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3-82.「成人式2日前の1日」

 贈答品の確認を終え、俺は部屋に帰ってきた。

 部屋に入ると上着をローザに渡して、休憩代わりに着替える事にする。


 いつも通り用意された椅子に座り、慣れていて手際の良いローザとサーシャが数分で着替え終わらせたところ。


 俺は一度ソファーに座って、現在時刻を確認し今から何をしようかと考える。


 今は部屋の時計と部屋に差す日光から分かる通り夕方で、すなわち夕食の時間まで残り2時間くらいあるという事だ。

 時間もあるし緊急でやらないといけない事もないし、ガーベラ王女の部屋を訪ねよう。


 明後日に迫った成人式までやる事もなく、何度も読んでほとんど暗記している資料をまた読み返すくらい暇を持て余している。

 そんな俺は立ち上がって自室を出て、3つ隣のガーベラ王女の部屋へ向かった。



 彼女の部屋の前には昨日に引き続いて配置された女騎士がおり、部屋の前に着いた俺に対して騎士の礼をとっている。


 それに右手で応えた俺は、部屋の内側から開かれるガーベラ王女の部屋に入る。


「お待ちしておりましたジークエンス様。さあ、御入り下さい」


 扉の内側すぐに居たガーベラ王女は中へ招いてくれた。


 窓から淡い赤色が差し込んだ部屋。

 窓脇に移動した椅子とテーブルに置かれた本から、彼女は先程まで窓から差す夕焼けの光で書を読んでいた。だろうと思った。


 そしてテーブルの上のその本は、ジークハイル王国の有名な小説で『迷宮都市が舞台の探索者の男女の恋模様』を書いた作品だ。

 市民にも広く知られている小説であり、あの一冊にも幾つか挿絵が描かれている。主人公の男性女性はどちらも戦闘職らしい顔の美しさだ。


 そう思った俺は昨日と同じ、ソファーにガーベラ王女と隣同士になって座る。


 ガーベラ王女のメイドのレイランが2人分の紅茶を注ぎ、背後では窓脇に置かれた椅子を城付きのメイドが静かに戻している。

 そして周りの事は気にせず2人して紅茶に口を付ける。


 しかし彼女はこの部屋で半日間、我が国の言葉で書かれたあの本を読み続けていたのかな? 3年以上前に俺もそんな1日を過ごした事もあり、それが楽しかったのを覚えている。


 そして『今日は俺が来るまで静かに本を読んで過ごします』って、ニュアンスの発言を今朝していた婚約者のガーベラ王女は、今日1日じっくり休めただろうか?

 明後日には成人式がありその2日後、つまり今日から数えて4日後には結婚式が行われる。俺たち2人はその当人なので忙しくなるだろうし、今の休めるうちにゆっくり休んでくれて安心する。


「あ、その指輪。昨日リズ様がお話になっていたお揃いのものですね」  


 そんな感慨に耽ってた俺の、左手人差し指の見て『ダイヤ』の指輪気付いたガーベラ王女。

 昨日。リズは俺とガーベラ王女にお揃いの指輪とネックレスの話をしてくれたので、彼女はお揃いの事を知っている。


「えぇ。私がリズと共に王都観光を行った際にこのネックレスと共に購入した物で、昨日のリズの話を聞いて身に付けたいと思っていたので付けてみました。

 どうでしょう、似合っていると思いますか?」


 リズとお揃いなので好きなんだけど、俺の細身の身体には大きい宝石は似合わないんじゃないか、と思ったり気にしなかったり。


「とても綺麗で、ジークエンス様によく似合っております」


 ガーベラ王女は少し微笑んでから俺の顔を見て、じっくり答えてくれた。


「それは良かった。」


 そう言ってティーカップを置いて、今度は俺の方から彼女の顔を見て問いかける。

 今日の彼女の事だ。


「ガーベラ様。今日は1日しっかり休めましたか?」


「は、……はい。私が休める時間を用意して下さりありがとうございました。ジークエンス様」


 近付いた俺の顔を見て顔を赤くした彼女は、本当に男性に対する免疫がないんだろう。

 でも今日1日は休めたようで本当に良かった。


 そしてその言葉を聞いた後ガーベラ王女と30分くらい話しをして、夕食前に迎えに行く事を約束して部屋に戻った。

 明日は『神と交信』を行うのだが、明らかに話して良さそうな事柄じゃないのでそれを話題には出来なかった。可能なら後日談として、結婚した後の話の話題にしようかな。



 自室に戻ったけど特にやる事もない俺は、明後日の成人式の資料を読んで時間を潰していた。

 ちなみにこの資料の内容も頭には既に入っている。


 その後、何が起きる訳でもなく時間は過ぎてもうすぐ夕食の時間。

 自室を出てガーベラ王女の部屋に向かい、ガーベラ王女の手を取り食卓の部屋へと向かう。


「こんばんはガーベラ様。夕食に向かいましょうか」


「はい。こんばんは、ジークエンス様」


 挨拶に「こんばんは」を使用した大きな理由はないけど、もう少しで日は沈んで灯りが城の照明だけとなる。

食卓に着いた俺は先に着席していたアシュレイ姉様とリズに挨拶をした、その後入室した母様達や父様にも挨拶をすると夕食が運ばれる。


 本日の夕食は連日に引き続きコース料理で、夕食に父が居るのもあり食卓は静かで料理も美味しかった。

 昨日より少し食べ慣れた料理も多くなった印象があり、2度目だけど美味しかった。



 父の「美味しかった」の言葉で夕食は終わり、皆それぞれの部屋に戻っていった。

 俺もガーベラ王女の手をとって彼女を部屋まで送り、明日の朝にまた迎えに行くと伝えて自室に戻った。


「ではおやすみなさいガーベラ様。明日の朝食前にもまた部屋に迎えに行きます」


「ありがとうございますジークエンス様。では、おやすみなさい」


 マイルームに戻ったけど別に、これから寝る以外にやる事もない。そんな暇で暇な俺は寝間着に着替えてベッドに入った。


 そういえば今日は早起きしたからか、2カ国の文字を読み続けていたか分からないけど少し眠い。

 眠たくて寝る以外にやる事もないのだ。俺は目を閉じて、照明が薄暗い部屋の中眠りについた。

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