3-81.「食品類の贈答品」
俺と国王である父。そしてその部下達は先程居た部屋と同じ棟の、同じ階のある部屋の前まで来た。
この部屋の前にも騎士が立っている。
同じ階域の部屋といっても王城は広いので、あの部屋からここまで徒歩で5分くらいかかった。
部屋の前に立つ騎士は国王である父の姿を確認すると礼をとり、父が部屋の近くまで寄ると最敬礼をとって部屋の扉を譲る。
そして父と俺が部屋の前に立つと、部屋の内側から扉が開かれ中へ招かれる。
この部屋の雰囲気は、先の部屋と比べると光の差し込み加減の違いで眩しいほど明るい。
「……ここにある品々も、私とガーベラ様の結婚を祝って贈られてきたのですね」
「結婚式後お前に確認させる品とはまた別の、今からジークエンスが確認するべき贈答品だ。
この部屋にある物は先の品々とは違い食品類や酒類を置いている、開封はせず手紙を読んで中身を確認しなさい」
正面には先の部屋と同じく大きなテーブルが置かれており、一角には食品を冷却保存する為の魔道具ある。
そして酒、か。
この国は法律で未成年。つまり15歳未満の飲酒は禁止されていて、これはイルシックス王国も同じ。
3年間眠り続ける前に読んだ資料では、何代も前の女王様とその王配様によって制定された法律だったはずだ。
「分かりました。夕食までに確認作業を終わらせます」
「まさか」と言うより納得。
テーブルの上には包装された品と、その隣には手紙が入っている封筒という贈答品。
先程の部屋の贈答品よりはここにある品の数は少なくて、プレゼントはざっと確認しただけで五十家分くらい。
さっきは300家以上の贈答品を確認したので、それに比べれば全然少ないけどそれでも1時間はかかりそうな作業だ。
「それら全ての手紙に目を通したら本日の作業は終了だ。お前はすぐに終わらせてしまうだろうが、夕食まで自由に過ごしなさい」
「はい、ありがとうございます」
父はそう言い残すと護衛達を引き連れて退室した。
なので今の部屋には俺とローザ達、部屋付きの執事とメイドの合計8名と静かな空間だ。
俺はテーブルに近付いて正面の、ぱっと見ワインボトルが包装されている品の隣のグランレイ伯爵家と書かれた封筒を取る。
封を切る為のペーパーナイフがまるで阿吽の呼吸でローザから渡され、それで封を切ったらローザに返す。
そして封筒から2枚の手紙を取り出すと、読み慣れた祝福や定型文章を読み流しつつ贈答品説明を読んだ。
『ジークエンス・リート殿下、ガーベラ王女殿下。御結婚祝福申し上げます。
両殿下は今年共に成人なされお酒が飲める年齢となります。そこでこの度の結婚を祝いまして我ら、王都で酒類の製造・販売をさせて頂いておりますグランレイ伯爵家からシントレア酒というお酒を贈らせて頂きます。
このお酒は、我らの作るお酒の中でも飲み易く、甘く美味しいという特徴があります。初めて飲むのにも適しておりますので、是非お飲み下さい。
グランレイ伯爵家がこの王都の地にありますのはーーー』
俺とガーベラ王女に贈られた『シントレア酒』の表記を見て心の中で「そういえば俺も成人するから、お酒を飲めるようになるのか」と何だか感慨深いものがある。
成人直前3年間の思い出がないから仕方ないんだけど、成人及び結婚する感覚がイマイチ湧かない。
どうなんだろうガーベラ王女も似た様な事を思っているのかな? それとも既に覚悟完了しているのかな。
手紙の最後は『グランレイ伯爵家 グレイテル・グランレイ』と、家名と当主の名前で締められる。
貴族として伝えるべき事が書かれた、当主の手紙としては一般的ながら歴史を交えて語られていた面白い手紙だった。
俺はこの手紙を封筒の中に戻して元の位置に戻す。
今度はその右隣にある『贈答品の背が低い品』の隣の封筒を手にとって、渡されたペーパーナイフを使いその中の手紙を読んだ。
◇
半分の20つ確認し終えたところで休憩を取り、時間をかけて食品・酒類の確認作業を終えた。
食品類では王子の俺に食材を贈っても響かないと、ほとんどが理解していたのだろう。
贈答品は飴玉や砂糖菓子の様に保存が効くお菓子や、漬物や佃煮などこれまた保存が効く物が多かった。
勿論『貴重』とか『美味しい』と銘打たれた食材も贈られてきており、冷蔵庫の役割を果たす魔道具の中で何家か分が冷やされていた。
酒はグランレイ伯爵家の贈答品のように、早速飲んで貰いたいって趣旨の品があったのだけど、それよりも寝かしておく用の今年作られた1年目の物の方が多かった。
結婚した年が一つの記念の年となる訳だ。
部屋に差し込む光が白から夕焼け色に変わっており、もう太陽は沈み時刻は夕刻となったと知らされる。
俺はローザ達を引き連れ退室し、部屋に戻る事にする。
比較すると手紙の数が多い家が幾つかあってその度に少し疲れたけど、この作業は結構楽しかった。
贈答品の確認も行える結婚式当日。それ以降の新婚、結婚生活が楽しみだ。




