1-18.「魔法と魔術(2)」
「殿下、右手を出してください」
メリアスの言う通りに、右手を前に出す。
小さな手だ。
メリアスは俺の掌を広げて、握る。
「私の魔術で、殿下の魔法を確認できるようにします。殿下の魔法が何なのか、分かったら教えてください」
「ああ」
そう言うと、メリアスは目を閉じる。
メリアスが触れている手から、『何か』が俺の掌に伝わっている感覚がある。
その伝わってくる『何か』が、
手のひら、腕、小さなこの体全身に、伝わる。
「どうでしょう。何かそれらしき単語が頭に思い浮かびませんか?」
「浮かぶ」
『何か』が伝わりきり、頭に言葉が浮かぶ。
「『氷結魔法』『召喚魔法』『残機』」
「3つ。私と同じでかなり多いですよ。『残機』がどんな魔法か分かりませんけど」
俺にも何か分からない。その単語が思い浮かんだだけだから。
「では、分かる方の説明をしますね。
まずは『氷結魔法』
これは水を凍りつかせる魔法。で、
空気中の水分を使うことで、氷を作ることが可能です」
メリアスがそう言いながら、氷を出してみせた。
いつでもどこでも、氷を出せるなんて便利な魔法だ。何に使えるかは分からないけど。
冷たそうに、指先で氷を持っている姿は可愛いな。
「魔法といえど、無理に氷を作るのにも限界がありますので、無茶をせずに直接水から氷を作る事から始めます」
その空気中の水分が、どれくらいあるか分からないけど、そこから無理矢理に氷を作る魔法が氷結魔法なのか。
「『召喚魔法』はもっと簡単で、
契約した生き物や、そこらの小物を手元に召喚。呼び出す魔法です」
「わかった」
「人間との契約は取りにくいものですが、殿下ならば、喜んで志願する者もいる事でしょう。
しかし、武装した兵士を、緊急に呼び出すのと、動物や奴隷を呼び出すのとでは『魔力』の消費具合が違います。
殿下には専属の騎士もつきますし。将来は、騎士や兵士よりも、奴隷を契約される事をお勧めしますね」
奴隷って今まで見たことがないけど、騎士とか兵士と比べてるって、それっていざの時の弾除けって雰囲気じゃないか。
物騒だなあ。
嫌なので、とりあえず奴隷と契約するつもりはない。
まあ弾除けじゃないなら奴隷にも興味があるから、見てみたい気はするな。
それに、誰か分からないけど物騒なことは、その専属の騎士に任せとけばいいしね。
という訳で『召喚魔法』も便利だった。
でも結局、どうやったら魔法が使えるのか分からないな。
「そして最後の『残機』なんですが、私も初耳です。ですので、先に基礎の魔術もお教えします」
そんな訳で「付いてきて下さい」と言うメリアスに付いて、俺は神殿を出る。
早く魔法でも魔術でも使ってみたいな。
それに、基礎の魔術ってちょっとワクワクするな。