1-1.「目覚めまして異世界」
目覚めると、目の前には黒髪のおばちゃんがいた。
目覚めて初めて出会った人物だが、キチッとしていて清楚だが頼れるおばちゃん感がある。この人がヒロインなんてことはないだろう。
「おはようございます。殿下」
そう言うと寝転がったままの俺を起こして、かけられていた毛布を畳み始める。
近づいてきて分かったがこのおばちゃんはかなり大きい。
それと『殿下』って呼ばれてたけど、聞き間違いかな?
◇
布団から降りて、まずはこのおばちゃんに話しかけてみる。
「あー、あー。なあ、今日は」
「どうかなさいましたか?」
言葉も喋れているし会話もできる。
後は自分が誰なのかを知りたい。
「今日は、なにか予定はあったか?」
俺は誰なんだ? なんてストレートに聞いていいもんじゃない。そんな事をしたら『殿下、どうなさったのですか?』なんて敬語で心配されるそうだ。
だからまずは間接的に、まずは自分が誰なのかを知る。それがこの世界転生一日目のノルマだ。
「はい。今日で殿下も3歳になりましたから、今日はやることがたくさんあると聞いていますよ」
「3歳?」
俺って3歳だったのか。
だから、おばちゃんが大きく見えたのか。
そして殿下呼びは聞き間違いじゃなかった。どうやら、
俺は、高貴な3歳児みたいだ。