1-19.「魔法と魔術(3)」
神殿を出た俺は、そのままメリアスに続いてある庭に出る。
すぐそばに、紅茶でも飲みながら庭を鑑賞出来るテーブルがある。
そこの椅子に俺たちは座り、お茶は出されないまま、説明を始める。
「魔法は生まれ持った力であり、才能です。生まれつき強力な魔法を持って生まれれば、それをすぐに強力な魔法を使いこなせることも出来ます。ですが、
魔術は別です。簡単な魔術から習い、会得なければ強力な魔術は使えません」
「うん」
「ですので今日からは簡単な
基本属性の『火、水、風、土』と、
行使の『強化』魔術を教えます」
そう言うと、メリアスは手のひらの上に宝石のようなものを置いて、そこから火を出してみせた。
「殿下もやってみますか? 基本の魔法は感覚だけで出来てしまう事もあるので」
俺の手のひらにさっきの宝石を乗せて、火を出すように促す。
そうすると、さっきメリアスが『何か』が伝わった時と同じ感覚になる。
「この感覚が『魔力が流れる』感覚です。その宝石が媒介となって魔力を循環させていますので、火を出すイメージを持って下さい」
感覚で出来てしまうらしいが、どうすればいいのか。
試しに、流れているらしいこの『魔力』を手のひらに集めて……
「さすがです、殿下」
「うん」
とりあえず、感覚だけで火が出ている。
真上に伸びているのだが、かなり熱くで火傷しそうだ。
流れている魔力を元に戻すと火は止まる。
調子に乗った俺は、さっきメリアスが言っていた『水、風、土』を試してみると、『水と風』イメージ通りに宝石から出たが土は現れない。
「『土』はこのように、地面の土を動かしたりする魔術ですね。この魔術を極めれば、即席で家が作れたりします」
多分そんな予定は無いと思うけど、生活が便利になる魔法なのかな?
『火』は火を出して、『水』は水を出して、
『風』は風を起こし、『土』は地面を操る。
魔法なのか。よく分かったよ。
◇
「次に強化です。強化は文字通りにその物を強くします。では、先ほどの感覚で自分の指を硬くしてみて下さい」
さっきの宝石をテーブルに置き、言われるままに、魔力を右手人差し指に集めてみる。
すると、柔らかい子供の指で1本。右手人差し指だけが硬くなった。成功だ。
「さすがですね、殿下」
また感覚で成功した俺をメリアスが讃える。
そして「最後に」と切り出して話し出す。
「自分の体の強化は魔法の基礎です。
『自分の体の強化』は、自分の体を無意識に理解しているから出来ることであって、
強化するものが『他の物』『魔法』「他人』などに変わると、それだけ難しくなります。
ですが殿下には、言葉を理解し、それを魔法にできる才能があるようですので、明日からも色々とお教えしようと思います」
今日はここまで。メリアスは今日の魔法を終わらせる。
簡単な魔法でもなかなかに奥が深いようで、魔法を学ぶのは結構楽しい。
明日からも魔法を学ぶのが楽しみだ。
俺たちに付いてきていた婆やがお茶を用意していて、庭を見ながらお茶を飲む。
そしてメリアスは、さっきと同じ話を繰り返し話してくれた。