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3-79.「贈答品」

 部屋には「これ全てに目を通すのか?」と、パッと一見しただけだが300つを超えるプレゼントが、一つの大きなテーブルの上にに置かれている。


 それらの中でふと視界に入った物が1つ。

 たまたま視線の先にあった小さな箱の、その横にある一枚の封筒。歩を進め近付きそれに手を伸ばす。

 そして俺が封筒を手に取ると、そっとローザからペーパーナイフが渡される。


 封筒には『クェーサー伯爵家 ラグロンド・クェーサー』と、贈り主の家名と名前とそして紋章が書かれている。

 そしてナイフを使って閉じ口を切り、中に入っている2枚の手紙を手に取って読んだ。



『ジークエンス・リート殿下。ガーベラ・イルシックス王女殿下、御二方の御結婚に祝福申し上げます。

 その証と致しまして、クェーサー伯爵家から、双魚宮のリンダースとも言われる宝石の原石とアクセサリーを贈らせていただきます。この度の御結婚で、ジークハイル神仰国とイルシックス王国の親交がより深まる事を我々も願っております。


 クェーサー家とイルシックス王国王家との関係は古く、今日までその関係は続いておりーーー』



 と、ここからクェーサー伯爵家とイルシックス王国王家との関係の歴史が綴られている。

 そして、最後の方には2度目の結婚のお祝いメッセージが書かれていて当主ラグロンド・クェーサーの名前でこの『手紙』は締められている。


 俺はこの手紙を元の封に筒む。

 そしてテーブルの上に置いて視界を広げて探しみる。

 してやはり。ほぼ全ての贈答品の隣には手紙があって、目算200通以上が見て取れた。


 贈答品の確認とはこれら手紙を含めた全てに目を通す事なんだろう。

 この作業は確かに、丸一日かかりそうだ。


「ジークエンス殿下。陛下よりこちらを預かっております」


「紙……陛下からの言伝か」


 贈られて来た贈答品を見渡してその量に驚いていた俺に、この部屋付きの執事から紙に書かれた陛下からの言伝を渡される。

 言葉で伝えてくれれば良いのに。


 言伝の内容は『この部屋の贈答品全てに目を通す事』と、そして『包装は開封しない事』だ。

 その贈答品には手紙も含まれるのだろう。

 贈答品はほぼ全て何かで包まれているから、今回は開けて中身を確認してはいけないという事だろう。


 でももし、父様から伝えられてなくても。

 包装で中身が分からないから手紙を読んで中身の確認しただろうし、時間が惜しいから中身の確認もしなかったかもしれない。

 けどうっかり開封して、うっかり時間を食ってしまう事は防ぐ事が出来る。


 ここにある贈答品は『俺とガーベラ王女の結婚』を祝って贈られた物なんだから。

 俺が今1人で確認するより、結婚してからガーベラ王女と一緒に2人で開封したい。


 そう思い考えた俺は数歩だけ下がって、テーブルに置かれた贈答品全てが視界に入るようにする。

 そして再び、視線の正面にあるクェーサー伯爵家の品の前まで進んで、その左隣に置かれた品と手紙から確認作業を始めた。





 あれから俺は、部屋の正面から左側に置かれていた品全てを確認した。

 合計3時間かけてテーブル上の贈答品の半分を確認し終えた。


 そして今は休憩時間。

 用意された椅子に腰掛けローザが注いだ紅茶を飲んで、目を瞑り疲れた身体と目を休めている。

 同じ位置に立ちっぱなしの中、2カ国後の手紙を読み続けていたんだから疲れて当然か。と、我ながら思う。



 俺が3時間かけて贈答品の半分を確認し続けた感覚の中で

 贈答品を一つ一つ確認していくつか気になった点と、何種類か気になるプレゼントがあった。


 まずは気になる点から。

 全ての贈答品には一緒に送られて来た手紙が付いている。だから分かった事なのだが、贈答品はイルシックス王国からの物が多い。 


 イルシックス王国王家からの品はここには無かったけど、セトルハートロ公爵家やテンゲンシャ公爵家をはじめとした多くの上級貴族から中々の品が送られている。


 宝石やその加工品はマストで、

 貴重らしい原石や、指輪にネックレスにティアラにブローチ……などの装飾品。

 高い加工技術により作られたインクをつける部分に宝石が使われたペンや万年筆。砂の代わりに砕いた宝石が使われた砂時計などの雑貨。


 更には全身宝石で作られた宝玉剣や宝珠剣ってのもあった。

 説明を読んだ限りでは、100%観賞用目的で作られたんだろうけどその確かな強度から、斬れ味がほとんどないながら棍棒の様に扱えそうだとの事。


 この他イルシックス王国の貴族達から贈答品で変わった物だと

 セトルハートロ公爵家やテンゲンシャ公爵家など、ほとんどの上級貴族が贈ってきた『宝石で作られた絵画』など。

 ガーベラ王女は故郷では芸術家であったのかな? と思われる品が多い。 


 勿論、贈答品はガーベラ王女だけでなく俺にも贈られてきている。

 クェーサー伯爵家の様に1つの品で2人の結婚を祝う形から、公爵家の様に新郎新婦一人一人の事を考えられた品もある。



 まだ、部屋の半分が片付いていないからそっちにあるのかもしれないけれど、少なかったジークハイル神仰国の者からの贈り物。

 その内容は様々だ。


 俺の強さを知る騎士や貴族からは中々上等な剣や、珍しい武器などが贈られた。

 他には有名なものから珍しいもの、用途や存在が謎、特殊な書物や魔道具などがあった。


 しかし俺の為に用意してくれそうな側近のローザ達、俺に魔法分野を教えたメリアスや幼少期の剣術指南を行った騎士ブランドー卿。

 最近個人的な関わりが強かったマグヌス、チェリン、クラウディア母様達からの結婚祝いの品がなかった。


 彼らとの関係と、俺の立場を含めて考えるとメリアス達が贈らない理由はない。

 でももっと言えば、セシリア母様もステイシア母様も、アシュレイ姉様にリズも、離れて暮らす兄様達だって。

 結婚祝いを用意してくれそうなのに、ここにはその結婚祝いの贈答品はない。


 俺と関係が深い人達からの結婚祝いは、また別の部屋に置かれているのだろう。


 今まで貴族にほとんど関わってこなかった事や、他国の貴族という事もあるけど、この部屋にある贈答品はほとんど俺の知らない人からの贈り物。

 その2種類に分けている可能性もある。


 よって、この部屋の他にまた結婚祝いの贈答品がある可能性は高い。



ーーそう考えたらこの作業の先は長いな。

 俺は椅子立ち上がって再び贈答品の前まで進む、休憩は終了だ。

 俺はもう反対側の確認作業を進めようと、クェーサー伯爵家の品の右隣の品と手紙を手に取った。

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