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3-78.「不意に感嘆あげる程多量」

 朝食のメニューは昨日と同じく各々好みの料理の料理が出された。

 ガーベラ王女の好みの料理も伝わっているようで、丸パンやステーキにトマトスープ。この食卓で人気のサラダも美味しそうに食していた。


 そして30分程で全員が食事を終えた。


「ジークエンスはこの後から昨日伝えた確認作業を行いなさい」


「分かりました」


 最後に食事を終えた父は右手のフォークを置いた後、空いたその手でティーカップを持ち俺に指示する。


 昨日伝えられた事とは『俺からイルシックス王国に贈る結婚祝い品全てに目を通す作業』の事だ。

 俺はこの作業に初めて関わるのだけど、つい最近目覚めたばかりだし仕方ないだろう。


 贈り物の数は分からないけど長時間かかるだろう、今日丸々一日分の予定だ。


「今日の食事も美味しかった」


 食事終了の宣言がなされてから、立ち上がった父に続いて母様達やアシュレイ姉様そしてリズが食卓の部屋を退出して自室に戻っていく。

 姉様とリズは退出時に「頑張りなさいジーク」、「お仕事、頑張って下さいお兄様」と言われたので「ありがとうございます」と答えた。


「私達も部屋に戻りましょう」


 差し出された俺の手をとり「はい」と答えたガーベラ王女と共に、俺達はそれぞれの自室に戻った。

 そう言えば確認作業は何処ですれば良いのか知らないんだけど、婆やたちが知っているのかな?





 ガーベラ王女は自身の部屋の前で、触れていた俺の右手から手を離す。


「本日の作業も夕食前には終わると思いますから、終わったら部屋を訪ねます」


「ありがとうございます。私は、今日は部屋で貸し出して頂いた本を読んでジークエンス様を待っています」


 ジークハイル神仰国とガーベラ王女故郷のイルシックス王国では言語が違うので、見たことのない珍しい本があるのだろう。


「城付きのメイドや執事に言えば珍しい本も集めて来てくれるでしょう。今日も彼らを部屋に置いておきますから、困った事や私への連絡や言伝などは彼らを伝えて下さい」


 彼女が貸し出せる本ならば、王城にある限り探し出してくれるだろう。


「図書室には私が一緒に居る時に案内します」


「分かりました。その時を楽しみに待っています、そしてご好意に甘えさせて頂きます」


 結局。ローザ達側近メンバーは今日も全員連れて行こうと思ってるので、ガーベラ王女には付き添えさせられない。


 そしてガーベラ王女との会話が終わったので俺は彼女の部屋を後にして部屋に戻り、ガーベラ王女は自分に与えられている部屋に戻る。


 部屋に戻った俺は上着を脱がされ同じデザインの新しい上着を用意される。朝食の匂いが染み込んだか知らないけど最近着替える事が多い気がする。

 俺はそんな事を気にしつつ上着を着た。


 そして専用の箱から取り出した、リズとお揃いの指輪を手に取った。


「やはり少し大きいか? ……いや、私が小さな宝石が好きなだけか」


 指輪の宝石は片指で大きさを表現できる物より、ピンセットで摘めるくらい小さな物が俺の好みだと思う。

 加工の技術によりけりかもだけど。


 しかし、昨日リズが熱く語ってくれたおかげで『妹のリズとお揃いというプレミア』を持つこの指輪は例外となった。

 だって可愛い妹があんなに嬉しそうに話してくれたんだから。好きになってもしょうがない。

 俺は左手人差し指に、お揃いの『ダイヤ』の指輪を嵌めた。



「準備が出来ましたら殿下。贈答品が置かれている部屋に案内しますが宜しいでしょうか?」


 指輪を嵌めて着替え完了してから数瞬、婆やは俺に問いかける。

 婆やは今日の俺の作業部屋を知っているようだ。


「ーー良い、準備は完了した。さあ案内してくれ」


「はい」


 婆やを先頭に俺

 その後ろにローザ、サーシャ、ミゲル、メルティが続く。


 婆やは俺の部屋とは別の棟まで歩いてその一階のある部屋で止まる。

 そしてまた婆やが話し始めた。


「陛下より。この部屋には、ジークエンス殿下とガーベラ殿下の婚約祝いの贈答品だけが置かれている。

 ですので本日は、先に送られてきた品を全て確認して欲しいとの事です」  


 贈り物を確認する前に贈られた物を確認しろと、そういう訳か。

 そしてこの部屋には贈られて来た結婚祝いだけが置かれていると。


 部屋の正面には、軽装ながら武器を携え武装した騎士と兵士が1人ずつ立っている。

 2人は一瞬俺の顔を確認すると互いにアイコンタクトを取る。そして扉の取手に手を掛け開き『ジークエンスとその部下』を部屋に招き入れた。


「おぉ……この量は凄い」


 ここにある贈答品全てに目を通すのか? 

 不意に感嘆をあげ、かなり驚いている事は自覚している。しかしそう思ってもおかしくないくらいこの部屋にあるプレゼントの数は多いのだ。


 この部屋には一見しただけでも300を超える品がある。

 テーブルの上に色々な種類の贈答品が置かれており、その全てが俺とガーベラ王女の結婚祝いの品である。

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