表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
196/343

4-27.「今日の予定を追加する」

 微睡みから覚醒を自覚して両眼を開ける。

 ベッドの近くにはいつも通りローザとサーシャがおり、婆やとミゲルも部屋の中に居ると確認した。

 勿論今朝の彼女たちは全員メイド服と執事服だ。


「おはようございますジークエンス殿下」


 彼女たちの挨拶に応えベッドから起こされた俺は流れる様に椅子まで促され、5分もかからない間にいつもと変わらない服装は着替えた。

 俺の今日の予定は『悪魔との契約』の採血だけだったっけか。


 そして朝食へ向かう為に俺は部屋を出て、ガーベラ王女の部屋へ向かった。

 普段なら先に執事が部屋前におり俺がそこまで来ると彼女が部屋から出てきていたのだけど、今朝はガーベラ王女とメイドのレイランと騎士のフルマルンも既に廊下で待っていた。


「おはようございますジークエンス様」


「おはようございますガーベラ様……では朝食へ向かいましょうか?」


 毎朝同じ行動をとっている同じはずなのに、差し出している手もそれをとる手も辿々しい。

 互いの顔を見ると恥ずかしくなって視線を落としてしまう。その原因は昨夜婚姻が結ばれた事だろう。


 理由が分かっていても気恥ずかしい。

 そして婚姻が確定する明後日までこんな雰囲気なんだろうと、共に食卓の部屋へ向かう際あまり話せなかった事からそう思っていた。


 だけど意識して話をしようと本日も『赤を基調とした彼女のドレス』の事を話すと、彼女も意識して喋ってくれた。

 気づけば緊張も晴れたので良し。

 部屋に着いた俺はアシュレイ姉様やリズに声をかけてから着席する。


「お兄様! 昨夜の舞踏会は何をされたですか? 私、どのような雰囲気であったかすごく気になります!」


 ガーベラ王女を挟んだ隣の席に座る妹のリズからだ。


「ガーベラ様やローザたちと踊り、アシュレイ姉様が教えて下さった参加者たちと話しをしたり、あとシントレア酒というお酒も飲んだよ」


「舞踏会は楽しかったのね。嬉しいわ」


 簡潔な答えだがリズはワクワクとした様子のままだ。まあ、詳しい内容は3年後にある自身の成人式に確認してほしい。

 そして、今のアシュレイ姉様の口振りから『お姉様が昨夜の舞踏会に関わっていたのか?』と考えると姉様は微笑みで答えてくれた。


「昨夜は本当に楽しかったです。感謝致しますお姉様」





 そんな感じで俺たちが話を続けていたら母様たちと父様がほぼ同時に入室し、席に着いた父様の合図で朝食が出される。


 メニューはいつもと変わらないパンとステーキとスープに、見慣れない肉料理。

 そして昨晩はシントレア酒が代わりだったので出されなかった紅茶だ。


 それらを3.40分程度時間をかけて完食し、少し懐かしく思いながら紅茶を啜る。執事が注いだ2杯目以降の紅茶を味わいながら、俺は全員が完食するのを待った。

 そして父様が最後に食事を終えると朝食は終了だ。


 近頃は一緒に朝食を取ってくれるけど父様は忙しいので早々に退室し、いつもなら母様たちもそれに続いて部屋を出る。

 しかし本日は俺とガーベラ王女を見ているだけで、まだ立ち上がらない。


「昨夜はおめでとう2人とも。2日後が楽しみね」


「おめでとうジークエンス、ガーベラ。結婚式の日が今から楽しみね。


 ニコニコと笑顔でそう言った母様たちは立ち上がり、息子から感謝の一言を聞くと笑顔のまま退室していった。

 昨夜あの場にいた者だけしか知り得ない『婚姻』の話だろう。


「私からもおめでとうと伝えておくわね?」


「うーん。おめでとうございいます?」


 心を読んだか読むまでもなかったかアシュレイ姉様もその事に気付き、微かに勘付いた程度のリズと一緒に退室した。


「……私たちも戻りましょうか」


「は、はい」


 母様たちの他、お姉様やリズにも祝われて顔を赤くするガーベラ王女。

 『婚姻を結ぶ話』は全員の前でしていたし、そのうちリズも思い出すだろうなんて思いながら彼女とその手をとった俺は自室へ戻った。





「今日も大事な予定がありますので、それを終えてからガーベラ様の部屋に伺います」


 朝食のあと、父様から何の言葉もなかったという事は予定の追加はないという事。

 そして大事な予定とは今日行うと決めていた採血の事で、1時間もあれば終わるだろうこと。


「分かりました。それまで私は部屋で本を読んで待っております」


 俺は見送る彼女と別れて自室に戻る。


 俺の他にメイド3人に執事が1人と騎士が1人。

 取り敢えずソファーに座った俺にローザが近付き、話す。


「殿下。先日のオークションで落札された品が届いておりますが如何致しましょうか?」


 先日のオークションの品々……確か『宝石が届いたら俺が直接贈りますから付けて見せてほしい』と頼んだんだっけ。

 それが今届いたか。


「今から部屋へ運び入れなさい」


 今日の予定に一つ追加だ。

 一緒に先日のオークションに参加したガーベラ王女とアシュレイ姉様とリズに宝石を手渡しで贈ろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 転生者だからといって 達観してるわけでもなく かといって 子供過ぎるわけでもない 立場からか何時も 冷静でいようと努めてるけど やはりそこに相応の喜怒哀楽という 感情を出してしまう そんな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ