1-20.「剣の才能」
あれから、一緒に紅茶でも飲みながら、メリアスの話を聞き流している。
「フル・バーディ卿、よろしいでしょうか?」
「ええ、いいわよ」
白い鎧の少し老いた騎士が、俺に頭を下げてからメリアスに話しかける。
「『今日の予定は完了した』との連絡で参りました」
「少し早いでしょう? 殿下には相当な才能があるわ。それに理解力が素晴らしいですね、流石は殿下という感じだわ」
「なるほど、そうですか。次は剣を振るいに行きましょう」
理解力が高いなんて、耳が痛い話だ。
とりあえずメリアスの言葉をスルーしながら、椅子からおりて白い鎧の騎士と一緒に剣を振りにいった。
でも、この騎士は話を変えるのが下手だな。
◇
移動した場所はさっきよりも綺麗な場所ではない。地面に緑はないし、遠くから金属音が聞こえる。まあ嫌いじゃない。
ちなみにメリアスは付いてきていないが、婆やは付いてきており、数人の武装した騎士やらがいる。
「では、これを。体に合った大きさの剣を用意させて頂きました。殿下にはこの剣を振って頂きます」
俺に短剣サイズの剣を渡した騎士は、俺の前で右に向き直り、用意してあった材木を周りの兵士たちに用意させて、剣を構える。
右手に持った剣を正面上に掲げて、そのまま左下に振り下ろす。
何の力みもなく振り下ろされた剣は、用意された材木を綺麗に斬り落とした。
「では、私のやってみた通りに殿下も、斬ってみて下さい」
向き直った騎士は、俺にも剣を振ってみろと言う。そして周りの兵士が、さっきよりも細い、大人の指サイズの木を立てる。
剣が当たる近さまで近づき、さっきの騎士のように剣を掲げ、力を込めずに騎士と同じ軌道で振り下ろす。
「シュッ」と風を切って、斬れた。
あれくらい細い木なら、力を込めなくてもちゃんと斬れるようだ。
切り口も綺麗に斬れている。
「素晴らしいです。やはり王家の才能は素晴らしいですが、ここまでとは」
うーん、そんなに凄い事なのかな?
魔法は、1回で出来ちゃって凄いのは分かったけど。剣は、細い木を切ったのが凄いっていうより、騎士と同じことをしたのが凄いってことなのかな?
騎士の動きで、目に付いたところを全部真似しただけなんだけど。うーん。まあ、凄いのかな。
周りの騎士やら兵士やらからも「おおー!」っと歓声と拍手が起こる。大袈裟な。
ちなみに、俺の中での騎士と兵士の違いは、鎧やら武器やらで騎士っぽい方を騎士と呼んでいるだけだ。
「殿下の才能は分かりましたので、今から殿下が『将来振るう剣』を見に行きましょうか」
持っていた短剣サイズの剣を騎士に返し、将来俺が使う剣を見に行くことにする。