に、これはただの独白だ。白状した訳ではない。


 そしてこの独白を、悪魔の様子を監視している担当官は咎めない。

 むしろやっと話す気になったか。と、呟きに耳を澄ませる。


「人間の技術で作られた枷など時間稼ぎにしかならない……だと云うのに、何故私は喋ってしまったのか、その理由が今、分かった。

 喋ってしまったのではなく、喋らされたのだ。

 その方が都合が良かった。だから私は、捕らえられる直前に知ったあの情報を喋ったのだ」


 そうだ。彼は悪魔ダエーワに、いいように使われたのだ。

 極限状態の最中にその情報を仕込まれ、無意識の内に仕掛けられた魔法が魔術かのせいでその情報『だけ』を喋ってしまったのだ。


 そして悪魔ダエーワの思惑もまた、国王がジークエンス王子を危険視する事がないことから失敗している。


「名前が本物か偽物かはどうでもいい。恨むぞ、ダエーワめが……」


 たいして水分が与えられないせいで掠れて、枯れ枯れになったなけなしの声で叫んだ。

 その小さな声は独房で僅かに響き、担当官が聞き取っただけに止まるのだった。




 その後、名前すら話そうとしない悪魔は何も話そうとせずただただ黙り続けた。

 担当官は本日の悪魔の様子を文字にして、それをエンヴォーク伯爵に送った。伯爵経由で領主のジークエンス王子にも届くだろう。


 『悪魔の独白』以外にたいした進展はなかったが、その独白は唯一悪魔の口から語られた言葉として一言一句書き留められている。

 その文言から得られる情報を元にエンヴォーク伯爵やジークエンス王子、更には国王は悪魔を最大限利用することだろう。


 モナーク王子及び、ジークエンス王子を襲った報いとして殺すべきか。

 あるいは解決法が見出せていないジークエンス王子の安全性確保の為に使用する、魔界との交渉の駒とするべきなのか。


 それはこの地の領主であるジークエンス王子や、国王が決めるべき判断だ。


 そのどちらでもない悪魔の担当官は、翌日に予定している尋問について考えながら監視の役目を別の担当官と交代して眠りに着いた。

 担当官は、一つの地域に一人しかいない領主や国王などと違って三人もいるのだ。

※次回更新は、10/17(土)です。

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