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4-12.「ありがとう」

 入室した父は部屋中を見渡して、テーブルの前に座っている俺達を確認していた。

 俺達は立ち上がり全員で「成人式の儀式お疲れ様です」と伝え、迎え入れる。


 そして父様は席に座ると俺に目線を向けて、話を始める。


「ジークエンス成人おめでとう。

 ーーこの言葉は国王としてだけでなくお前の父親としての祝福を含んでいる。以後お前はジークハイル神を信仰し王を支える領主として、家族を愛する弟、兄、息子のジークエンスとして。

 そしてせめて私が生きている間だけは、モナーク共々生き続けなさい」


 父様から個人的な祝福の言葉を貰った。


「ありがとうございます、お父様。その思いに添えるよう、私はこれからの人生を生きようと思います」


 そして静かな空気が流れる。

 それは父様の言う通り父様の言葉に国王と領主の関係以外の、父親と息子の関係で話されたからだろう。


「今回の舞踏会に参加するジークエンスとガーベラ姫は、夜までに相応しい衣装に着替えておきなさい。以上だ」


 そしてその空気感を破らず、流れるように重要事項を伝えた父様は立ち上がると、この部屋に入って早々に退室した。

 それに続いてセシリア母様とステイシア母様が退室。


「ジークにガーベラ様、衣装を選び終えたら2人共部屋で待っていなさい。ジークの部屋に伺うわ」


「お兄様。私もお姉様と共に伺います」


 アシュレイ姉様とリズは俺にそう伝え残して、退室した。

 今部屋に残っているのは俺とガーベラ王女と、婆やと城付きメイドが2人だけ。


「私達も行きましょうか」


「はい、ジークエンス様。」



 最後に残った俺は彼女の手を取り部屋を出た。そして俺はガーベラ王女と前を歩く婆やと3人で俺の正装を取りに向かっていた。


「ジークエンス殿下の『正装』は数種類用意しておりますので、それらから1着お選び下さい」


 などと部屋を出て早々婆やが伝えてくれたので部屋に戻る前に、俺が着る舞踏会の正装を選びに向かっていたのだ。


 到着すると件の部屋は俺やガーベラ王女の部屋のすぐ近くでして、中には10種類程用意されていた。

 ガーベラ王女と一緒になって選んでくれているけど、はっきり言って違いなんてほとんどない。俺にはそう見える。


 結局俺は動き易さと踊り易さを重視した相応しい正装を選ぶ。リボンや蝶ネクタイなどが付いていない、しかし一番舞踏会という舞台に似合う服だ。


 一緒に選んでくれたガーベラ王女は俺の選択に口を挟む事はない、つまりあまりに外れた物を選んだわけではないだろう。

 正装を婆やに持たせた俺はまず、ガーベラ王女を部屋まで送った。



 ガーベラ王女の部屋の前には彼女の老執事が待機していた。

 そして彼女は扉の前で俺に振り向く。


「私が舞踏会で着るドレスを確認できましたらすぐに御部屋へ伺います。ジークエンス様は少しだけ御部屋で待っていて下さい」


「はい、分かりました」


 そして彼女の御辞儀に右手で応えると3つ隣の自室へ戻った。


 そして自室の前まで来ると扉が開かれる。

 部屋の中にはローザ・サーシャ・ミゲル・メルティの4人が待機しており、戻った俺たちを迎え入れた。

 いつの間にかメルティも部屋に戻っていたようだ。


「ジークエンス殿下ご成人おめでとうございます。私達はこれ以後も殿下の一番近くで仕え、お守りさせていただきたいと思います」


 4人は声を揃えて跪き顔を伏せたまま左足を立てる。

 そして胸に左手を当て空いた右手を右膝に添えるという手順で、俺に我が国の最敬礼をとる。


ーーこの子たちはいちいち大袈裟だよな。


 見下ろしたまま主人らしく答えても良かったと思うけど、この瞬間の俺はそうではなかった。

 俺は彼女らと同じ様に左足を立てる形でしゃがみ込み、目線をの高さを合わせた。


「ありがとうローザ、サーシャ、ミゲル、メルティ。お前達のその言葉が嬉しいよ」


 頭を下げるローザ達一人一人に伝える。

 俺はまずローザの頭に触れて言葉の続きを話す。


「ローザ、私はお前をいつも頼りにしている。最後の時まで私に仕えてくれ」


 彼女は皆の中で一番俺の近くにいる気がする、幼い頃からそう接して来たからそうなったんだろうな。

 そして次に俺は左手をサーシャの頭に乗せて話す。


「サーシャ、私は私の為にいつも動いてくれるお前の事を頼りにしている。これからも一番近くで私を支え続けてほしい」


 ローザとサーシャの2人で毎日俺の為に働き続けて欲しい。兄のミゲルと共に。

 そしてミゲルの肩に右手を重ねて話す。


「ミゲル、ローザやサーシャとは別の視点を持つお前の事を本当に頼りにしている。これからも変わらず意見してほしい」


 ローザとサーシャの2人は俺に好意的過ぎる節があるから、一歩引いた位置にいる彼の意見は俺を冷静にさせてくれる。

 最後に右手をメルティの頭に重ねて話す。


「メルティ、私はお前の強さを頼りにしている。これからも私や私の大切なものを守る為に、その力を使ってほしい」


 メルティは大切な何かを守るには十分の力がある。だから俺の正式な騎士として彼女には守り続けて欲しい。

ーーそして俺は立ち上がる。

 最後の最後はやはり、皆に一番伝えるべきだと思っている事を話すべきだ。


「主人が眠り続けていた3年を経た今日までの12年間、仕えてくれてありがとう。私こそお前達にはいつまでも側で仕えて欲しいと思っているよ。

 そして最後に。成人おめでとう」


 12年間仕えてくれた事と同年齢のローザ達に成人祝いの言葉。


 彼女達が顔を上げると流した涙が見えるけど、俺はローザ達の大袈裟な態度にそれ以上で応えたまでの事。だがしかし立ち上がった4人が全員泣いていたのには驚いた。ローザとサーシャの流す量が結構多い。

 やはり彼女らの行動は毎度毎度オーバーだ。


 俺は泣き続ける彼女らから目線を外すように後ろを振り向く。

 振り向けばそこには俺達を見て微笑む婆やがいたーー勿論婆やにも感謝しているさ。


「勿論婆やにも感謝している。一番昔から私を支え続けてくれて本当に助かっているんだ、これからも支えて欲しい」


「ーーふふ。ありがとうございますジークエンス殿下。私もその言葉を聞くことができて本当に嬉しいですよ」


 何が可笑しかったのか今はよく分からないけど、この感謝の気持ちに喜んでくれたらしい。


 そして「もう動けるかな?」と180度振り返りローザ達を見やれば、目元の涙を拭き取ったローザとサーシャが俺をソファーまで案内してくれた。

 その『感極まって涙を流す』表情も可愛かったよ。そんな事を思いながらガーベラ王女の入室を待った。

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