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4-13.「参加者追加」

 ガーベラ王女は思ったより早くやって来た。

 別れてから10分も経っていない。


「失礼致しますジークエンス様。」


 俺は彼女を迎えて隣の席まで導く。

 涙の跡を拭き、ただいつもより目が充血しているだけのローザ達もガーベラ王女を歓迎する。


 そして2人でソファーに座り寛いでいる。

 今はまだ午前中だ。


「ガーベラ様は前々から今夜のドレスを決められていたのですか?」


 先程彼女はドレスを取りに向かわなかったから、前々から別のドレスを選んでいて部屋で保管しておいたんだろう。


「はい、この日の為に祖国より選び持ち込んだドレスがあります。先程確認も致しました」


「それは舞踏会が待ち遠しいです」


 ガーベラ王女の事だから赤を基調にしたドレスなんだろう。

 彼女セレクトの特別な衣装は楽しみだ。


 そんな話をしていると紅茶が注がれクッキーが用意されるので、2人はそれに手を伸ばし口内の味を整えて話題を進める。


 俺は「舞踏会関連で何を話そうか?」と考えるとまだ彼女達にあれを聴いていない事を思い出した。

 あまり"もたもた"としていると時間がなくなってしまう。


「ガーベラ様少し失礼しますーー


 俺は手招きで壁際に立つローザ達を呼ぶ。


 ーー今夜着るドレスや正装は決めたか?」


 近くまで寄ったローザ達側近に聞こえる声で、4人に問うた。

 するとローザ達は顔を見合わせ一瞬置いてから、同い年側近を代表してローザが口を開く。


「はい。殿下からの好意を無碍にする訳にはいけませんので先程選ばせていただきました。お気遣いありがとうございます」


「ありがとう。選んでくれて嬉しいよ」


 彼女達が意地を張って執事服やメイド服で傍につく事は可能性は低かったけど、素直に聞き入れてくれて良かった。

 皆、顔も性格も良いのだからたまには執事服やメイド服とは違ったお洒落をしないと勿体ない。


 そしてドレスで着飾る事を本当に望んでいたかどうかは失礼ながら、後でアシュレイ姉様に協力して頂こう。





「ドレス? 舞踏会に参加されるのですか?」


 隣に座るガーベラ王女からの疑問だ。

 彼女はローザ達が共に舞踏会に参加する事を知らなかったみたいだ。そういえば参加させる事伝えてなかったっけ。


「ええ、彼女達も今年で成人致しましたから。そんな年の舞踏会にローザ達をメイド服で参加させるのは私には出来なかった」


「そうですか。」


 と答え、少し考えている様子のガーベラ王女。壁際に目を伏せて立つ自分のメイドと女騎士の2人をチラチラ見て考えている。

 もしかしてあの2人も今夜の舞踏会に参加させたいと思っているのかな?


「ガーベラ様はレイランとフルマルンを舞踏会に参加させないのですか?」


 ガーベラ王女専属メイドのレイランと女騎士フルマルン・ライトロードはガーベラ王女の側近だ。


「はい。ですが私もジークエンス様の言葉を聞いて、舞踏会に参加させたいと思います。

ーーですが参加させるつもりはありませんでしたから、レイランとフルマルンにはドレスを用意出来ていないのです」


「彼女達の舞踏会用のドレスは我が国で用意しましょう。彼女達にとっても一生に一度の体験ですから」


 彼女達が望むならジークエンス・リートの名前を使い、今夜のドレスくらい用意してみせよう。


「ありがとうございますジークエンス様! ほら、あなたたちも礼を伝えなさい。」


 壁際から話を聞いていた2人に話が振られる。


「あ、ありがとうございますジークエンス殿下。ガーベラ様のメイドである私にまで気を回していただき、大変感謝しております」


 メイドのレイランが答える。


「ジークエンス殿下の配慮に感謝致します。私など本来王城の舞踏会に参加出来る身分では無いものの、御目をかけていただき感謝致しております」


 女騎士のフルマルンはそう言いながら口角が上がっている。


 2人とも乗り気なのだろう。

 レイランとフルマルンからしてみればいつの間にか話が進み、今宵の舞踏会に参加する事が決定したのだけど嬉しそうなら何より。

 そして感謝を伝え終えた2人は深い礼の後元の場所まで戻った。


 その後婆やに目配せすると全て分かっている風に頷いたので、レイランとフルマルンのドレスは婆やに任せる事とする。



 


 久しぶりに話して思い出した事なんだけど、フルマルンに稽古を付ける約束をしてたんだった。

 今日まで忙しくて全然相手をしてやれなかったから、彼女はまた結婚式以降に相手してやろう。


 そんな事を考えながらテーブルに目を戻し、紅茶を啜るガーベラ王女に合わせて俺も紅茶を啜る。

 その時ちょうど扉付近に立っていたミゲルとメルティが動いて、扉の取手を掴み開く。


「この部屋は昨日以来ね失礼するわジーク」

「失礼致しますお兄様!」


 アシュレイ姉様とリズは入室するとそう挨拶する。

 俺たちは立ち上がって入室を歓迎しソファーで俺の正面位置にアシュレイ姉様。その隣のガーベラ王女の正面にリズに座ってもらう。


 そして着席したアシュレイ姉様は、ローザが流れるように行ってあた紅茶の準備を止める。


「出さなくて結構よ。ジークにガーベラ様そしてリズも私に着いて来てくれる? 実は私の行おうとしてある事はこの部屋では行えませんから」


「勿論です。しかしこの部屋からどこに向われるのですか?」


 俺はそう姉様に問う。

 そしてアシュレイ姉様はその問い掛けに微笑むと、俺達3人の顔を見て答える。


「窓から『城門から王城の扉まで』を見渡せる部屋があるの。今頃舞踏会に出席する家が集まっている頃でしょうから、ジークには重要な貴族家だけでも教えてます」


 今日まで貴族との関わりがほとんどなかった俺に、前もって教えてくれるのだそうだ。

 本当に優しいお姉様だ。


「ありがとうございます」


「ふふ。早速部屋に向かいましょうか」


 微笑んでくれる理由は分からないけど俺も嬉しい。


 アシュレイ姉様とリズは来て早々だったけど俺達は、部屋を出ると姉様の先導のもとその部屋に向かって歩いた。

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