1-30.「旅団剣舞」
昼寝から覚める。
いつものようにメイドたちに着替えさせて、夕食を食べに食卓へ向かった。
「行くぞ」
食事を終えて、モナーク兄について俺たちは部屋を出る。
夕食には父と母はおらず、2人の兄と姉と俺。使用人と護衛たちの団体で部屋に向かう。
◇
扉が開かれて部屋に入る。
この城の玄関ホールくらいの大きさの部屋で、一階層下には剣を下げた老若男女が整列していた。
大きくて足のつかない椅子にちょこんと座る。下の階見える。
「ジーク。今からお前の騎士候補を選ぶが、選んだ者がお前の騎士になれるかは分からない。だから気になる者がいれば俺に言うことだ」
「はい」
モナーク兄の言う通りで、選んだ子が怪我をするかもしれないし、そもそも強くならないかもしれないので俺の騎士になるかは分からない。
騎士候補だ。
ちなみに座っている場所は、真ん中にモナーク兄、左側に俺とアシュレイ姉。右側にハルト兄で後ろにメイドたちが数人だ。
すると子供。というよりも幼い幼児たちが、2人グループで間隔をとる。
彼らの姿勢は上半身に力が入っておらず自然体で、曲剣を持っている子もいたが、大抵の子供は体の大きさにあった短剣サイズの剣を持っている。
そして腰に下げた剣を抜き、大人の剣士の合図で始まる。
「気になったやつがいれば言うように」と言われたので、端から幼い子供たちの剣技を見下ろしてみる。
剣を持って立体的な動きをしているのが面白いが、体がぶらついていたり。剣筋がぶれぶれだったりで、気になるやつはいなかった。
剣技も初めて10日ほどなので、どの子に潜在的才能があるか分からない。
剣舞って楽しみにしてたし、カッコいい技でも見たかったのになあ。
これで本気なら、気になるやつはいないし
もう、見た目で選ぼうかな。
そう考えていると、遠くで一礼してモナーク兄に話しかけている男がいた。
「モナーク殿下。よろしいでしょうか」
「お前は……団長か」
「はい。この度はジークエンス殿下の騎士候補選抜に選んでいただき、ありがとうございます」
「それは先程聞いた。どうした?」
「はい。ジークエンス殿下は、下の剣士たちに気になる者はいないようなので、私の娘を御紹介に……」
「冗談か? 女を弟の騎士にしようなどと」
モナーク兄とこの旅団演舞の団長は知り合い。というかさっき会っていたようで、
父親の後ろに隠れていた子供が見える。父親と同じ、黒髪の可愛い女の子だ。