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4-10.「成人式(2)」

 王家神殿を進む俺は、王族だけが集まっているこの空間に迎えられた。


 俺が今立っている位置は主祭壇の前に立っている父様の正面。母様方にアシュレイ姉様とリズ、そしてガーベラ王女が左右におり挟まれた道。

 皆の存在を確認しながら父様の前まで進む。


 全員朝食の際纏っていたドレスから着替えており、ガーベラ王女も先程選んでいたドレスに着替えている。

 アクセサリーの類をいうと父様が様々な装飾品を身に付けており二人の母様は頭にティアラを付けている。そしてそれ以外のアクセサリーは見当たらない。


 歩く俺を神殿内の全員が見ている。

 特にリズとガーベラ王女の視線が熱くて、普段より大人っぽいドレスを着ているのに年相応にしか見えない。

 なんだろう、この司祭服に驚いているのかな?


 そして主祭壇前の父様の前に立つ。


「ーーこれより成人式を始める。

 初めにジークハイル神へ感謝を伝える為の儀式を行うので、祭壇へ上がりなさい」


「はい」


 俺は父様が立つ位置より奥の、昨日交信を行った祭壇に上がる。


「そこで膝をつき首を垂れ、目を閉じてジークハイル神へ感謝の想いを送りながら祈りなさい」


 俺は言われた通り膝から下をペタリと床につけて両眼を閉じて、理由なく1度上を見上げてから両手の指を絡ませるように合わせて祈る。


 この前セシリア母様から聞いた『成人まで俺を守ってくれていたジークハイル神とその加護へ感謝』と、個人的に『ジークエンス・リートに転生させてくれた事に対する感謝』を思い、祈る。


するとーー



「ーーッ」


ーー不意に体に衝撃が走り力が抜け、負担する重力が重くなったのかと感じる。


 しかし崩れ落ちる程ではない。

 唐突な衝撃に驚いて一瞬体勢を崩してしまったけど、未だに続く重い重力を受けながら先程の体勢に戻した。

 そして俺は祈りを続けるのと並行して、この重力を肌で感じその正体について考える。


「(まずこれは抗えない程強い力ではなくて、俺ならいつまででも耐えられる程度。そして後ろにいる父様達から俺の動きに驚いたとの反応は聞こえないので、この噴いに発動した重力は元々予定されていたのだろう)」


 思っていたら瞼の向こう側で感じる光量は増えており、それを意識すると十字の自然光以外の別の橙色の光を感じる。


 そんな強さに変化がない力を受け続けること10分程度。俺は祈りと並行作業の中、だんだんとその意味をーー俺の頭は理解する。


 この重みはジークハイル神より贈られた成人祝い、具体的に言えば『ジークハイル神の加護』だ。

 重力の全ては神から贈られた加護であると、重さを加えられている俺は自覚している。

 頭も心もそれが加護だと感じるんだ。



 そうしてその結果祈っていた時間は30分くらいだろうか、加え続けられていた重さが消え解放される。


「お前の祈りはここまでとしよう。ジークエンスは元の位置までと戻りなさい」


「はい」


 加えられていた重力が元に戻った瞬間、俺は父様から声がかけられた。この行動からして父は何が起こったのか分かっているのだろう。


 俺が主祭壇の前に立つと父様は入れ替わりで祭壇の前に立つ。そして同じように膝を床につけて指を重ね祈り、この10分後主祭壇に立った。


「成人おめでとうジークエンス。この瞬間よりお前は成人を迎え『ジークエンス・リート=フラムガルルーツ』となった。今後は兄達を手助けし、自らの領地を治める事に専念しなさい」


「ありがとうございます陛下。私はそのような王子を、領主を目指すとします」


 モナーク兄様とハルト兄様を手助けして、自らも領地を治める。

 勿論どちらもやってやるつもりだ。


「そうか。……それではこれで成人式を終了とする、ジークエンスとお前達は神殿を出て案内されるある部屋に向かいなさい」


 頷いた父様は退出を促したので、俺が先頭になって父様以外の俺達は神殿を出た。

 すると王城付きのメイドが1人ずつに近付き道案内を始めた。


 細かく予想をしていた訳ではないけど、思っていたよりあっさりした成人式だった。

 そして『ジークハイル神の加護に守られていた割には俺は、死にかけたりと波瀾万丈な人生を生きてる気がする』なんて思いながら、案内される部屋に向かった。

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